祠を動かしてはいけません
鋏池穏美
東奥■■日報 昭和二十五年八月二十八日 朝刊 ■■地区で宅地造成中、関係者ら相次ぎ急死── 祠移設後に十名 地元に不安の声
青森県■■郡■■地区で進められている宅地造成工事において、この半年の間に関係作業員および地元住民あわせて十名が急死していたことが二十七日までに判明した。いずれも死因は心臓麻痺とされているが、工事関係者の間では「祠を動かしてからおかしくなった」との声があがっており、地区には不安が広がっている。
同地区は戦後の住宅不足を背景に、県が中心となって造成を進めている新興住宅地で、今年二月より工事が始まった。問題の祠は造成予定地北端にあり、老朽化のため六月に解体、近隣の丘上に移設されたという。祠は地元で古くから守られてきたもので、戦前には祭礼も行われていた。
工事開始後まもなく、重機操作員の佐藤金作さん(四八)が作業中に倒れて死亡。続いて測量員、監督補佐らが相次いで急死し、最近では地元住民の中からも犠牲者が出ている。いずれの遺体にも外傷や異常は見られず、検視の結果は急性心臓麻痺。県警では偶発的な体調不良が重なった可能性もあるとしている。
一方、地区内では「祠を動かした祟りではないか」とのうわさが広まり、夜間の作業を拒む労働者も出始めている。造成地北側では重機の故障が相次ぎ、施工会社関係者の間でも「このままでは工事が続けられない」との声があがっている。
地区協議会の柴田利夫会長(五〇)は「昔からあの祠は触れるなと年寄りに言われてきた。場所を変えたのがいけなかったのでは」と語り、県土木部は「科学的根拠のない風評」として沈静化を呼びかけている。
なお、死亡者の一人である施工会社の谷川政信現場監督(三七)は、亡くなる当日の朝「夢見が悪い」と周囲に話していたという。
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