異世界転移した先でのスキルガチャが大ハズレで全てを失った

@kumatarousujke

第1話 全てを失った男


 高校一年生、サッカー部、文武両道、彼女持ち、俺は今、人生で最高に青春を満喫していた。


 「おはよー玲央れお

 「おはよう。」

 「玲央くん、おはよう。」

 「おっはよー」


 「玲央くん!」

 「あかね、おはよう。昨日寝落ちしちゃってごめんね。」

 「むー、私怒ってるんだからねー。ぷいっ!」


 可愛い彼女がいて、心許せる友達がいて、さいっこうの生活だ。

 こんな生活が、永遠に続けばいいのに。


 俺は彼女の長谷川はせがわあかねと教室へ入った。


 いつも通りの光景。


 運動部男子たちが朝からブロストをやっており、明るい女子たちが集まって談笑している。


 ちょっぴり暗めの男子たちは、よくわからない話をしていて、文化部系の女子も、難しい話をしていて。


 1人で読書している人も、ちょっと厨二病がきつい子も。


 みんながみんな自分たちの世界を楽しく幸せに生きている。


 「おはよー八神やがみ

 「はよー」

 「朝から彼女と登校とは、ったく羨ましい限りだぜ。」


 クラスメイトで友人の平尾ひらお一郎いちろうは毎日欠かさず彼女を探している。

 

 「一郎、そういうことは人前で言うなよ」


 朝から真面目なことを言っているのは成田なりた星斗せいとクラス委員長で生徒会長でもある。

 一年ながら生徒会長とは、少し張り切りすぎだと感じるが、本人は至極優秀で卒なくこなすせいか違和感がない。

 バスケ部のエースで、同じグループの良き友達だ。

 

 「はは、星斗お前彼女いないからって〜」

 「ちがっ、そんなんじゃ!!」


 星斗をいじっているのはかん慎介しんすけ、盛り上げ担当のお調子者。

 でもとても友達思いなやつだ。


 「玲央、知ってるか?」

 「ん?」

 「神隠しのことだよー。」

 「最近あったやつだろ。忽然と姿を消した人。」

 「そうそう、集団神隠しもあったって。」

 「はは、俺たちには関係ないってーの。」


 話は聞いている。噂にもなっており、隣の高校の生徒が数人行方不明になったり、別の県に暮らす女性が消えてしまったりと。そんな話だった。


 その瞬間だった。

 辺りが眩い光に包まれた。

 

 「なに、どうなってるんだ。」

 「扉開かないんだけど。」

 「んだこりゃ。」


 だれもがパニックになっている。

 足元の光は少しだけ熱を帯びてきて、靴から伝わり骨の芯に届く。


 「玲央くん!!」

 「茜、、、大丈夫、茜は俺が守ってやるから。」


 そう言って彼女を抱きしめる。

 だんだんと光は強まっていき、やがて眩しさで目を開くことができなくなる。


 「がああああああ。」


 「、、、、」


 目を開く、そこは教室ではなかった。

 光が差し込む高い天井と、真っ白な床に銀の装飾が施されている空間。


 「召喚は、、、成功か。」

 「気を緩めるな、本番はここらからだぞ。」

 

 初老の男性と思しき人が1、2、、、14人。見てる範囲でこんなところか。


 誰もが気が動転している。

 そんな中、クラス委員長の星斗が口火を切った。


 「すみません、ここはいったいどこなんでしょうか。」


 星斗の問いかけに対し、1人の老人が、


 「、、、ここは、そうだな、君たちからみて異世界ってところかな。」


 「い、異世界?」


 思わず疑問符を出してしまう。

 俺の言葉を皮切りに皆一斉に声を出す。

 俺も文句の一つでも言ってやりたかった。

 しかし、隣で涙を浮かべながら服の裾を握っている彼女の姿を見ていては、俺がなんとかしなければという思いが湧いてきて、頭は冷静だった。


 「星斗、俺たちでなんとかしよう。」


 頼りになる生徒会長へと視線を向けて、そう呟く。

 それを聞いて、彼も顎を小さくひいて、

 

 「ああ、今ここにはクラスメイト30人と異世界人だけ。

 バラバラになんてなるわけにはいかない。」

 「そうだ、俺たちでなんとかしよう。」


 女子たちの不安の表情や、不良たちの怒りと怒号、一部男子はすこし盛り上がっているのか?

