第26話 世間が騒がしくなる

「ガストー様!陛下の寝室から話声が聞こえたと報告がありました!」


 部下のボグナーが、僕の執務室に駆け込んで来た。


「なんだとー!」


 ビアタンが近くに現れたような気がしたが、誠だったのか。


「それで陛下は!」


「それが、中を見ると誰も居なかったと申してます……が、報告を受けた私どもが陛下の寝室を詳しく調べてました所、大勢が居た痕跡が確認出来ました」


「大勢がだと?」


「はっ!おそらく二、三十人かと」


 あのネトリ男の関係者か……許さん!

神聖なるビアタンの寝室を穢すとは纏めて処刑してくれるぞ!


「失礼します!ガストー様!」


「どうした!」


「はっ!北側の山脈の向こうの未開の森方面上空で大きな爆発が起こったと多数の目撃者が証言しています」


「爆発だと!アソコには誰も居ない筈だが

山脈にぐるっと囲まれた空白地帯だ!」


「未開の森近辺から、打ち上がった火球なる物が遥か上空で爆散、四方八方に飛び散った火球が、まるで空に開いた大輪の火の華のように見えたと多くの者がそのように申しています」


 大輪の火の華か……ビアタンが見たら喜ぶだろうか?


「よし、探索隊を派遣しろ!何かがある筈だ!原因を探れ!」


「はっ!畏まりました!」


報告に来た男は颯爽と退室した。


「お前もさがってよい」


「はっ!失礼します!」


 何が起こっているのだ……僕のビアタンは今何処に居るのだ……


 一人執務室のガストーは窓に赴き遠くを眺めていた。


☆☆


 その頃ロウ達は、極悪興行ビルの最上階にある社長室に、異世界パラメアから彼女達と戻ってきたのだった。


「あれ?あれから然程時間が経っていないのね?正確には分からないけど」


「ユイナさん、君子さんの呪いが知れ渡り大事になる前だからやり易いじゃない」


「アズサちゃんの言う通りね。世間はパニックになるわね」


「消防や警察が走り回るわ、沢山のクズが苦痛に転げ回っているから」


アズサがドヤ顔で胸を張る。


ん?また揉んで欲しいと、フリなのか?


 何かを察したアズサは自分の胸を抱え込み俺に背中を向ける。


「馬鹿兄貴!違うからな!」


「違うのか?」


 コイツマジで妹のオッパイ揉もうとしてたな。ミカには直ぐに見当がついた。


「あの、私が掛けた呪いでは無いんですけど全員の苦痛なんです……」


何故私の名前が付いてるのよ!

何か納得のいかない君子さんだった。



「あー!ここから別行動になると思うから回収した資金を分配して置くよ」


 応接セットのローテーブルの上に金庫にあった現金を積み上げる。


「お、結構あるね、一人一千万は行けるね。じゃ一人づつ来て下さい。

受け取ったら後は自由ですよ、俺の連絡先は妹のアズサかユイナさんに聞いて下さい異世界組は買い出しかな?日用品とか服とかね。薬は……要らないか治癒魔法使えるし、まあ好きなモノ買って来て下さい」


「ありがとうございます!矢島さん私実家の様子を見て来ます。駄目だったら戻って来ますのでよろしくお願いします」


「いつでも気軽に連絡してくださいね」


一人、また一人と消えて行った。


「ほう、皆スキルと魔法を使いこなしておるの」


「皆んな結構マジで練習していたもんね」


「それではユイナさん戦場の所まで送りますよ。アズサも帰るんだろ?」


「矢島君、私は一人で飛べますよ」


「まあまあ、後でアイツを思い切り驚かしてやりましょうよ」


「それも、面白そうね」


 うふ、っと笑うユイナさんは、レベルが上がりまた美しくなった。


「あなた!私達も行きます。ご親友である戦場さんとご挨拶しませんといけませんわ」


「お、おう……」


見ると久美子さん里子さんも頷く。


 イキナリ婚姻関係になった極悪興行の美人受付嬢の三人、俺のエロフ妻たちと劣らない容姿をしてらっしゃる。今夜が楽しみだ。初夜に思いを寄せているとまた膨らんでしまった。


「それじゃ飛びます!飛びます!トゥ!」


☆☆


 ここは、商店街外れの雑居ビルの三階、戦場のオフィスだ。


「しっかし、矢島もこの金貨何処から手に入れたんだ?一枚二枚ならわかるが、山程あるとはアイツ向こうで何やらかしたんだ?それと純金だってよ!」


 戦場は溜息を吐きながら、自分で淹れたコーヒーの香りを楽しみ一口含む。


「よう!戦場どうだった?」


ブッホー! ゴホッ ゴホッ! あちっ!


「や 矢島ー!なっ?ユイナ?」


 イキナリの登場で、戦場はパニくり咽せるわコーヒーを股間に溢してしまった。


「相変わらず戦場さんは慌てん坊さんだね」


 アズサに生意気な事を言われても、今はユイナさんにおしぼりで股間を拭かれている最中で聞いていなかったようだ。


「戦場殿はユイナ殿に股間を拭かれて膨らんだようですね」


「ユイナさん、我々が帰るまで辛抱できるかな?」


「うむ、ここで始まりそうじゃな」


「なっ!しませんよ!」


 ユイナも戦場も顔が赤くなって俯いている。


それを、ニヤニヤ見つめる俺の嫁ズ。


「おや、こちらの美人なお三方は?初めましてだね」


「はい、わたくし南條君子、矢島さんの妻でごさいます。元極悪興行の受付をしていた所矢島さんに助けていただき婚姻致しました」


「へっ?」


「同じく宗越久美子です。宜しくお願いします」


「あ、」


「初めまして秋葉里子です。矢島キンタロウの妻でございます」


「そうでございますか、戦場グンジです。

何でも屋をやってます……

矢島よ昼に来た時はオリビアさん達が奥さんだと言ってたな、そして帰って来たら更に三人の奥さんが出来たのか?」


「戦場!聞くな、後でユイナさんに話して貰え」


「事情があるんだな」


「ああ、極悪興行は潰した。多分関係各所も潰れている筈だ」


極悪興行を……


「で首尾はどうだ?」


「ああ、換金出来たぞ一枚50万だ。相手は幾らでも換金してやると言ってたが、少しずつにするよ。山程あるのが知られたらコチラもヤバくなるからな」


「だよな、正規の取引じゃ無いから、そうなるわな。これからは、ユイナさんと一緒に行くといいぞ戦場」


ユイナと……なぜ?










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