もう施設に入ってほしい

SNSが辛くてスマホから消してしまった。


あんなに依存していたツイッターなのに、無くなっても別に問題はなさそうだ。


最近、今までの人生の中で、一番父親と話している。


暇な昼は一緒に映画を見るのだ。


不思議なものというか、現金なものというか、ぼけた母親よりも父親と仲良くしていると、今まで頼りにしていた母親の厭な部分が見えてくる。


今日は作ったラザニアを「こんなもの」と言われた。


流石に精神にきてキツくて、「食べなくていいよ!」と声を荒げてしまった。


父は風呂に入っていた。


家族一緒にあまり食事をしない。


もう施設に入ってほしい。


あの時、自分が家で一緒に暮らそうと思った決意はどこに行ってしまったのか。


・・・


「船の上のピアニスト」を父が見てたので途中から見た。


何も変えずに生きていくのが、正解なのか。


ブレスオブファイア3のバッドエンドで、主人公のリュウが箱庭で生きることにして、


『なにも、変えずに……』と文章が出たのを思い出した。


自分たちも、今のままでは、ダメなのだろう。


訪問看護に電話はしていない。


姉に今日の泣き言をlineしたが、返信は無い。


現状維持が一番いいのに。


明けない夜もある。


夜が明ける前に棺に入れば星も見えない。


そんな夢を見た気がする。


棺の中で起きるのだ。


直前まで見ていた夢に叫んで、腹筋を使い頭をおもいっきり持ち上げる。


棺の内側に頭がぶつかる。


永遠の暗闇の完成だ。


飢えより先に渇きによって死ぬ。


目の前の棺の蓋を掻きむしりながら。


日本の火葬はとても優しいなと思うが、昔は土葬だったのだからその頃のことを想像したのか? 


それにしては棺桶に丸まっているというよりは眠っているように棺に寝かされている夢だった。


きっと精神病院のベッドに括り付けられているイメージと混同したのだろう。


話を戻す。


つまり、自分の気持ちは……


……本音は母を施設に入れたくない。その一点に尽きる。罵られてもだ。


精神病院のようにベッドに括り付けられることはないだろうが、職員さんは優しいだろうが。


単純だ。


私が、母に依存しているのだ。


変わってほしくないのだ。


家にいさえすれば、むなしい希望に縋り付いている。


生きてさえいれば、一緒に住んでさえいれば。


破れた蜘蛛の巣のように、もう崩壊しているというのに。


賢い蜘蛛は巣を一度食べて栄養にしてから、また新しい巣を作るのに。


まさに家を売ってその金を栄養にして別のところでスタートする話じゃないか。


自分は賢くない人間なのだ。


永遠に、母蜘蛛の死体を食べて生きている。


『なにも、変えずに……』

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毎日がつらいと思うのは生きてるからだよ……欺瞞 金貨珠玉 @pearl4129

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