第43話 教会の責任
「ほう、貴公がラドム国のカルヴァドス子爵殿か。聞いていた通り、本当にまだ若いのに立派なのだな。此度は遠路はるばるアデレア国までご苦労であった」
国王がそういったところで顔を上げる。
アデレア国の国王は50代くらいの男であった。人族の王はああいった王冠をかぶっていると聞いたことがある。一国の王ということでだいぶ上から目線のようだ。まあ、手紙についてもそんな内容だったが。
「そしてミラ殿も久しいな」
「はい、国王様。長らくご無沙汰しております」
国王の言葉にミラが頭を下げる。
ミラは聖女という称号を授かる時にこの国の国王と一度だけ会ったことがあるらしい。ミラにはとりあえず多少は友好的に話すよう伝えてある。
「おお、ミラよ、無事であったか! 本当に心配しておったぞ!」
「……教皇様もご無沙汰しております」
そして国王の隣にはミラと同じ修道服のような白い服を着た太った男が大袈裟に話している。ミラから話は聞いているが、この男はミラがいた教会のトップの男らしい。
どちらかというとミラが失踪して一番責任がある者だろう。それもあってこの場に同席しているのかもしれない。
「さて、早速本題に入るがミラよ。なぜ突然アデレア国から姿を消してカルヴァドス子爵のもとへ向かったのだ?」
「はい、置手紙に記した通りですが、私が仕えるべき運命のお方であるゼノン様が現れたからです!」
「「「………………」」」
国王だけでなく他の者も黙ってしまった。まあ、いきなりそんなことを言われても困るだろう。
「我が以前この国を訪れた際にミラ殿と出会ったようなのですが、まさかそのあと我のあとを追ってくるとは思ってもおりませんでした。アデレア国からは許可をもらっていると聞きました」
「なるほど、そういう事情であったか……」
書状にはそう返事をしておいたが、改めて説明をする。少なくともこれでこちら側の責任ではないということがわかったであろう。
「も、もちろん私は許可など出しておりません! おい、ミラ。貴様勝手に教会を抜け出すとはどういう了見だ! 平民であった貴様をこれまで世話してやった教会の恩を忘れたのか!」
「恩ですか? 確かに食事などは多少まともな物を食べさせてもらいましたが、私が治療をしたことによって得た寄付金は私ではなく教会の上層部の者が自由に使っておりましたよね?」
「そ、それはアデレア国での教会の権威を守り、国へ貢献するために寄付金を運用してきたわけで、決して儂らが私利私欲のために使ってきたというわけではないぞ!」
教会の教皇とやらが慌てた様子で弁明をしている。ミラの話では寄付金を払える者にしか治療はせず、治療で得た寄付金はミラのもとにはほとんど入ってはいなかったようだ。ミラの転生した先が孤児であることをいいことに、ここでも搾取をしていたのだろう。
ミラもいいように使われていることは気付いていたが、我を探すための情報さえ手に入れば他はどうでもよかったらしく、ある程度従順に従うフリをしてようだ。
「それに加えて私に対する卑猥な視線や身体を求めてくるような教会の者にはもううんざりです。私はラドム国へ移り、ゼノン様に仕えさせていただきます」
「なっ、貴様、そんなたわごとを!」
ミラの容姿はとても美しいゆえ、そういった愚かなことを考える者は多くいたそうだ。もっともミラは身体だけは許さず、魔法の使えるミラを力尽くでどうにかできるような者はいなかったようだがな。
「ふむ、どうやらミラ殿がこの国を出ていったのは教会にも責任があったようであるな。おい、その者を引っ立てよ」
「「「はっ!」」」
「そっ、そんな国王様! どうかご慈悲を!」
国王の指示で兵士たちが教皇を取り押さえて連行していく。
これまで散々ミラを利用してきたようだし、自業自得であるな。こちらもミラが国を出た責任をあの者へうまく押し付けることができてある意味では助かったぞ。
「教会の者がミラ殿に大変無礼なことをしたようであるな。その者たちにはしっかりとした処罰を与えるとしよう。ミラ殿にはあの者に代わって謝罪する」
周囲がざわざわと騒がしくなる。一国の国王がミラに謝罪したのが意外だったのかもしれない。
一瞬まともな国王なのかとも錯覚してしまいそうだが、まともな国王などいない。このあとの話のための形だけの謝罪であろう。
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