嘘じゃない

夕凪あゆ

第1話


静寂が呼吸を止めた世界で

揺れる焔の灯が ふたりを包む

心臓がリズムを刻むたび

君との思い出がこぼれていく


乾いた風が頬を裂いた

目を逸らす理由を探してた

「問題ない」って笑うくせに

その笑顔が私を困らせる!


夢と現実の狭間で

嘘みたいな本音が零れて

ねえ、もしも願いが叶うなら

君の隣でただ眠りたい


止まった心の音の中

時間が泣きそうな声をした

「もう遅いよ」なんてさ

まだ言わないで お願いだからあと少しだけ


手を伸ばせば 壊れてしまう

だけど離せば もう戻れない

曖昧な距離がやけに痛い

言葉じゃ縮められない距離がある


星が瞬くたびに 息を潜めて

記憶の海に沈む夜

忘れたいのに忘れられない

君の声がまだここにいる


見えない糸を手繰って

音のない愛を歌ってる

「好き」なんて安い響きじゃ

届かない だから言えない


月が揺れるガラス越しに

私の影が滲んでいた

「君を好きでよかった」なんて

それすらも嘘になりそうで


ねぇ 目を閉じれば

まだ君を探してる

止まらない涙のあとで

笑える日が来るのかな


君がくれた沈黙に

私はまだ救われてる

孤独の底で見つけた光

名付けるなんて出来そうにないな


世界が滅んでも構わない

君の存在が消えないなら

儚い夢でいいよとも

嘘じゃないから、そばにいて

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嘘じゃない 夕凪あゆ @Ayu1030

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