第17話 お金の価値

「到着だ」


「とぉぉおおおお!!ちゃぁぁぁああああ!!くっ!!!」


霧がかっていますけど、それも綺麗です!!!


「はっ。腕を下ろして静かにしな」


「それでっ!何しにきたんですかっ!」


「合流さ、くずり。反射を解きな」


くずりさん!

いつのまに!!


「おっけ〜、見ててねドール!コレが私の魔法っ!氷映ひょうえいっ!」


おぉ〜!!!

霧がなくなりました!!


そしてっ!!!!

あれ?


「え、人?。!!!人ですっ!!!助けないと!!!!」


「待ちなぁドール。くずり。望みの魔法少女ドールも居る。やれるか?」


「ぐえぇ」


え、襟を掴まれました!

喉が締まるぅ。


何をやるんでしょう!!!!!!!


「とーぜん!!!!。私が生きてるのは!

このため!なんだからっ!!!」




⚪︎⚪︎⚪︎雪代くずり 視点 ⚪︎⚪︎⚪︎




よ〜す!

私の名前は雪代くずりっ!!

今を駆け抜ける中学2年生なんすよ!!!


羨ましい?

でも時間は変えられないんだ。私にはね。

ごめんね?


そんな事はどーでも良くて!

なんで私が魔物対策委員会なんて場所を抜けて紫炎の魔女会に入った経緯を知ってほしいーんすよ。




⚪︎⚪︎⚪︎




「おねーちゃん!私も魔法少女になったよ」


「えっ!?ほんとに!やったー!!」


中1の夏。私は念願の魔法少女になった。

なったとは言っても、学校とかに何かを提出する訳ではない。

ただ魔法が使えるようになった。それだけ。


「うん。まだ簡単な魔法しか使えないけどね」


「それでも凄いよっ!一緒に戦いに行けるね〜!楽しみだな〜!」


1つ上のおねーちゃんは小6から既に魔法少女になっていた。

家族のためだと。そう言いながら頑張ってるおねーちゃんに私も何かしてあげたかった。


「私も楽しみ。お母さんにも言ってくるね」


「う、うん、お母さんもきっと喜ぶよ」


おねーちゃんが魔法少女になって、かーさんは私よりおねーちゃんを優先するようになった。

その差は露骨じゃない。

でも何をするにもおねーちゃんが先。

私はその後。

褒められるのもおねーちゃんだ。

少し寂しいけど、魔法少女なんだから。

大変なんだし、わかった。って私は納得した。


だからかーさんに褒めてもらえるかもって。

そんな期待を胸に、おねーちゃんの返事を聞かずに私は階段を降りて行った。




今日は休日の午後。


えっと、かーさんは夕飯の準備かな。


「あっいた!かーさん!私、魔法少女になったよっ」


「え、・・・・・・ほんとなの?くずり?」


平均より痩せてる私たちのかーさん。


包丁がカランと音を立てたが、

一刻も早くかーさんに報告したかった私には聞こえていなかった。


「うん!ほら!氷が出せるの!!!」


「凄いわくずり!流石よ。お母さんとっても嬉しいわ!!!」


「ほんと!?やったっ」


嬉しかった。

私を見て喜んでくれた。

また前みたいに仲良くなれると思った。




⚪︎⚪︎⚪︎




魔法少女はお金になる。


その頃の私は知らなかった。何せまだ12歳。

お金の事なんて、月に1000円貰えるお小遣いで何が出来る事を考えるくらい。


だから、魔物対策委員会から出されるお金について何も知らなかった。


いや、知らなかった。は違う。

聞いてなかったが正しい。

だって、かーさんが働くのはいつもの事。それで私たちは生きていたから。

ねーちゃんが魔法少女として貰ったお金はかーさんが管理してたし。

私もそうしようってなった。

だから聞いてなかった。


その時、嬉しそうなかーさんの顔を見て純粋に私も嬉しかった。

頭を撫でてくれた後、かーさんがどんな顔をしたか、

私は知らなかった。




そこから2ヶ月くらいはとても平和だった。

おねーちゃんと一緒に魔物を倒したし、

かーさんも笑顔だし。


でもかーさんが少し変わった。

家にいる時間が増えてきた。


「かーさんは1人で頑張ってきたから任せて欲しい」


そう言ったらかーさんが俯いてしまった。


「・・・・・・ごめんね、っ。ごめんね」


口を抑え、かーさんは小声で泣いていた。


おねーちゃんに聞いたけど曖昧にはぐらかせれて、「私にはわかるかな」って少し疲れたような顔をしていた。


私にはわからなかった。




