第30話INT極振りの末路

「ドラゴンってさ」


「ん? なんだ?」


「なんでこんなに弱いのかな?」


「そりゃあ、俺たちが強くなりすぎたからなんだが?」


「でもさ、もっと上を飛んだら良くないの? ここからだと、ジャンプで壁を登っていけば届くんだよ?」


「いや、お前なあ。普通の人はそんなこと出来ないからな?」


 無茶苦茶である。ドラゴンたちは谷の間を飛んでいる。だから、谷を蹴って垂直方向に登っていけば、ドラゴンを狩ることが出来る。が、そんな事が出来る人間は殆どいない。というか、DEXとAGIのせいだとは思うが、俺も出来る。しかし、やり始めたのはアーリアが先である。こんな事が出来る訳がないという常識から、やっていなかっただけなんだよ。


 だが、アーリアはそもそも常識が余りない。農家の娘に、何を期待しろと言うのか。やってみて、駄目なら駄目で考えればいいやと、平気で思うのである。それで出来るようになったのが、崖のような壁を、小さな窪みや出っ張りを利用したクライミングである。ただし、手ではなく、足で登っていく。見た目は走っているようにしか見えない。だが、類稀な動体視力と、器用さをもって、ぐんぐんと上へと登っていく様は、まるで壁を走っているようにさえ見える。……最近は慣れてきたのか、壁を見て、シミュレーションが出来ているんだろうな。足元を見なくなってきたんだよ。それでドラゴンにパンチをお見舞いするのである。で、落ちる途中で契約を発動して、そのまま着地。うんうん。何かの演目かな? 大道芸を見ているような感覚である。


「ね? 簡単でしょ?」


「そうだな。俺とアーリアにとっては簡単だろうな。……他の人は出来ないからな?」


「皆もステータスを上げれば解決するのにね。なんで上げないんだろう?」


「いいか? そもそもこれは召喚士にしか出来ない事だ。レベルを下げる手段を、ファイター職もマジシャン職も持っていないからな? まあ、その代わり進化するんだけどな。進化すれば、レベルが1上がれば、SUPが5とか10貰えるようにもなる。なるんだが、それをAGIとDEXにぶっぱする様な奴は居ないからな。俺たちだって、必要最低限のSTRとINTを確保しているように、必要最低限のステータスはあるんだよ。召喚士のように、自由にって訳にはいかないんだよ」


「でも召喚士なら出来るんだよね? なんでINTに振れって言っているのかなって。無駄じゃない? ドラゴンにはINTは無駄だし、ヴァンパイアにも無駄だよね? じゃあさ、STRを上げた方がマシじゃないかな? それならドラゴンだってヴァンパイアだって倒せるんだよ?」


「うーん。人間は属性のダメージ軽減を装備で整えないといけないからかな。装備で整えられれば、効かなくなるけど、それにはドラゴンを定期的に狩らないといけないからね。そんな事は、……俺たちじゃないと無理だろ? 他の国も同じなんじゃないかな。無理だから、INT極振りなんて事が流行っているんだろうし、それで苦労をして来なかったから、変える気が無いんだろうな。苦労をすれば、変えるんだろうけど、苦労せずに終わってきてしまったんだろうなって思うんだよ」


「でも、今度は逆にINTが過剰にならない? 人間相手にそんなにINTって必要になるの?」


「いや、要らないな。正直誰もMNDなんて上げないんだろうから、INTは500もあれば十分だ。計算したら、それでもオーバーキルになるな。INTは100000も必要ない」