 なんにせよ、目指すべきは学校に帰ること。

 母や先生に心配をかけるのは嫌だしな。


 「電波は繋がらないよな。」

 「スマホは機能しない、、、か。」


 「成田くん、と八神くん。」


 俺はおまけかい!

 と、ツッコむのはおいておいて、


 「淵上ふちがみさん。」

 「ちょっと何が起きてるかわかんなくて、みんな不安なの。男子なんだから話聞いてきてよ。」


 せっぱ溜まった様子で問うてくる彼女に、俺は親友の顔を見て、

 

 「星斗、どうする?」

 「どうするって、決まってる。

 淵上さん、女子には俺と八神であいつらと話してくるって伝えてくれる?」

 「わかったわ。けど大丈夫なの?」


 お前が行けって言ったんやんけ!!

 だが、俺はできる男、女性には直接突っ込まず、心の中で毒を吐くだけ!


 「星斗と俺に任せとけ、召喚した理由。聞いてくるよ。」


 ***



 「話があるのですが。」


 白い礼装に身を包んだ初老の男性たちの話に割って入る。

 彼らは真剣な面持ちで、話を進めていたので少し尻すぼみしたが、そんなことしている場合でもないため勇気を出して声を出す。


 「どうされましたかな?」

 「単刀直入に聞こあと思います。ここはどこですか。俺たちはどうしてここにいるんですか。」


 星斗の問いに、1人の男が答えた。


 「ここはケルニヒス宮殿で、君たちが召喚された理由は予言に従ったためだ。」


 予言、、か。

 なんて言うか、ちょっと陰謀じみていないか。

 俺はそういうの信じてないんで、もう少し科学チックな説明をご所望させていただきんすよ。

 

 彼は予言の内容を伝えてくれた。


 「予言はこうだ。今から約500年後、世界を破滅へと導く厄災が降り注ぐ。厄災を退ける力を持つ英雄を異世界から召喚したまえ。さすれば世界は救われん。と。」


 握っていた杖で床をカン、カンと鳴らしながらそうおっしゃる。

 左右繋がった長い眉を上下に動かしながら、気迫ある言葉であった。

 俺たちはその予言とやらのせいで召喚されたと言うわけか。

 ってなるかよ。

 召喚なんてばかばかしい。

 呼び出すなら令状でもおふれがきでももってこいといものだ。


 「召喚なんて、できるわけないだろう。だいたいそんなことできるなら車や飛行機なんていらない。」


 俺のツッコミに杖をついた爺様たちは眉をひそませて、

 

 「車や飛行機が何かはわからないが、君たちの世界に魔術がなかったと言うことだけはわかった。」


 そういうと漢は手のひらから炎を出してみせた。


 「嘘だ。そんなバカな。」

 「ありえない。どんな手品ですか。騙そうとしているんですよね。」

 「そんな、我々はただ真摯に答えているだけにすぎません。

 それに、これくらいのことなら魔術を学ぶか、コモンスキルを習得すれば誰でもできますよ。」


 魔術? コモンスキル? なに部の顧問だよ。


 「取り敢えず、俺は淵上さんたちに場所と召喚された理由を教えてくる。玲央は引き続き話を頼めるか。」

 「任せてくれ、、、って言っても、俺はあまり話についていけてる気がしないな。」

 「俺もだよ。」


 お互い顔を見合わせて微笑む。

 もし爺様連中の話が本当であるならば自分たちは無力でどうしようもないというのが現状であるか。


 「なあ、魔術ってのは他にどんなのがあるんだ。」

 「たとえばこんなのとか。」


 俺の眼前に手のひらを向けると、突如突風が巻き起こる。

 その突風が俺の足に絡みつき、腕を撫で、首をくすぐる。


 髪は逆立ち、俺は瞼を閉じ、やがて風は止んだ。


 「たしかに、風ならどうやっても隠しようがないのか?

