異世界【踊り子】無双!?

ピノ_ペンタゴン

第1話 オールスタイルダンサーコンテスト

某日、東京都で全てのダンサー達の頂点を決める全国大会、『オールスタイルダンサーコンテスト』が行われていた。


「優勝を決めたのは!!!」


「JACK!!!」



会場内は溢れんばかりの歓声、誰もが手を叩き、彼を祝福した。









俺以外は








俺は負けた。完膚なきまでに。

俺には静寂が流れた。俺には虚空が流れた。俺には何も聞こえなかった。違う。

俺は聞かなかったのだ。



『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』『勝ちたかった』




『勝ちたかった...ッ』



俺はダンスで負けたことはほとんどなかった。JACK以外は。

俺とJACKのダンスはブレイクダンスが基本のオールスタイル。勝てないのは、完全に実力差だった。俺はそれが認めたくなかった。違う。心の底では認めていた。けれどもプライドが邪魔だった....



気がつけば表彰式だった。俺は準優勝であいつは優勝。なんで勝てない。次こそは勝つ。そんなことを考えていたら、謎の声が聞こえた。


『あいつに勝ちたいか』

『勝ちたければ私の声に従いなさい』


そんな声だった。俺は疲れている。ついには幻聴まで聞こえてきた。ホテルに戻って寝よう。そんなことを考えていた。


ホテルに着いた。早速寝よう。


俺は深い眠りについた。

眠りにつく前に微かに声がした気がした。

気の所為だろうと思い俺は寝た。


『仕方が...な。無...いくと...か』



幻聴と同じ声がした気がしたが上手く聞き取れなかった。俺は気にせず眠りについた。外が騒がしかった気がしたけれど、気の所為だろう。




『狭間への精神転移が完了しました。』

『続いて個体情報の転移を開始します』



そんな機械のじかけの声で俺は目覚めた。


「おはようございます。」

「あなたには、この世界の黒幕を殺してもらいます。」


俺の知らない機械を使っているやつにそう言われた。金髪の長い髪、見たところ170cmはありそうな身体、そのくせ胸はその身体に見合わず小さい。そんなやつだった。


「はぁあああ!?」

「無理に決まってるでしょ!!」

「そもそも俺は!一般ダンサーだぞ!?」

「格闘技どころかダンス以外は苦手だ!」

「そもそもお前は誰だ!」


そんな俺の声がどこかも分からない。現実かすら怪しい。そんな所で響いた。


「これは失礼しました。」

「私、地球とあなたが行く世界である『ウェルバス』の管理人兼女神をしている、シスト・テオーティタと言います。」

「シス、とお呼びください」


優しげな声だった。


「シスさんとやらよ、ここは何処なんだ?俺は死んだのか?それとも連れてこられたのか?」


「ここは死者と生者の中間管理を行う場所『狭間』です。あなたは死にました。」


死者に向けるような目だった。そりゃそうさ。死者なんだから。


俺は聞いた。


「俺はもう日本には戻れないのか?」


シスはこう言う。


「基本的には例外なく、死者は輪廻の輪に入り浄化され、生まれ変わります。ですが、ウェルバスの民を助けていただければ、あなたは日本に戻ることができます。」

「ウェルバスでは地球の時間は経ちません。なので、火葬されたりはしません。」


俺は二つ返事で答えた。


「俺はウェルバスへ行く。そして黒幕を殺す。それでいいんだろ。」


シスは優しげな微笑みを見せてこう答えた。


「ならば今すぐに転移させます。」

「転移が完了すれば、まず、ギルドに行き、自分に合う役職を見つけなさい。」

「仲間を見つけ、助け合い、黒幕を殺すのです!」


シスが言い終わった瞬間、目の前が真っ白になった。これが転移か。そう思った。




「幸運を祈りますよ。」

「あ、ウェルバスの事伝えるの忘れてた。」

「まあなんとかなるでしょう。」

「おまけ、しておきましたしね。」

『狭間』で1人になったシスがそう呟いた。俺には聞こえていなかった。



これから行く世界は、ゲームのような世界であり、魔法や魔術、モンスター、そんな世界。そんな世界で無双するなんて、俺はまだ知る由も無かった。

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