ギャンブル無双 ギャンブルしか取り柄の無い俺が、異世界で国を手に入れるまで

姉帯鴉

第1話 博打で金を減らして帰った記憶は無い

ロン!これで今回も俺のトップだな。

煙草を燻らせながら、俺は対面の男に呟く

「はぁ!まだ五巡目だぞ、やってられるか」

チップを無造作に投げられ

カチンときたが、まぁもらえるものさえもらえれば文句はない

「あんたツキ過ぎだろ。」

今度は下家の男が不満げに声をもらす。

座った時から差があるんだから当然だと言うと、男は怒りに満ちた表情でこちらをにらみつける。すぐさまメンバーの男が割って入る。

「お客様トラブルはご遠慮願います。」

二人は悪態をつきながらその場を離れた。

悪かったな、迷惑かけちまって。メンバーに詫びを入れると

「それはかまいませんが、少しやりすぎですよ。あいつら普段からタチの悪いチンピラですから。」

悪いけど、こっちも生活がかかってるんでね。手加減をする余裕は無いんだ。

実際俺はギャンブルで生計を立てている。麻雀だけでなく、競馬、競輪、ポーカーにバカラ、ほかにも一通り経験しているが、最近は金を減らして帰った記憶は無い。

ギャンブルはツキも大事だが、腕も重要だ。

まぁ今日も目標の金額を大幅に上回ったことだし、おとなしく帰ることにした。

雀荘を後にすると、ふと後ろから足音が聞こえる。こちらが止まると足音も止まる。

着けられてる?そう思った瞬間、俺は走りだしたが、いかんせん普段の運動不足のせいか、すぐさま路地の袋小路に追い込まれた。振り返ってみると、面白くも無い、さっきの雀荘の二人組だ。

「さっきは良くも恥をかかせてくれたな。きっちり落とし前をつけてもらうぜ」

俺に負けるのは当たり前の事で恥じゃないと慰めの気持ちで言うと、

気に障ったらしく、もう一人の男が

「アニキ、もうこいつ殺っちまいましょう。俺たちの金が懐にたんまり入ってることだし。」

ちょっと待て、これはもう俺の金なんだが…

聞く耳をもたずとはまさにこの事、兄貴分と思われる男がナイフを持ち出して、こちらを牽制している。

あいにく俺はギャンブルには自信はあるが、喧嘩にはこれっぽちも自信がない。

逃げるにしても後ろは行き止まり。ギャンブルでも追い込まれるという状況は良くあることだが、こういう時は中央突破だ、臆病者は流れ弾にあたる。多少のケガはしょうがないにしても、俺は運が強い。逃げ切れるだろう。

そう思って、俺は走った。その刹那、故意か偶然がどっちでもよいが、男のナイフが深々と俺の胸に突き刺さっていた。

「アニキ!やばいですよ」

「いやこいつがいきなり突っ込んできて」

二人は狼狽している。どうやら、実際人を刺すような根性は無く、脅しのつもりだったらしい。二人は大慌てで路地を後にした。

結局金も持って行かないのか・・・こういう時は厚い財布が盾になって命拾いしたなんて話しは創作でよくあることだが、残念ながら、財布は尻ポケットに入っている。

読み間違いで大損をする。自分にはありえないと高をくくっていたが、ギャンブラーとしては最後の最後で締まらない。いやギャンブラーとしては相応しい最後なのかもしれない。そんな事を思いながら、俺は胸からとめどなく流れる血を押さえながらその場に倒れこんだ。

               ・

               ・

               ・


「っさん おっさん」

俺を呼ぶ声に誰がおっさんだ、俺はまだギリギリ20代だ。そう思って目を覚ますとそこには犬のような耳を付けた小柄な少女が立っていた。

コスプレ?ハロウィーンにはまだ日があるが、まぁ今時珍しくも無いかと思ったが、どうやら様子が違う。そもそも俺は路地裏で刺されたはず。でもここはどこだ?高い壁に囲われているが、どうやら市場のようだ。自分があっけに取られていると

件の犬耳少女が

「おっさん、気づいたら商売の邪魔だから、とっとと向こうに行ってくれ。まったくどうせ博打で大負けして無一文で行き倒れたんだろうけど、この国じゃそんなもん珍しくもない」

博打で負けたとは聞き捨てならないが、今はその事より重要な事がある。

ここは一体どこなんだ…

「なんだおっさん、ここがどこか知らないまま大負けしたのか」

犬耳少女が俺をバカにしたように笑う。

「ここはブリング国、世にも名高い博打国家さ」





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