仏の御手の花の上に
吉田なた
第1話 天平勝宝九歳(757年)五月二日 東大寺金堂 太上天皇一周忌斎会
法要の庭に吹く五月の風に、
道行の楽を奏でる怜人らが、南の門から入場する。案内の若い僧侶に導かれ、東西の
私たち
僧正の銀錦の袈裟が、金堂の
晴天に恵まれた夏の最中はすこぶる暑い。雨期に入り湿気も上がっている。幡を揺らす程の風はあるが、とにかく一刻も早く、強い日差しから逃れたい。にじみ出る汗をぬぐう事も適わず、幾度か瞬きをして前を見て歩き出す。
目の端に映る
私のような内舎人ごときは、
長い回廊のみならず、参道の両脇にも一千五百人もの僧侶が並ぶ。
回廊にも入る事の出来ない多くの僧侶、中位、下位の官人、そして私のような舎人は、法要が終わるまで日差しの下に立ち続ける。
目の端で公卿の一人が、
梵唄の声が止み、基壇の上に立つ若い僧侶が、
左右の楽舎から流れる
どうして今日も、
私よりも少しばかり背が低く華奢で、四つ年上のこの男とは、つい先日までは共に馬を並べて
大炊は
僧正と長老は既に
わずかに首を巡らせて周囲を
再び起こった
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