第12話 模擬戦
見渡すと随分と観客席が埋まっている事に俺は今更になって気がついた。
へぇ、沢山の人が集まるモンだな〜
娯楽が少ないのか?売り子も出ているしまるでお祭りのようだ。
あれは、賭博なのか?Gランクの俺に賭ければ大穴大当たり間違いないぜ。
奥様達の一人勝ちだ俺もウカウカしてられない少しでもオッズを上げますか!
「おい!お前達、今から負けを認めて土下座して謝罪するなら、許してやっても俺はいいんだぞ!」
「なんだとー!クソガキが殺してやる!」
俺は目一杯大声で叫び、わざとらしい程足を振るわせる。
ふっ、これで誰が見てもヘタレなレベル1にしか見えないだろ……この賭け俺の勝ちだぜ!
ロウは一方的な賭けでは賭けが不成立になる事があるのを分かっていなかった。
「大袈裟にプルプル震えていたら、なんだか気持ち悪くなったよ」
観客席では、元締めが賭けの最終締切を伝えている。
「そこの貴方、私たちも金貨三枚を賭けるわ勿論キンロウのリーダーの勝ちにね」
えっ!マジですかと声に出して無いけど分かってしまった。
金貨と引き換えに札を貰った。
勿論手渡しなどはしない、テーブルの隅に置いてあげるのだ。
私達は、闘技場の最前列で左右と後ろの列は空席になっている、と言うか結界でそうしているのだ。目の前にテーブルを出し今はお茶の時間なのだ。
「ロウ様凄く震えてますね」
「本当だ、ヘタレじゃのう」
「賭けを締め切れば豹変するわよ」
その時、賭けは締め切られた。
「んじゃ、始めっか!」
この模擬戦に審判などいない。
降参か、戦闘不能になると終了なのだ。
「小僧、甚振り殺してお前のパーティの装備と女は俺様が頂くから、安心して殺されろ!
まあ、簡単には死なせないからな」
だが、全く意に解しないキンロウのリーダーのロウだった。
「あ、言っておくけど俺、魔法剣士な、だからコレでも喰らえ!」
俺は木剣を一振りすると小さな火球が現れヒョロヒョロとサブギルマス達の方へ飛んでいった。
「はっ!小僧舐めてんのか!」
俺の放った火球は奴らの手前で失速した。
「ぷっ!バカがここ迄届かないではないか
Gランクレベル1は伊達じやないな」
「そうだぜ!アニキ」
ガッハハハハハハ!
その間に失速した火球が地面と触れた途端の事だった。
ドゴーーーン!!!
「「ぐわっーー!!」」
物凄い音と物凄い爆炎……土煙が晴れるとそこには深さ1メートルのクレーターが出来ていた。
「なっなんだとーー!」
「次行くよー!人数分の火球だ!えい、えい、えーい!」
「クソッ!そんなヒョロヒョロ玉!当たらなければ問題無い!」
「避けても無駄だよー!ホーミング付きだから、それ走れー!」
必死に走り火球を避ける。
「ウワッハハハハハ!愉快、愉快、愉快!」
「何なんだ!避けても避けても追ってくる!それも走る速度に合わせるようにとか!ざけんなよー!」
ドゴーーン!ドゴーーン!とまた一人やられた。
「クソッ!このままでは……はん!この手が有ったわ!死ね小僧!」
俺はキャンピングチェアーに腰掛け、足を組んで対戦相手のもがき苦しむ所を見ながらコーラを飲んでいる。
「うひぃ!喉にくるわー!ゲップおーおー、走り廻っているわー!
サブギルマス……サブマスでいいや」
ありゃ、俺の後ろから突っ込んで来る?
多少は頭を使ったんだけど、考えてこれか
出世は諦めた方が奴の為だ。
物凄い勢いで背後から俺に向かい走り、直前で横に逃げると、火球も急には曲がらないから俺にぶち当たるってか!
サブマスよ顔がニヤけているぞ。
「小僧、貰った!」
しかし火球は俺の身体をすり抜け胸から飛び出した。勝利を確信したせいで足を緩めたサブマスに命中した。
ドッゴーーーン!
「ウギャー!」
土煙が晴れるとそこには装備や服などがキレイに焼け落ち体中の体毛も焼け落ちていた。つまり、マッパで白目を剥いて地面に転がった状態であった。
「ザマァ!仕上げのお仕置きだべぇ!
喰らえ!タマボム!」
ボン!
「うぎゃーーー!!」
マッパのサブマスの玉袋の中が爆発したのだ。
「ついでに糞受付嬢にケツ穴ファイアー!」
「ギャーーッ!!」
ボボボボ!と受付嬢のお尻から花火のような火花が噴出しだした。
「ガッハハハハハハハ!完全勝利だぜ!」
「キャーーッ!!ロウが勝ったー!
