クロの十字架

柳 恵子

第1話

元の主の様子を影から見ていると、此処のボスだろうか「おい!此処はな俺様のもんなんだよ!」と飛びかかってきた。(図体がデカイし同じ黒毛やん。)急に来たので俺は応戦したんだが毛が飛び散っていった。辺り1面、毛が散乱し噛まれた足が酷く痛いので不本意ながら、そこを後にした。

元の主に心の中で(大丈夫だよな?主よ。)

道路の隅で、あまりに痛い足を舐めていた。

すると制服を来た男の子達の1人が「勇気、黒猫だ。」と叫んだ。勇気と言う男の子が俺を見て言うのだ。「此処は危ないよ。」と言いながら抱き上げてくれた。その暖かい腕の中で疲れと共に眠っていたのだ。

「ふぉぉぉ〜ん。」と、あくびをして目が覚めこの、鼻にく臭いと檻に入れられ自分の足には白い布が巻かれている。(此処は?)来た事の無い所なのだが

寝足りないのか、また眠る事にした。

どのぐらい時間が経ったのだろうか?突然、檻が開いてまた、あの男の子が抱き上げて、そのまま外に大きな黒い色の車に入り、走り出す。

しばらく、走って大きな鉄の門の向こうに城の様な大きな屋敷が見えた。そこまで着くのに何分かかったのだろうか?屋敷の中から(メイド服を着た女に俺は渡され風呂場で体を洗われているんだけど。う〜ん、良い匂いだ。ふぅ〜。)メイドは「あら!嫌がら無いなんて、この子。」と笑うのだ。

(俺は本来、奇麗好きなんだよ。)体を乾かされて綺麗になった俺は、また男の子に渡され。

「おぼっちゃま、この子大人しかったんですよ。」

「そうなんだ、ヨシヨシ。」と頭を撫でられた。

男の子が「今日から、ここの家の子になるんだよ。クロ。」(なんでまた、俺の名前クロ?複雑な気持ちなんだよなあ。その名前。)(でも、いいか。)と顔を足で隠す。「クロが照れてるよ。アハハハ。」と主が笑うが俺も「ニャーアン」と笑った。

カリカリも貰い、応接間であろう長椅子のソファーのフカフカした感触でまた、眠りにつく。

話し声が耳に届く。「旦那様、おかえりなさいませ。」と聞こえ玄関で迎え入れた者に言っているので顔を上げて、その者を見ると何処かで見た顔なのだ。そう、テレビの画面の中だあ。強要罪だとか違うんだとかで元の主が務めていたIT企業の社長が息子に殺しをさせたとか、その後の事は元主(もとぬし)からは聞いてないが、ここにいると言う事は逃れたか、違う事情なのかと思った。

此処にいても、いいのか?迷ったが、こいつの息子(勇気)が心配になった。俺には目もくれずに部屋へ入っていったので、屋敷の内情も知りたく宅探索する事にした。1階はリビングと広い厨房に人が3人調理人だろう。客間にしては広いダンスホールなみで赤い絨毯が敷き詰められた。書斎は寝ていたのでどこも見てないので広いのか、わからなかった。また、戻りフロアの照明はキラキラ光る大きなシャンデリアだ。

(お城みたいだよなあー。)クロが呟く。

階段の後ろを見落としたのかドアがある。隙間から冷たい風が感じられる。そこで、メイドが来て俺は「シッシッ」と追い払うような言われ方だ。(犬じゃないんだからな、フン!)とその言われた言葉を蹴散らした。

階段を登りきると右と左に廊下が別れるが真正面の窓にはまっているのは青いステンドグラスが嵌められている。左のドアが3つ右のドアが2つ、右のドアの手前から勇気の匂いがする。そちらへ曲がってドアの前で「ウニャア~ン」と甘く鳴いてみたい。「カチャッ」と開いて、勇気が抱いて部屋へ入れてくれた。

(ほーお、ここも広いぞ。)(あ!待て、そこ喉の下は撫でたらゴロゴロ言っちゃうじゃあないか。不本意だ。)

勇気が「可愛いなあ、」と首に付けている十字架を触りながら「クロ飼い主がいるんじゃないか?」「一致おうSNSで探して貰おう。」「拡散、拡散。」とパソコンの前でブツブツ言いながらキーを叩いている。

(俺が、出ていったんだよね。)

(ほんとに、元気でいるかさえ、わかればよかったんだ。)

(任せておこう、会えるかあえないかは縁だからな。)クロが思う。

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