画面越しの距離から、君と恋をするまで ―配信ライバーBL―

星野 千織

第1話 プロローグ

 社会人三年目の春。


 僕は、仕事にも少し慣れてきた頃だった。

 職場と家を往復するだけの毎日に、なんとなく物足りなさを感じていた。


 親元を離れ、一人暮らし。夜は長い。

 ふとした思いつきで始めたのが、ライブ配信アプリだった。

 雑談したり、ちょっと歌ったり。

 顔はマスクで半分隠して、雑談がメインの配信。

 コメント欄で誰かが笑ってくれる。それが思いのほか楽しかった。


 そんなある夜、リスナーの一人からコメントが届いた。


 『声、好きです』


 ただそれだけの一文。

 けれど、僕の胸の奥に、妙に引っかかった。


 そのユーザー名は「R」。

 アイコンは、月明かりに照らされた猫のシルエット。


 そこから、僕らの交流がゆっくりと始まった。

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