「それならさ、100000まで上げたら、他のステータスに振るとか考えないのかな?」


「あー。アーリアは、なんで俺たちがここまでレベルが上がっていると思う?」


「え? そりゃあ、レベルが上がると召喚獣にレベルを上げるから?」


「そうだな。召喚獣を用意するには、どうしたらいい?」


「契約すればいいんじゃないの?」


「そうだ。契約するには、どうしたらいい?」


「えーっと、殴る?」


「……HPを半分以下にする、だ。そうしないと契約出来ないからな」


「ああ、そうだったね。殴れば大丈夫だと思ってた」


「それでだ。INTを上げている訳だよな? 俺たちは何を初め契約した?」


「えーっと、ゴブリンだよね。ずっと前の話だけど」


「そうだな。その時はどうやって契約した?」


「殴った。待って待って、冗談だから。えっと、STRを20にして殴ったよね。HPが半分以下になる様にして、かつ死なない様に」


「そうだ。……その時に、他の召喚士を見たか?」


「えっと、そう言えば、見てないね?」


「召喚士は精霊の方に行ったからな。そっちだとどうなる?」


「え? そっちに行った場合? どうなるんだろう……。あ! MPがなくなる」


「正解だ。MPの消費がもの凄い事になる。だから、碌にレベルが上がらない。けど、契約は出来るだろうな。……それで、INTを上げていくと、精霊を1撃で倒してしまうようになる」


「うん。それだと効率が悪いんだよね?」


「そうだ。契約した方が経験値は貰えるからな。じゃあ問題だ。精霊が一撃で倒せてしまう。そうしたら、契約が出来ない。他の召喚士たちは何をしたと思う?」


「……あれ? 移動しないと契約出来ないよね? ゴブリンを殴れば出来るけど」


「そう。場所を移動するんだよ。そして、多分だけど、俺たちが行かなかった町に行って、どんどんと経験値を稼いでいく事になる。契約は二の次でな。契約するには、INTを上げないって選択肢が必要になってくるが、極振りをしているなら、上がったらINTにつぎ込んでいく訳だ。そうなると、段々と厳しくなってくるのが解るか?」


「えっと、厳しくなるの?」


「そうだ。召喚獣はレベル100までしか上がらない。だから、召喚獣が少なければ、SUPが100000稼ぐ前に、経験値を移譲する召喚獣が居なくなる。全部を契約してきたら解らないが、多分だけど、契約もそこそこでやってきていたら、INTは70000くらいでレベルが1000を超えてくるはずだ。それくらいの余裕が無い状態で、パワーを倒しまくっているという訳だな。だって、それ以上になってくると、一気に無属性魔法が無効化されるからな。だから、パワーでレベルを上げるしかない。天使高原でレベルを上げるしかなくなるんだよ。そんなような状態で、最終的には5年でINTが100000まで上がって、レベルが30000とかになっているはずだ。もっと契約していれば、もっと楽が出来ただろうにな。それが普通の召喚士だ。だから、宮廷魔導士団の入団条件が、INT100000なんだよ。まあ、人間相手には無駄だろうけどな。そこまでINTを上げる意味がない」


「だよね? でも、人間は属性のダメージ軽減を出来ないから……」


「そうだな。VITやMNDを育てたファイター職の上位職でも一撃だろうな。属性のダメージ軽減を持っていなければ」


 そうして、そういう馬鹿みたいな宮廷魔導士団が出来上がると。何も考えずにINT極振りをした者の末路がそれだ。汎用性も何もない。ただの固定砲台になるだけだ。しかも、属性のダメージ軽減をされていれば、無残にも殺される事になる。簡単に蹴散らされるだろうな。それが弱点だ。簡単に滅ぼそうと思えば出来てしまうんだよな。俺たちだって、今だったら出来てしまう。防具が整った今ならな。まあ、素のMNDで受けても良いんだけど。流石に20000000のMNDがあれば、受けきれるだろう。基本的にはINT×5で計算式が組まれているはずだからな。エナジーバレットは。そこからHPをどれだけ削るのかって計算がされる訳で。単純計算だけどな。まあ、俺たちのHPを削りきろうと思えば、ダメージは億越えじゃないと無理だ。それだけの火力を出せる召喚士がいるだろうか。居ないだろうな。INT極振りだと、限界があるんだよ。

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