第23話(番外編SS) 二つ星料理長のダンジョンキッチン革命
ダンジョンの攻略配信にから帰ったコウジとユウタ。第四層から帰ってきた彼らは二人がかりで、バカでかいカニのモンスターを引きずっていた。
「なんだ、その大きさ。俺んちの壁に飾るのか? なに道楽?」
「いや、違うっす。いいダンジョンキッチンのコンテンツになるかなって思うっす」
この巨大カニ――ドウモウガニの死骸だ。飛びついて目を輝かせていたのはサナだった。
「これすごい! 食材の声が聞こえるわ……今日はカニのフルコースやりましょ!」
サナは興奮していたが、すぐにキッチンで立ち止まり、頬を膨らませた。
「でも、これじゃダメね……」
「どうした、サナちゃん。最高の食材って言ってたじゃないか」
「食材は最高ですが、道具が最低です! この硬い甲羅を剥くのに、プロ用の包丁でも、すぐに刃が欠けちゃいますモンスター用の包丁とかあればいいんですが」
サナ持っている包丁と、まな板を指差す。
二つ星料理長の腕を持ってしてもダンジョンのモンスター相手には、道具の不備に直面する。
鼻をほじりながら俺が言う。
「そんなん、無ければ作っちまえばいいんだよ」
「え? 包丁とかも作れるんですか?」
「ああ、任せておけ。サナちゃんの要望通り、最高の包丁を作ってやる」
俺のDIYが始まった。すかさずユウタが配信を始める。
まず取り掛かったのは、まな板だ。
巨大なモンスターばかりだと、まな板も必要だろう。
俺はダンジョン内で見つけた、よく乾燥して締まった古木を拾ってきた。これをいい感じの大きさにカットして、カンナで表面を徹底的に削っていく。
シュッシュッ! という音と共に、木の表面が平らになっていく。紙やすりで徹底的にに磨けば、清潔で滑らかな「ダンジョン古木(種類不明)まな板」が完成した。
「すごい! この手触り、水気も吸収してくれそうです!」
サナは歓声を上げた。
次に包丁だ。
俺は拠点に持ち帰っていたスケイルリザードの骨と鱗を取り出した。
まず、グラインダーで骨を加工し、手に馴染むように柄を作る。そして、鱗だ。探索者の短槍すら弾くという、あの鉄壁の鱗。
俺は鱗の片側を粗いグラインダーで徹底的に研ぎ澄まし、鋭利な刃を形成する。それを骨の柄に差し込みエポキシで接着と防水。
「アイアンスケイル包丁」の完成だ。その刃は、ダンジョンの青白い光を反射し、銀色に輝いていた。
「硬すぎて片刃しか作れなかったけど、どうだ。これなら甲羅も切れるだろう」
サナは包丁を受け取り、試しに空中で振る。その刃の薄さと硬さに、サナの顔が真剣になった。
「すごいです! 青二鋼の本焼き包丁以上の硬さ! これなら勝負できます!」
そして、ついでにグラスだ。
以前、倒したスライムの死骸を放置していたところ、乾燥してガラスのように硬化しているのを発見した。
「コウジ君、これだ!」
俺はスライムの硬化しかけた物を使い、吹きガラスの要領でワイングラスの形状に整形していった。
アイアンワームのワイヤーをステム――脚部としてプレート――台座に接着する。
「スライムワイングラス」の完成だ。
更に同じ要領でスライムグラスのスープ皿も作った。
コウジはスライムグラスを手に取り、短槍の先端でコンコンと叩いた。
「すごい強度だ。普通のガラスより何倍も丈夫ですね」
「投げ銭、凄いです、オヤジさん! 『マジで通販してくれって』って大バズりです!」
ユウタは興奮を隠せない。
道具が揃ったところで、サナの調理が始まった。
「皆さん、今日は二本立て。このままダンジョンキッチンの始まりっすーーッッ」
ユウタは本息の声を張り、この様子をライブ配信する。
サナはアイアンスケイル包丁を使い、ドウモウガニの甲羅と肉の間に、包丁の先端を滑り込ませ体重をかけて解体していく。食材の構造を熟知した無駄のない動きは、まさに二つ星料理長だ。
ブシュッという音とともに、肉は完璧な形で甲羅から分離され、透明の体液は青色へと変色する。
「よし!」
サナは勝利の笑顔を浮かべた。
ドウモウガニの肉は、透き通った輝く白色をしていた。
サナは剥ぎ取った甲羅を焼いてから出汁を取ったものに生クリームを入れて裏ごしした。それに、かにみそをたっぷりと入れて、絶妙に火入れしたカニの肉を浮かべる。
サナは極上の一品を完成させた。
完成したのは、「ドウモウガニの濃厚ビスク」だ。
カニの身が輝くビスクは、臭みを全く感じさせず、濃厚なカニの旨味と風味が凝縮されている。
俺たちは、スライムグラスのスープ皿に注がれたビスクを口に運んだ。
「うおおおお……! 美味い!」
俺の脳が美味さに痺れる。キングラットとは比べ物にならない、純粋な海産物の旨味だ。
残りは、豪快に焼きガニで食べ、安ワインを注いだスライムワイングラスを傾けた。
「これが、ダンジョンでの超高級グルメっすよ!」
ユウタも興奮して叫んだ。
たしかに最高だ。プリプリのドウモウガニは、ついつい無言になって貪ってしまう。
「あれ? 悪食オヤジさん……なんか急に肌艶が良くないですか?」
コウジに言われて、自分の顔を触ってみるとまるで二十代前半の時のような懐かしい手触りがした。
「本当にプリプリだ……これも、もしかして悪食のスキル?」
「えええ! 悪食オヤジさん、ずるい! 私もそのスキル欲しいーーッッ」
ダンジョンにサナの切実な叫び声が響いた。
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第一章をお読みいただきありがとうございました。
次章からは、本格的にダンジョン攻略をしながらも、モンスターを食べて、DIYして、配信して、とコミカルに面白い話にしていければと思っております。
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