 いや、でも本当にそんなことあり得るのか。

 拉致だとして、なぜ俺たちを縛らない。そもそも俺たちは本当に異世界にきてしまったのか。

 あの、本当にここは日本じゃないんですよね。」

 

 「ここはケルニヒス宮殿ですから。」


 話が噛み合っている気がしない。

 まず、噛み合った瞬間があるかは定かではないが。

 あれだ、歯車の位置が最初から遠すぎるみたいな。

 どれだけ話しても埒があかない。


 「そもそも、俺たちが世界を滅亡させるだけの厄災を退けることができるのか?

 別に俺たちは普通の高校生で、社会人経験ある奴の方が少ないし、あってもバイトくらいだぞ?」

 

 即戦力になるのか?

 社会人一年目では、玉拾いしかさせてもらえないかもしれないらしいし、そもそも高校卒業すらしていない俺たちなんてべつに英雄になんてなれっこないと思うけど。


 「少し、我々の知らない話をされておられるが大丈夫。君たちには未来がある。」


 今潰されたようなもんですけどね!

 なぞの異世界とやらで生き抜く術なんて、この15年で学んでいない。 

 呼び出した彼らには申し訳ないが、おとなしく返してほしい。

 できるなら、学校前かお家の前に下ろしていってくれる紳士なデートプランがいいかしら。


 「未来って具体的にどう言うことですか。

 俺は正直絶望したいですよ。でも守るものがあるから、そんなことはできない。していいわけがない。」


 「そうですね。今から、始まりますよ。スキル選びが。」

 「なに? スキル選びがどうしたって?」

 「全部聴こえておられますよ。」

 「ああそう? スキル選びってのはなんだ。」


 イメージ的には資格試験みたいたものだろうか。


 「転移者にはそれぞれ、三つのスキルが与えられます。メインスキル、サブスキル、そしてユニークスキル。」

 

 「ほおほお。」


 なに? ゲームでいう銃、ボム、ウルトみたいなもんか?


 「メインスキルは個人修練では習得が非常に難しいものが与えられる。

 剣術や魔術などが、自らの腕や足のように自由自在に操れるスキルもあれば、身体強化や寵愛を承ることができるものもいる。」


 「ふむふむ。そんで、サブリミナルなんちゃらは?」


 「サブスキルは、人間が生まれつきでしか得られないものを得られる。

 生まれつき足が速いもの。遅いもの。頭が切れるもの。時間管理が得意なもの。空間把握脳力の高いもの。

 いろいろな不平等が存在するであろう?」

 

 「それって貧乏人なら金持ちに慣れたりするんすか?」

 

 「、、、それらの不平等を再度撤廃するチャンスが与えられる。それがサブスキル。」


 あ、無視された。

 無視しながらも彼らの解説は続く。

 赤い描写にベルトをつけた本を持っていた長髭の爺さんが、


 「そして、ユニークスキル。これはもはや説明不可能。千人いれば千個のユニークスキルが存在する。

 メインスキルやサブスキルが被るものは当然存在するが、ユニークスキルが被るものは誰もいない。」


 「へー」


 塩基配列みたいなものかな。まあ、別に塩基配列がなにかは知らないけど。

 個人識別にはもってこいだな。この世界だとマイナンバーとか必要なさそう。

 でも、持ってる人持ってない人がいるから結局マイナンバーはいるのか。


 「それって異世界転移した俺らだけが持ってるんですか? それとも、この世界の人も持っているんですか?」


 「それはわからない。ただ、潜在的にだれもがメインスキル、サブスキル、ユニークスキルを持っておる。

 それらを覚醒させるためには、経験や勉強、あらゆる方法で覚醒させられるが、覚醒させられたとしてもそれを自覚することはかなり難しい。」


 俺たちの世界でいう、勉強得意、運動得意、みたいな感覚か?

