金銭欲は罪の意識さえも正当化する魔物だ。

タイトルの「いってはいけない」――人生、様々なシーンでこのフレーズに立ち会うかもしれません。本作ではこの意味が極めてシンプルかつ強烈なメッセージ性として私たちの柔らかい心にナイフのように鋭く訴えかけてきます。
金の切れ目が縁の切れ目と言いますが、本作は一味違った金銭欲が正常な判断を狂わせ、罪の意識を喰す魔物のように感じるかもしれません。
病的なほどの自己暗示をかけ続ければ、ここまで正当化することができるのだろうか……そう考えるだけで人間のもつ深層心理が何とも恐ろしい。
細部に亘る表現のひとつひとつを丁寧に拾うにつれ、味わい深くなるホラーとリグレット。
人間の業と、誰もが知る箴言の本質を端的に表した素晴らしい掌編です。

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