第36話人生は楽しんだもの勝ち

 第15部隊に帰った時は、ひと悶着あった。まあ、当然だな。死兵として送り込んだのに帰ってきたんだから。誰も帰ってくるはずがないと思っていたのにも関わらず、2人だけ帰ってきたんだから、驚かない方がおかしい。まあ、普通に逃げ出したと考えても良かったんだろうが、仲良く大将首を持ってきているのだから、仕方がない。逃げたとは見做されず、次の機会も参加させられることになった。でも、そんなに機会は無いと思うぞ? 徹底して叩き潰したし、恐怖を与えたからな。これで何度も何度も出勤させられたら、大変だぞ。俺たちは良いにしても、他の第15部隊の人たちが可哀そうだ。死ななければならなくなるからな。運よく生き残るかもしれないけど。


 そんな訳で、引き続き模擬戦をしながら待機をしていた。今回使った召喚獣は、特に欠けることも無く。ゴブリンヒーローですら負けなかったのだ。まあ、当然ではあるが。属性ドラゴンに苦戦をしている様では、Sランクの魔物なんて倒せるわけがない。まあ、それはこっちの軍隊の話ではあるんだけど、それでも、その軍隊と同レベルの軍隊しか用意できていない時点で、敵の戦力もこっちには太刀打ちできないって証明になっているからな。楽勝である。でも、個人的には辛勝がしたい。血沸き肉躍る戦闘がしたい。死なないから出来ることではあるんだけど、苦戦をしたい。楽勝では話にもならないからな。


「暇だねー。模擬戦しかする事が無いんだよ」


「暇なのは良い事だ。俺たちが介入しないといけないような事態になっていないと言う事だからな。撤退戦の殿なんて、生き残ることが難しいからな。これが追撃戦になってくると、話は違うんだけど。俺たち第15部隊の被害はそんなに出ないとは思うんだよな」


「へえー。そうなんだ。でも何で? 逃げる敵の方が必死になって戦わないかな?」


「それはそうなんだけど、生き残る可能性があるのは、殿よりも追撃戦だ。追撃するのは、俺たちじゃなくても良いからな。別の部隊の人たちがやってくれることでもある」


「ああー。そう言う事かー。別に私たちが倒さなくても良いのかー」


「そう言う事だな。だから、追撃戦の方が生き残る可能性は高い。まあ、その為の仕掛けとして部隊運営されるから、死ぬ可能性が高いのはそうなんだけど」


「でも、生き残れそうなら良いよね。部隊の人が減ると、負担が増えそうだし」


「まあ、それはあるだろうな。こっちに負担が圧し掛かってくるようでは問題があるんだけど」


「そうなの? 面倒なのは面倒だとは思うけど、問題があるの?」


「あるぞ。アーリアはこのまま軍に残り続けるつもりか?」


「残らないよ? 20歳までで終わりだもんね」


「だろ? 俺たちが抜けた後が問題になるだろ? 戦力的に大きな抜けが出来るんだから」


「ああー。でもそれってしょうがないんじゃないかな? 私たちだって戦争に参加したいから参加している訳じゃないしね」


 それはそうだ。戦争なんて参加しない方がマシである。それは誰だってそうだ。だが、俺たちが活躍すればするほど、軍隊としては勝ちに慣れてしまう。負けることがなくなれば、負けることを恐れなくなってしまう。それでは問題が大きくなるんだ。


 俺たちとしては、任務だから何とかしないといけないが、他の兵士たちはどう考えるだろうな。自分たちのお陰で勝っていると錯覚しないか? 錯覚した場合は、目を覚まさせるには、大敗させるしかない訳で。そんな事を重要な局面でやらせるわけにはいかない。そんな事をしてしまえば、国として危ういからだな。そんな事では駄目な訳なんだ。


「だから、適度に負けて貰って、良い感じに負けを覚えて貰っていると、後々活きてくるんだよ。俺たちが介入するだけで、戦局が変わるんだから、俺たちはどんどんと投入しない方が良い訳だ。下手に勝ってしまえば、意味不明な勝利を覚えてしまうからな。致命的に負けるって事を覚えておかないといけない。まあ、5年だけだからな。そこまで影響は無いとは思うけど」


「色々と考えないといけないんだね。指揮官も大変なんだね?」


「指揮官は大変だぞ? 色々とやらないといけないからな。まあ、第15部隊を動かすときってのは、必勝の時というか、何が何でも成功させないといけない時だから、まだマシだとは思う訳なんだけどな。簡単には終わらないとは思うけど」


「簡単に終わってくれた方が楽で良いよね。楽して終わるのが一番いいよね」


「まあ、確かにな。楽して終わりたいよな。……楽させてくれるんだろうか。事ある毎に出陣させられるような気がしないでもないけどな」


「良いんじゃないかな。暇なんだし。私だってもうちょっと強い人と戦ってみたいかな」


「ヴァンパイアカウントよりも弱いからなあ。歯ごたえが無さすぎて駄目だよな。何というか、もうちょっとどうにかなっただろって感じなんだよ。もっと強くなれるだろって真剣に思うようにはなったよな」


 他の人がどうやって自分を育成しているのか知らないが、弱すぎるんだ。まあ、召喚士がチートってのは間違っていない。でも、召喚士なら召喚獣を使ってこそじゃないのかね? 敵の召喚士なんて見なかったんだけど。敵国もINTに極振りしているんだろうか。そんな事では話にならないんだけどな。何というか、ちゃんと育ててやれば、強くなるのにって感じである。まあ、それ以上に召喚士が化物みたいな強さになるんだけどな。ここまで伸びるとは思ってもみなかった。ゲームの時は、バグが修正されたからな。まあ、バグでは無かったみたいなんだけど。この世界を元にゲームを作ったら、バグ扱いされたと、そう言う事だもんな。


 さて、どうしようかね。次の作戦が何時になるのかは知らないが、そろそろ出陣しても良いんじゃないかな。別にあの戦線だけが戦場って訳でもないんだろうし。他にも戦線はあるはず。そこに迎えと言ってくれないと、俺たちが向かえないんだけど? 勝ちたいわけではないんだけど、何もせずに居るのが暇なんだ。それならまだ何かしら動いていた方がマシなんだよなあ。無双ゲーのように、無双したい。楽しいからな。まあ、命を奪っていると言われたら、それまでなんだけど、何というか、ゲームの延長線上って感じなんだよ。HPがあるからなんだろうけどな。


 楽しい時間は中々やってこない訳で。生きているだけでも儲けものって感じの第15部隊なんだけど、生きているだけじゃあつまらないんだよな。もっと面白い事があっても良いと思う。敵が強ければ強い方が良いんだよ。もっと強い敵が出て来てくれないとつまらないじゃないか。5年間があっという間に過ぎ去ってしまったら、そこまでなんだぞ? 戦争には一生関わらないで生活するんだ。その方が安定した暮らしが出来るからな。だから、危険な事は今のうちに経験しておきたい。次の戦場では苦戦というものを経験しておきたい。


「贅沢なんだからー。安全に終わる方がいいじゃん」


「それはそうではあるんだけどな? 安全過ぎてもつまらないと言うかさ。もっと危険な事がある方が楽しいじゃないか」


 ゲームの時みたいにさ。ランク戦をしている時みたいに、危機感があった方が楽しい訳で。召喚士として、召喚獣をフルに使って戦う方が良い訳だ。その方が戦っている感があるからな。だから、もっと苦戦という状況に放り込んで欲しい。もっと苦戦がしたいんだ。楽勝なだけなんてつまらない。それじゃあ面白くもなんともない。人生は楽しんだものが勝者なんだ。

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