第3章 二次創作について
AI関連の前に、いわゆるグレーゾーンである二次創作についても少し。
二次創作それ自体は、著作権法第二条に明確に定義があります。
『十一 二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。』
という部分ですね。
ただ、これはあくまで原著作者に翻案権の許諾を受けて作成されたものに対しての定義。
通常、ファンアートとされる同人誌などの二次創作で原著作者の許諾を得て作成する方はほとんどいないでしょうから、厳密には異なります。
ちなみになぜか同人=二次創作と勘違いしている人がたまにいますが、この二つはイコールではありません。
同人というのは、プロではない人々が自費出版等で(つまり出版社を通さず)本を作ることで、日本でもっとも知られた同人誌は『白樺』でしょうか。近代文学を学ぶ場合絶対出てきますからね。
これの創刊には武者小路実篤、志賀直哉などが関わっていて、のちに『白樺派』なる文学の潮流を作った雑誌ですが、これも明確に『同人誌』です。
【二次著作の許諾】
結構勘違いしている人もいる気がしますが、実は許諾を得ないで作成する二次著作物は、すべて著作権の侵害に相当します。
逆に、例えば本屋にあるアンソロジー本(古くはドラクエ四コマ劇場とか)は、ちゃんと著作権者(ドラクエならエニックス)に必ず許諾を得ています。例に挙げたドラクエ四コマ劇場はそもそも発売元はエニックスですが、これは各漫画家とエニックスの間で翻案の許諾する契約を締結して、その契約に基づいてを与えて描いてもらい、それを発売しています。
その他の典型例といえば、ゲーム攻略本などでしょうか。
これらはすべて間違いなく、原著作者の許諾を得たうえで作成、販売しているものです。
この原著作者の許諾を受けていない二次創作、および著作物の素材を利用(翻案)した創作物は、すべて著作権侵害で訴えられる可能性を持ちます。
【コミケなどで販売される二次創作物について】
日本における二次創作の最大市場はおそらくコミケだと思いますが、ここでの販売は著作権者にとっても自分の著作物のすそ野を広げてくれる可能性があるから、見逃しているにすぎません。
厳密には前述のとおり、本来は著作権侵害です。
ただし、基本的には日本のコンテンツ業界は『限度を超えない限り』は二次創作に対しては寛容です。
そして著作権侵害(刑事罰が適用される)は、原則として著作権者が訴えない限り立件されない、親告罪です。
そのため、訴えがされない限りは事件化されることはありません(一部例外あり)
直近では、2025年1月10日に開かれた『コンピュータソフトウェア著作権協会』のイベントで、大手ゲーム会社の法務担当が登壇し『無許可の動画配信や二次創作は著作権の侵害にあたるとしながらも、ファンやゲーム開発者を重視する姿勢から容認している』というスタンスを示したとされています。
ただ、元の著作物のイメージを著しく損ねるものに対しては厳しく対応されるとのことです。
なので、基本コミケその他の同人誌即売会での同人誌及びグッズの頒布は問題視される可能性は低いのでしょう。
このあたりの寛容さが、日本の二次創作、ひいてはコンテンツ業界のすそ野の広さを支えているといっていいとは思います。
ただしその許容範囲を超えたらまずいですから、程度の問題ですね。
二次著作は、そのほとんどがあくまで『お目こぼし』してもらっているだけなので、過度に商業的な性質を強めて原著作者の権利侵害する規模になってしまった場合、訴えられる可能性が低くないことは覚えておいたほうがいいでしょう。
あくまでお目こぼししてもらえる程度の頒布するのが無難です。
【二次創作で許される範囲】
二次創作に関しても、いかなる表現でも許されるわけではないわけです。
実際に同人作家が逮捕された事件(通称『ポケモン同人誌事件』)が二十世紀末に起きていますが、この時の影響は大きかったようで、二次創作、ひいてはその界隈がどうなるのかが話題になったようです。
扱った素材が任天堂のそれだったこと、その内容に問題があったこと(素材が子供向けなのに内容は完全に大人向け)、さらに販売方法が通販だったので、予期せず子供が入手する可能性があるとかでかなり強硬手段に及んだようです。
前述の通り、著作権者が訴えた場合は、問答無用で刑事事件になりえる者だということは理解しておいた方がいいでしょう。
ただ一方で、例えば人気ソシャゲのFate/Grand Orderなどもそうですが、良識的な範囲内でゲーム内の画像の利用、あるいは二次創作を認めるというガイドラインを提示しているコンテンツも珍しくありません。
https://www.fate-go.jp/guidelines/
原著作者が二次創作に対するガイドラインを提示している場合は、そのガイドラインに従っている場合に限り、限定的に許諾(ライセンス)を与えているという扱いになります。
ここで誤解してはならないのは、このガイドラインから逸脱しない限りは著作権侵害を訴えないというものであり、ここから逸脱したら、その限りではない、ということです。
実際、前述のガイドラインにありますが、制作物については『商業利用での頒布は認めない』と明言されています。また、いわゆるフィギュアを作るようなことは認めていません。
実際にはFGOなど人気ゲームの同人誌などはコミケ等で有償にて頒布(販売)されていますが、コミケで盛り上がることは、実際ゲーム側にとっても広告宣伝等の効果があることから、文字通り『お目こぼし』しているというのが正確なところだと思われます。『個人の趣味でやってる範囲を超えて商業として成立するレベル』になったら認めない(著作権侵害で訴える)可能性があるということです。
ちなみに、許諾を受けていない二次創作でも、創作的な部分が一定以上あれば、二次著作物としての著作権それ自体は発生します。
ただし、その発生した著作権それ自体が、原著作物の著作権を侵害したものとなります。つまり、この著作権に基づいて活動を行う(頒布、販売を含めたあらゆる著作権に基づく行為)には、本来は原著作者の許諾を必要とします。
そのため、二次創作を作る場合は、元の著作物が二次創作に対するガイドラインを提示しているかどうかは、必ずチェックしたほうがいいでしょう。
特に同人誌を作成して販売することを目的とする場合は、規模の大小にかかわらず営利目的であると捉えられる可能性もあり、訴えられる可能性も大幅に増加します。
なお、私が自分のサイトその他で開示しているファイアーエムブレムの二次創作は、微妙に任天堂のガイドラインの対象かは微妙ではあるのですが。
任天堂のガイドラインは動画や静止画に関して定めているのみで、創作性があることを求めつつ二次創作小説に対する言及がないんですよね。
ただ、昔ファイアーエムブレムの開発元であるインテリジェンスシステムのホームページには、明確に二次創作に関するガイドラインがあった記憶はあるのですが……前世紀の話ですからねぇ。
たぶんそのあたりは任天堂に集約されたのでしょうか。
やりすぎると暗黙の許諾(お目こぼし)の範囲を超えますが、まあそれは大丈夫だとは思ってます。
【終わりに】
二次創作は結局原著作物ありきなので、それに対するリスペクトなしには成立しないと言ってもいいかもしれません。
著作物に対する批評記事(引用等が適切に行われているものとする)などを別にすれば、基本的にその著作物が好きだから二次創作をやるのだと思いますし、その結果原著作物のイメージ等を損ねるようなものではない限りは、著作権侵害については不問に付す、というのが現在の日本の二次創作における常識に近いです。
ただ、今後AIが出てきたことで、これらについても微妙になってくる可能性もありますが、それはまた別項で述べますので、今回はここまでとします。
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