私の一人勝ちよー!換金してくるわ!」
喜び勇んでクリスは走っていった。
沢山金貨を持っている筈なのに……
とマリアは思った。
闘技場に毛を焼き尽くされマッパの三人の男が所々に転がっているが、誰も同情などしていない。ゲラゲラ笑っているのだ。
「さてと、模擬戦も勝利した事だし帰るか、金は沢山あるし欲しい物も無いし奴らにザマァもしたし、もう用がないな」
ふと気づくと、仕立ての良い服を着たゴッツイ親父とその後ろを歩く秘書のようなメガネを掛けた女が俺の方に向かってくる。
「コレはどう言う事だ」
「誰だ?お前は」
「この帝都のギルマスだ」
「ん?俺に何のようだ」
「帝都ギルドのサブマスターであるカマスが無様に負けると都合が悪いんでな、それも冒険者に成り立てのGランクレベル1にしかない男に……メンツが立たないんだよ」
「だから何だって言うんだ。ただの模擬戦だろ!チンコ晒して白目を剥いていたから笑えるけどな、会場は大盛り上がりだぞ!」
更にロウはギルマスを、煽ってやる。
「ギルドって言っても、こんなモンだったとはなガッカリだよ。で、どうすんだよ?お前が俺に土下座をして詫びを入れるなら俺が負けた事にしてやっても考えない事はないぞ!」
「ガキが調子に乗るな!!」
「そこのアンタはなんだ?」
「私はギルマスの秘書ですが」
「ん?あんた旦那が居るんだろ?」
「急になんですか貴方は!」
「おーい!この女の旦那さん知っているか?」
俺は大声で観客席に尋ねてみた。
「知っているぞAランクパーティの激情の
「そうか、その旦那に伝えてくれないか、
お前の嫁は一年前からこの男と浮気しているぞ!ってな」
「なっ何を根拠に!」
「お前のその顔だよ、調べるとすぐわかるだろ!旦那が命を賭けてお前の為に金を稼いでる時に、他の男に抱かれているなんて知ったら激情の剣士だろ?お前生き延びれたらいいな」
それを聞いた瞬間から、女の顔から血の気が引いて真っ青になってる。そして小刻みに震え出した。
「お前死んだな!」
「いやーーーっ!」
女は泣き崩れ地面にへたり込んだ。
結末なんて分かり切っているのに、一時の快楽で全てを失うとは馬鹿な女だ。
「救えないね」
「後、ギルマスの嫁は貴族の令嬢なんだろコイツもギルドの女三人とやっているって嫁に教えたら謝礼が貰えるんじゃね?
そこのケツ穴女もその一人だぞ!」
「二股ケツ女かよ!」
ぷっ!思わず吹いてしまったぜ!
「貴様!Gランクレベル1の糞雑魚がここで殺してやる!」
いくらギルマスでも平民の出が貴族に敵うわけが無い。今までの様な生活はもう出来ない、詰んだな。
ギルマスは持参して来た自前の剣をゆっくりと抜いた。
「おーい!皆んな模擬戦に、真剣を持ち出して来た相手を返り討ちにしたら、どうなるんだ?俺が悪いのか?」
俺は観客席のオーディエンスに聞いてみる。
「冒険者は弱い方が悪くなる。だから勝てばいいんだよ!やっちゃえ!」
「なんか無責任のような気もするけど、向かってくるんじゃ、しかたがないか……
なるべく殺さない様に努力するよ」
「ガキが!舐め腐りやがって!行くぞ!!」
低い体勢から駆け出す。流石にギルマスだ少しだけど早い。
「おー流石にギルマスだな良い踏み込みだ。しかし、少し遠いんじゃないか?
あ、言い忘れていたけど俺、魔法剣士な!」
一瞬ロウの手がブレたように見えた。
すると急にギルマスが派手にひっ転んだ。
「クソッが!なに!起き上がれない?」
「なあ、コレお前のか?」
「Gランクが汚そうに摘んでいるのは俺の腕なのか?宝石が散りばめられたあの剣は、確かに俺の剣……うぎゃぁーーー!」
ロウは右腕、左脚を切り飛ばしてやったのだ。
「俺の腕がーー!俺の足がーー!」
「ジタバタ暴れると血が抜けて直ぐに死ぬぞ!タコ」
「があぁぁぁーー!!痛てぇよーー!!
痛い痛い切られた手足が痛てぇーよ!」
「うえー!汚いから焼却!」
ついでに傷の断面も焼いておく俺氏。
ボッ!
「辞めろー!燃やされたら繋がらなくなる!」
「え、ソウナン燃やしちゃったよ」
コイツ絶対態とだと観客席のみんなが思った。
「なあ、皆んなよギルドマスターやサブマスターってGランクに負ける程弱いのか?
コレが普通なのか?」
「そんな事はない!確かな実力がないと成れない筈だ」
「誰がギルマスを決めているのだ?」
「冒険者ギルドの総本部の筈だ!」
「じゃ、総本部に金でも貢いだら誰でもギルマスに成れるんじゃねぇ!その様な組織なんだろ?次に来るギルマスも金でなったバカが来るかもな、マジでありそうだよ」
「クソ!やっぱりか何かしていると思っていたが」
「ギルマスが代わっても次々やって来る無能に俺達冒険者はずうーと奴らに搾取されないといけないのか!大金を貢いでギルマスになったのだから次は俺達から金を巻き上げるなんて誰でも考えつくだろ!」
「なんか腹が立って来た!」
「どうせ、総本部に抗議しても惚けられておしまいだ」
「クソッ総本部め!」
「だから、田舎の小さな村の子供でも分かるように噂をばら撒けばいいんだよ!噂だから誰が言ったかも分からないし、ギルドの本当の姿を晒してやろうぜ!」
「だな!晒してやれ!」
「一人十人に話せばいいんだよ」
「帝都から噂が広がればあっという間に
国中の者達に知れ渡るぜ!」
「やろうぜ!」
「くそ、ギルドザマァだ!」
コレに懲りて少しはギルドもマシに成れば良いけどなぁ。
「奥さん達を迎えに行って帰るべさ」
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