 それが当てはまるかわからないが、文面に起こしたりしてくれないとわからないもんだよな。


 「じゃあ、俺たちはどうやってそのスキルを覚醒させるんですか?」

 「それは覚醒剤を使うんじゃ。」


 その単語を聞いて、俺の中に警察車両の中からたくさんのフラッシュを焚かれてフードを被った自分の写真が頭をよぎった。

 

 「はぁ!? ジジイテメェそれは超えちゃいけねぇラインだろうが!

 何ナチュラルに誘ったんだ、頭大丈夫か!?」

 「なにをおっしゃられるか。」

 「わからないとでも思ってんのか。麻薬だろ麻薬。そんなもの俺たちに吸わせようって」

 「麻薬、そんなものではない。」

 

 覚醒剤が麻薬以外に何があるんだよ。

 もしかして、この世界では覚醒剤ってのは俺たちの世界のトブヤツ以外の名称として使われてんのか?


 「麻薬ではない。吸いもせんわ。

 ただ、水で薄めて飲む。」


 「どっちも同じだろ!!」


 って、このやりとりはもういいか。

 なにかを思い出したかのように杖をついている爺が、


 「そうじゃ、意識を集中させるんじゃ。」

 

 「なんだよ、俺はまだ覚醒剤使ってないぞ。」


 今度はなんだ、あぶない新興宗教の教えでも布教させられるのか。

 渋々という形で、言われるがまま目を瞑り、意識を集中させる。


 「なんじゃこりゃ!!!」


 <<<ヤガミ レオ 16歳

 体力   D

 筋力   D+

 防御力  E

 魔力   F+

 魔法防御 E

 瞬発力  C-


 メインスキル  なし

 サブスキル   なし

 ユニークスキル なし

 コモンスキル  なし>>>



 なにこれ。

 もう幻覚を見ているのか?


 「まだ薬キメてないぞ。」

 「それはお主のステータスじゃ。」

 「ステータス。捨て致す?」

 「ステータス。それは異世界人、本人にしか見れんものじゃ。」

 「そーなのか。」

 「そうじゃ、わしらには備わっておらんものじゃ。」

 「おじさん、」

 「なんじゃ」

 「このコモンスキルってのはなに?」

 

 さっきのスキルの説明にはなかったよな。


 「それは誰でも手に入れられるものじゃ。金でも経験でもなんでもじゃ。」

 「なに、火魔術練習したらそれ系のスキルが貰えるとか?」

 「そんなところじゃ。」

 「掃除しまくったら掃除スキルが身につくみたいな?」

 「そうじゃな、、」

 「麻薬吸ってたら麻薬系のスキルが」

 「もう麻薬から離れろ!!!」


 それもそうだな。

 そんなボケとツッコミをしながら話をしていると、クラスメイトの元から帰ってきた少年の声がする。


 「玲央!」

 「星斗、みんなはどうだった?」

 「まだ混乱しているようだ。伝えたけれど、わからないことだらけって感じだな。そっちは?」


 俺は星斗に、おじさんとの会話を説明することにした。

 隣におじさん達がいるので、ところどころ補足してくれた。


 その説明を受け、星斗がクラスメイトに状況を教えた。

 すると、クラスメイトの1人が、


 「やはり異世界転移だったか。」


 と、妙な納得をしめす。

 その様子を面白くないと見たのか別の生徒が、

 

 「お前、なにか知ってるのか?」

 