そしてまた2ヶ月がたった。


かーさんの様子が変わった。焦ってるようなれているような。

なんというか、少し棘があって話しかけづらくなった。


だからおねーちゃんと良く話すようになった。


「ねぇ、おねーちゃん。私もそろそろ結界の攻略に呼ばれるかな?」


「流石にまだ早いんじゃない?確かにくずりの魔力操作は高いし、居てくれると有難いけどね」


「えぇ〜。そろそろタイプEなら1人で行けるよ?」


「こら、調子に乗らないの。相手は魔物。万が一だってあるんだから」


魔法少女は強い。

生身の私が持てない重さも、変身すると軽々と持てる。


だからおねーちゃんの私に対する懸念を知らなかった。




「ねぇ。お母さん。私。次の結界攻略に参加しようと思うの」


夕飯を食べ終えたある日、おねーちゃんがかーさんに魔対での事を打ち明けた。

おねーちゃんは私と行動する事が多いから、多分、おねーちゃんにとって弱い魔物と戦ってる。


でも名前を呼ばれた先輩達はみんな強いから、おねーちゃんもそうだと思う。


「やめなさい」


かーさんの声がいつもより大きかった。


「大丈夫だよ、お母さん。凄く強い人も参加する。私はあくまで偵察や情報収集が主な仕事だから。危ない前線には出ないよ」


「そうじゃないでしょっ!!」


「ひっ」


「っ!・・・・・・私も魔法少女としてもっと強くならないといけないの。

今はくずりの事もあるし安全な魔物を任されてるけど、そろそろくずりも1人で揺らぎに対応しないといけない。

そうなったら私も復帰しないといけないの」


「じゃあもうやめてよっ!・・・・・・そうよ。やめ」


「お母さんっ!!!」


優しいおねーちゃんが机を叩いた。


「じゃあ!どう暮らすの!?ねぇ。お父さんはもう居ないんだよ!!!今だって殆ど私のお金で暮らしてるじゃん!!」


「そんな事ないっ!私だって働いているわっ!」


「それじゃ!足りてないじゃん!!

・・・・・・ねぇ。見たよ?通帳。よね?何に使ってるの?」




そこから先は最悪だった。

おねーちゃんはかーさんの顔を叩いて2人が喧嘩した。

おねーちゃんは魔法少女にはならなかったけど、かーさんは元より運動してる訳じゃない。


だからおねーちゃんが一方的に言って、かーさんが謝るだけ。


何も知らないし。

何もわからない。


怖くなって私は子供部屋へ逃げた。




⚪︎⚪︎⚪︎




あれから数日後。


私とおねーちゃんはアパートを借りた。


おねーちゃんはかーさんと喧嘩した事を魔対に話した。

そしたら落ち着くまでという期限付きで、魔対が借りたアパートに住む形で私たちは引っ越しをする事になった。


わかんない。


なんで2人は喧嘩したんだろ。

お金が溜まってないのは何でだろう。


かーさんはなにをしたんだろ。

溜まってないのは使ったからだよね?

でも、高そうなのって家に無かったよ?


おねーちゃんはなんで怒ったんだろう。

使った理由とか買った物とか知ってるのかな?


わかんない。


私はなにも知らない。




⚪︎⚪︎⚪︎魔法少女 視点 ⚪︎⚪︎⚪︎




「誰でしょう!!とっても氷です!!!」


山のてっぺんで見つけたのは凍った人でした!!!


なんと!

くずりさんが隠していたようです!!


「くずり」


「はーい。この人は私のねーちゃん。顔とか似てない?ほら、ちょっと吊り目ぽな所とかさ」


「むむぅ。おぉ〜!確かにっ!!家族です!!!」


氷に覆われてねーちゃんさんはあんまり見えませんが!!!

それでも、なんというか似ています!!!


・・・・・・あれ?


「???」


「気付いたかぁ?」


「なんか!変ですっ!」


なんというか!

魔力が変です!


顔を近づけてぐぐっ〜っと見ても変です!


「ちょ。人の姉見て変はないでしょ」


「はっ!ごめんなさいです!!!」


うみゅっ!

最強なワタシセンサーが鳴り止みません!


「ん〜???」


「ドール。アタシがアンタを魔対から掻っ攫った理由がコレだ。

アタシも多少知識は貸してるが実行する能力がなぇからなぁ。」


なんでしょうか!!!!!!




「そっ!ドールちゃんにやってもらいたい事はね!

・・・・・・

そんな軌跡なんだ」

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