第30話 螺髪(らほつ)と呼ばれる独特のカール頭
大仏切通しの階段を降りると、大きな通りに出た。
「この下、トンネルになってる!まだまだ下るの~?」
紀代はややげんなりした様子でつぶやいた。
「あともう少しですよ!紀代さん!」西野君が励ます。
ほ~、さすがに西野君も、ここからは地理に明るいみたい!
しばらく歩くと、観光バスから多くの人が降りてきた。
急に前にも後ろにも観光客が増えてきて、下界に戻ってきたという感じがした。
「ほら!大仏様の後頭部!」
茜が指さした方向に緑色の頭が見えてきた。
螺髪(らほつ)と呼ばれる独特のカールがはっきり見える。
「このまま歩いて、長谷駅まで行って休憩よ!
おいしい甘味処があるの。
食べたら江ノ電に乗りましょう!」
「やったぁ!」
茜さんの言葉に私たちは歓喜した。
早朝に家を出たときはやや肌寒かったが、今は暑い。
「アイスクリーム食べる?ここのジェラートアイス、美味しいんだ」
西野君がまたもや地元民らしいことを言った。
私たちはつかの間の休息をした後、江ノ電に乗った。
江ノ電に乗れば、江の島までは早い。
電車のなかで座れたことで、足の疲れが一気にとれた。
茜は座席に座らず、窓の風景を見ていた。
海がまぶしい。
「わー!やっぱり宮崎の青島、思い出す~!」
紀代が懐かしそうにつぶやく。
電車すれすれの住宅街をすり抜けながら、江ノ電は稲村ケ崎を超えてゆく。
「え?大丈夫?ぶつからないの!?」
「大丈夫世すよ、紀代さん」
ん?なんか急に西野君の態度変わった?
やがて窓の先にはっきりと江の島が見えてきた。
「あれ、江の島? 思ったより小さい!」
紀代が言った。
「そうね、でも、あの島をなめてはいけないわよ。
あそこには神様がいる。それも究極の神様」
究極? それが何を意味してるか、その時はわからなかった。
江の島を歩くまでは。
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