 金髪で体もデカく、クラスの不良の頭張ってる奥山おくやま博史ひろしが、クラスメイトの、ちょっとオタク気味の廣川ひろかわともるに声をかけた。


 「お、奥山くん。今の話を聞いて、おれ、僕はよくある異世界転移ものにきたんだと思っただけだよ。」

 「やっぱり廣川の言った通りだな。」

 「とうとう来たか異世界!!!」


 俺たちや女子達とは違い、少しテンションが上がっている様子。

 彼らの顔には少し朱が刺しており、なんだな楽しいもののような気がしてくる。


 そんなにいいものなのか異世界とやらは。


 「ささ、早くスキル鑑定しましょう!!!」

 

 「お、おう。」


 おっさんたちに渡された透明の液体。

 廣川たちが一気に飲み干し、眠ってしまった。

 それを見ていた俺たちは飲むことができないでいた。


 「息はある。苦しんでいる様子もない。」

 「でも、、、」


 やはり、だれもが不安でいるか。

 というか、彼らが異常なだけか。かなり肝が座っているらしい。

 ちょっと見直したかも。


 「、、、俺は飲むぞ。」


 そういうと星斗はグラスを一気に飲み干し、そのままグラスを地面に叩きつけた。


 パリーンという音とともにグラスが粉々になる。

 やがて、星斗は足取りふらつき眠ってしまった。


 「しょうがねぇ。みんな、俺たちはクラスメイトを実験台にして自分たちは安全確認してから飲むような希薄な人間なのか!!!!」


 そういうと、俺は星斗同様透明の液体を一気に飲み干し、グラスを叩き割った。


 「あ、また割った。」


 おっさんが悲しそうな目で割れたグラスを見ている。

 悪いなおっさん。


 次々にグラスが割れる音がする。

 どうやら、みんな、のんで、い、るみたい、だ。


 ***



 これは、、、話には聞いていた。

 覚醒剤を飲むと、眠りにつき、眠った世界でスキルを自分で選ぶのだと。

 しかし、これは完全ランダムの中から抽選で選ばれた複数の、確か15〜25個のスキルから一つ選んでいくというものらしい。

 

 引き直しが効くのは何回までかは人による。

 

 例えるなら、トランプのカード、あれは13×4の合計52枚があって、その中からランダムに20枚抽選で選んだとして。


 その20枚から一枚を選んで持ち帰るという感じ。


 抽選で出なかった残りの32枚を引くためにもう一度ランダム掛け直すもよし。

 一枚決めるまでは引き直し制限にかかるまでは大丈夫とのこと。


 まあ、スキルは無数にあって欲しいものが手に入るようなもんじゃないらしいよ。


 スキルはそれぞれ、メインスキル→サブスキル→ユニークスキルの順で選ぶそう。


 つまり、今目の前に来ているのはメインスキルの種類ってことか。


 『お掃除』『洗濯』『ゴミ出し』『料理』、、、

 なんだこれは!!!

 なんで全部家事ばっかりなんだ。聞いてた話と違うぞ!!!

 チェンジだチェンジ!!

 

 まったくだ。


 次は、、、また訳のわからんものばっかり!!


 チェンジ


 チェンジ


 チェンジ


 チェンジ、、、


 チェ、、、


 チェンジ、、、、できない。


 嘘だろ。もう上限回数来たのか?


 だって、嘘でしょ。なかなかひどいラインナップだったよ!?


 くそ、でも選ばなきゃだし、最後の品を一通り見ていくか、、、、、。


 、、、、『感情制御不可』『異物収集脳力向上』『殺人衝動』『健康維持』、、、『剛体化』


 いくつかある奴の中で、一番まともなのは『剛体化』かな。

 説明はまあ、ひどい。

 使用中は変形しない個体となるが、行動できなくなる。

 使用時間に制限はない。


 これでマシ?って思うかもだけど、他がやばすぎて害がないだけボロ儲けなんですよね。


 まあ、死ぬことはないでしょう。

 生きて帰れるかは別としてね。


 頼むよ、サブスキルくらいはまともなの来てくれ、、、



 『鼻炎』『便秘』『鼻詰まり』『腹壊し安さup』、、、チェンジだよ!!!

