神さまの仕事は暗殺者に似て
相生蒼尉
第1話 神様に転生した。そして、チラ見した。
「キミにはディーエウスの都市神になってもらう」
「オレがトシガミ、に、ですか……?」
いきなりそんなことを言われた。意味がわからない。
「そうだ。生前の善行によって与えられた最高の栄誉だと思ってほしい」
オレの前にいるなんだか偉そうな男の人……めちゃくちゃイケメンすぎてビビるし、トシガミになれとか意味不明なことを言ってる時点で人じゃないかもしれないけど、とにかくその人がそう言った。
どうやら何かが変だ。あまりにも唐突すぎて理解が及ばない。
周囲を確認してみる。
全体的に、どこかの高級ホテルのスイートルームのような雰囲気の場所だ。
スイートルームなんて入ったことないけど、テレビなんかで芸能人がレポートしてるのを見た記憶にならここに近いものがある。
うらやましいとは思っていたものの、そういうところに泊る機会も金も持ち合わせてなかった。
……なんでこんなところにオレはいるんだろうか?
「ええと? オレの生前の善行って……」
「直接的には子どもを助けるために命を投げ出したことだが、それ以外のキミの人生も含めて、ではあるな」
「子どもを助ける……? ああ、あれか……そういえば……」
確か、車にひかれそうになっている子どもを助けようとして……道路に飛び出した記憶が最後だ。
手は……あの子どもに届いた、はず……。
そのあとは……この不思議なスイートルームの中、か。
ぷつりと何かが途切れて、道路に飛び出した地面とこのスイートルームのことはつながらない。
でも、なんとなくわかったことはある。
……そうか。オレはあの時、死んだのか。つまりここは、死後の世界、なのか。
え?
死後の世界ってスイートルーム? すごくないか?
いや、そうじゃない。
オレ……死んだのか。そっか。でもまあ、後悔はない。
「……あの。オレが助けようとした子どもは、まさか……」
「あの子は生きている。だからこそ、命を捧げたキミをここに招いたのさ」
それならいい。それで、いい。
オレ自身が子どもの頃に、どこかのお姉さんにそうやって命を救われたことがあったから。
親に連れていかれたそのお姉さんの葬儀を思い出す。
あの時に、立派な人間になると誓って毎日まじめに……うん。嘘はよくないか。ほどよくまじめに生きてきたけど……まさか最後はあのお姉さんと同じ死に方になるなんて、な。
人生をやり切ったというわけじゃない。健康だったからもっと長生きできたんだろうと思う。
でも、オレはあのお姉さんに恥ずかしくない生き方だけはできたんじゃないか。そう考えることができた。だから後悔はない。
偶然にしてもできすぎていると思って、オレは思わず微笑んだ。
「……死して誰を恨むこともなく微笑むとは……資質は十分だということだろう」
「資質……?」
「キミの……都市神としての資質だ」
「その……トシガミって何なんですか?」
「む……そこからか。簡単に説明すると、ひとつの都市というか、町というか……そこの守り神のことを都市神という。くわしいことは教育係の都市神から教えてもらえるように準備はしている」
都市? 町? ああ、トシガミって都市の神で都市神か。
「ええと、守り神というのはなんとなくわかったというか……? その? 教育係っていうのは……?」
「その前に大切な儀式がある。そうだな、キミはこれから……ゼノデウスと名乗るように」
「ゼノデウス……?」
ピカッ!
イケメンさんが輝いて、まぶしいと思った瞬間には元の明るさに戻る。
なんだか力が湧いてくる感じだ。不思議な感覚が全身をめぐってる。
温泉に入ったみたいにポカポカとして……なんだこれ?
ええと……オレは……誰、だった?
ゼノデウス? いや、死ぬ前は……誰だ? 思い出せない。
記憶は……ある。
いろいろなことを覚えている。どうやって生きてきたのかは……分かる。
それなのに……名前は、思い出せない……。少なくともゼノデウスではなかったと思うけど……。
死んだから、だろうか? 名前を思い出せないのは?
「ウェヌスーラよ。あとは任せる」
「はい」
涼やかな返事の声が聞こえたので振り返ると、オレの後ろに金髪褐色肌の超絶インド系美女が立っていた。
アメジストみたいな紫の瞳がものすごく……美しい。
……なんだこの美女!? え? ハリウッド俳優みたいな!?
おそろしいほどの……ボンっ! キュっ! ボンっ!
出るところはぐわんと飛び出て、しまるところはぐぐっとしまってる。
スタイルよすぎだろう!?
あと布面積!? ヤバいからもうちょっと隠して!?
オレはウェヌスーラという超絶美女から慌てて目をそらした。
でも、チラ見はした。そこは許してほしい。
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