 

 チェンジ


 チェンジ


 チェンジ、、、もう上限回数!!!


 俺のスキルはどうなってんねん。


 、、、、『妄想癖』『悪い手癖』『狭心』『鼻炎』

『演算』、、、


 『演算』!! これいいじゃん。

 計算能力が向上。ていうか他がダメすぎるのか。


 頼むよ、最後の頼みの綱。

 『ユニークスキル』頼む、、、、



 『下痢爆弾』『鼻水爆弾』『嘔吐アウト』『痴漢冤罪プロ』、、、


 なんだこのユニークなやつらは。

 まあユニークスキルなんだけど、こんなの使えるか馬鹿タレ!!

 ふざけんのも大概にしろよ。


 くそ、チェンジだ!!


 チェンジ


 チェンジ

 

 チェンジ


 チェンジ


 チェンジ


 チェンジ


 、、、、くそ、なんなんだこれは。

 おかしいじゃないか。笑わせに来ているのか。

 笑っているのか。

 いや、そんなことはどうでもいい。

 笑えていないし。

 最後の、最後にまともに使えそうな奴来てくれ、、、、


 『発狂』『逆恨み』『下痢爆弾スペシャル』『加重疾病』『逆転』『床上手』『犯罪至上主義』、、、、


 『逆転ギャンブル』、、、?

 不利な戦いでのみ効果を発揮。自分より弱い相手からの経験値、修練値、成長値が常時99%減少。

 人数不利でしか発動チャンスは訪れず、また使用してから24時間は再使用不可。

 使用選択は『逆転』自身が個人的に判断するためあなたの意思は決定のみです。

 『逆転』を使用すれば能力の大幅な上昇、また、敵対者が自分より格上であればあるほど成功率は跳ね上がる。

 ただ、失敗すればペナルティとして敵対者が200%強化。



 なんだよ、知らないことが多い。経験値とかその辺り知らないんですけど。そもそもなんで俺の権利を俺が自由に行使できないんだよ。


 でも下痢爆弾とかは突発的に発動されるらしいし、最終意思決定権をくれるだけありがたいのか?


 もういいよ、『逆転ギャンブル』以外に選択肢がないもん。


 三つのスキルを選択した。


 


***



 「目が覚めたか。」

 「玲央、お前はどんなスキルだったんだ!?」


 クラスメイトが集まっている。

 っていってもいつメンと彼女とそのグループだけだけど。

 他にもまだ眠っているものやスキルを使っているものもいる。


 廣川、あいつ火魔術使えんのか。

 手から何発も火球を生み出しては、石原とともに戯れあっていて、少し微笑ましい。

 それに比べて俺なんて、

 

 俺なんて選択肢に鼻炎とかしか出てこなかったぞ!!!


 「俺はメインスキルに『魔導書』を選んだんだ。」

 「たはは、俺は別にすごくないよ。」


 なに魔導書って。そんな俺のスキル選択画面に魔導とかいう単語出てきてないよ。

 ずっと医学用語みたいなのばっかり流れてきたよ。

 

 「まっさか、玲央がすごくない訳ないだろ。

 この『魔導書』は」


 星斗から彼のスキルについて色々教えてもらった。俺のとは違い随分当たり、いや、大当たりだ。

 うらやますぃ。


 言われていたように目を瞑って意識を集中させる。


 <<<ヤガミ レオ 16歳

 体力   D

 筋力   D+

 防御力  E

 魔力   F+

 魔法防御 E

 瞬発力  C-


 メインスキル  『剛体化』

 サブスキル   『演算』

 ユニークスキル 『逆転』

 コモンスキル  なし>>>


 夢じゃなかったか、、、


 「そろそろ教えてくれよ。玲央のスキル!」

 「そうだぜ、どれだけ勿体ぶるんだよ。」


 彼らの期待を孕んだ眼差しと、彼女の丸くて可愛らしい瞳が、俺が言葉を紡ぐことを妨害してくる。


 「いや、勿体ぶるってか、、本当に、まじでハズレなんだって、、、」

 「いいから教えろよ。」


 もう、腹を括るしかない。

 自分の両手で両のほほを、パンと二回叩くと、


 「えと、『剛体化』で」

 「それはどんな力なんだ!!」

 「、、、、」


 俺は友に自身のメインスキルについて説明した。

 自分で説明していて、こんなに屈辱的な気持ちになったのは初めてだった。

 みんなの憐れむ視線が辛かった。


 「玲央くん、、」

 「、、、!!茜!!」


 茜、そうだ。俺には彼女が


 「私、玲央くんに脅されていたの!!」

 「は?」

 「え?」


 みんなの視線が一気に俺に集中する。


 「俺と付き合わないと、、、、裸の写真ばら撒くぞって、、、」

 「はあ、、、? 何言ってんだよ。」

 「何言ってるのはあんたでしょ!!!」


 女子たちからの剣幕に思わずすくみ上がる。


 「ちょっと待てよ、玲央、嘘だよな。茜さんはきっとスキルのせいでこうなってるんだよな。」


「、、っそうだよ。だって、そんなのおかしいだろ。」


 「そうだ、そんな憶測で」

 「証拠ならあります。」


 そういう茜の手には俺のスマホが。


 「男の子に見られるのは、、、美弥みやちゃん、、」


 クラスメイトの女友達に俺のスマホを見せている。


 「、、、は?」


 彼女が俺のスマホを操作して、橋本に見せる。


 それを見ると、橋本は表情をこわばらせ、やがて般若のような目で俺を睨みつけた。

 そして、震える声で、怒気を孕んだ声音で喉を震わせながら瞳を大きく広げて、


 「本当にあったよ。みんな。」


 「ちょっ知らないってそんな。」


 だって、俺たちはまだ、そんな、嘘だろ。

 どういうことだよ。


 困惑している俺に突き刺さるのは、今までのクラスメイトが向けてくれていた信頼や評価の色ではない。

 心地よい視線など一つもなく、そのどれもが、例外なく俺の心臓を締め付けるように。

 

 「嘘だよな、、、玲央。」

 「星斗待ってくれ、違う。そんなことはしていない!!!」

 「でも、証拠まで出て来たんだぞ。」

 

 「それは、、、二人で謀って」

 「それはできないですぞ。」


 「おじさん、、、、?」


 さっきグラスを割られた時に悲しげな声を漏らしていた男が階段を降りながら、


 「彼女、、、長谷川はせがわあかねが得たメインスキルは『聖女の芽』。嘘がつけなくなる制約があるんじゃ。」


 「、、、、、」


 その言葉に、茜は押し黙っている。


 「違うんだみんな。俺はそんな脅ししていない!!」

 「見苦しいぞ!!!」


 部屋を突き破るように怒声が鳴り響く。

 俺の心臓が跳ね上がり、そして指の先から流れてくる血流が逆流しているかのように感じるような不快感と、頭では直立不動しているという理解があるのに、平衡感覚だけは正常に作用していないような錯覚に陥る。


 「!!! 星斗、、、。」

 「星斗くん、、、。私ずっと怖かったの。いつばら撒かれるかもって怖くて、ずっと怖くて、、、黙っていよう、そう思っていたけれど、このスキルのせいで私、、、、」


 「、、、、、」


 まさか、この女、俺を、俺を捨てたのか?


 「よくも、よくも、俺を裏切ったなああああああああ!!!!!」


 「黙れ!!!」


 星斗がどこからともなく取り出した書物を開くと岩石が飛んでくる。

 寸前のところで『剛体化』し、死を免れる。


 頬にはひび割れた土と、その土が力の行き場を失いポロポロと頬を伝って服に落ち、制服を茶色に汚す。

 鼻腔には土の匂いが滑り込み、手は少しパサパサとしていた。


 「はぁはぁはぁ、なに、するんだよ。」

 「それはお前が言えたことじゃないだろ!!」


 「!!!!」

 

 「今まで、俺たちのことを騙していたのか、、、?」

 「ちがう、」

 「往生際が悪すぎるんだよ。これ以上お前を嫌いになりたくない。」


 「、、、、」


 なんで、なんでなんで!!!なんで!!!!!

 俺は、そんな、どうしてだ。

 やめてくれ、そんな。


 彼らの視線が、言葉が、全てが。


 「星斗くん、ずっと怖かったの、、、。」


 一瞬、茜と目が合う。

 

 してやったり、といった表情を一瞬浮かべたが、すぐに甘えるような、可愛い自分をアピールし始めた。

 あいつ、あいつあいつあいつ!!!


 そもそも、告白してきたのもお前からだし、なんでなんでなんで、、、、、


 「最低」

 「ゴミクズじゃん」

 「茜ちゃんかわいそー」

 「イケメンが干されてきもちー」

 「ざまぁ陽キャ」

 「流石にこれは、どうなんだ。」

 「俺はどっちでもいいけどな」

 「マジかよ博史頭いかれてるだろ。」

 「てかちょっとでもかっこいいと思った私馬鹿だわ。」


 罵詈雑言を八方から受けて、感情が蜂の巣に放り入れられたような感覚に陥いる。


 「星斗、、、」


 「もう、、、、行けよ。どうせ俺じゃお前を裁けないんだろ。」


 「いけないよ。まだ確認すべきことが残っている。」


 さっきのじじいか。


 「この中に、メインスキル『勇者の卵』を授かった者はいるか、、、?」


 「、、、、」

 

 「そうか、またしても授からなかったか。」


 「諸君ら、これを与えよう。」


 奥から出てきた人たちに手荷物サイズのカバンを渡される。


 「その中には一年は生活に困らないだけの金がある。意識を集中させてみてください。」



 <<<ヤガミ レオ 16歳

 体力   D

 筋力   D+

 防御力  E

 魔力   F+

 魔法防御 E

 瞬発力  C-


 メインスキル  『剛体化』

 サブスキル   『演算』

 ユニークスキル 『逆転』

 コモンスキル  なし>>>


 そして、袋の中から金を持って、集中させて



 <<<ヤガミ レオ 16歳

 体力   D

 筋力   D+

 防御力  E

 魔力   F+

 魔法防御 E

 瞬発力  C-


 メインスキル  『剛体化』

 サブスキル   『演算』

 ユニークスキル 『逆転』

 コモンスキル  なし


 所持金  1,500ギラン>>>


 「そして再び意識を集中させてください。」


 手元には数枚の銀貨、所持金ゲージは下がっていた。


 なるほど、金の出し入れ、銀行のようなことができるのか。


 「金の管理はそれでできます。それでは諸君。良い人生を。」


 そのまま放置された俺たち。

 クラスメイトの視線と空気に耐えきれず、逃げるように宮殿を後にした。

 






――――――――――――――――――――――


 あとがき


 この作品は、『小説家になろう』でも連載しております。

 『カクヨム』では、加筆・修正したものを投稿していこうと思っています。

 ですから、最新のものを読みたいと言う人は『小説家になろう』を。

 ボリュームアップして、誤字脱字が限りなく少ないものを読みたいと言う方は『カクヨム』にて愛読していただけると嬉しいです。

 投稿ペースは『小説家になろう』の投稿と連動させようと思っています。

 どうか本作品をよろしくお願いします。

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