《リヴ・オンライン》〜最弱職の『テイマー』から始めたVRMMOでいつの間にか最強チートになっていた〜

白烏ミヤビ

第1話 VRMMO《リヴ・オンライン》

 西暦2047年。

 人類はついに、「完全没入型VRMMO」を現実のものとした。

 神経インターフェースを使い、五感すべてを仮想空間と接続できる。

 その最新作ーー《リヴ・オンライン》


 発売初日、ログインポットの中で、俺は大きく息を吐いた。

「よし......初めてのVRMMO、行くか」

 体を預け、意識が沈み込む。

 視界が白く弾け、やがて世界が形を取り始めた。


 風。

 光。

 草の匂い。


 ーーリアルだ。

 目の前に広がるのは、まるで現実のような大地や大空。

 だが同時に、これがゲームだという実感もあった。


《ようこそ、リヴ・オンラインへ》

《職業を選択してください》


「......さて、どうするか」

 剣士、魔法使い、弓使いーー王道の職が並ぶ中。

 僕の目を止めたのは、地味な一行だった。


 ーー《テイマー》。


 説明には「魔獣を仲間にして共に戦う支援職」とある。

 火力は低く、ソロ向きではないらしい。

 でも、なんだか不思議と惹かれた。


「いいじゃん。こういう地味なの、好きだし」


 そう言って、俺は《テイマー》を選択する。

 選んだ瞬間、軽い電子音が鳴り、視界には妙なエフェクトが走った。


《システムエラー:コードXー27》

《認識プロトコルを再構築中......》


「え? なんだこれ?」


 次の瞬間、視界が一瞬ノイズに包まれた。

 ......だが、すぐに通常のゲーム画面に戻る。

 特に問題はないように見える。


《職業登録完了。ようこそ、新米テイマー様》


「......バグ、か? まあいいか」


 初期の村へと歩き出す。

 フィールドの隅に、弱そうなスライムが跳ねていた。

 チュートリアルの対象モンスターらしい


 「よし、最初の相棒はあいつにするか」

《テイム》コマンドを実行。

 光が弾け、スライムがこちらに寄ってくる。

 

《スライムがあなたに懐きました》

《スキル:共生リンクを獲得しました》


「共生......リンク?」

 聞いたことないスキルだ。


 試しにステータスを開いて確認してみると、画面の片隅に文字が浮かんでいた。


 ーー【共生リンク:有効】


「......は?」


 次の瞬間、スライムが光だした。


《テイム完了、次にアクティブスキル発動》

《テイムした対象の能力を一部使用がプレイヤーに反映され使用可能》


 バグだろうか?

 いや、スライムのステータスが僕のステータスに重なっているからバグではないか。


「......まさか、これが”テイム”か?」


 まだ、状況が使えめていないとき目の前でスライムが、ぷるんと跳ねた。

 その跳ね方は、まるで笑っているかのように見えた。


「お前は、僕のテイムモンスターでいいんだよな?」


 スライムは頷くかのように元気よく跳ねた。


「とはいえ、名前が無いと不便だからお前の名前を決めるか」


 淡い青に少し紫がっている体で、光に透けていた。


「よし.......じゃあ、お前の名前は”ルミア”でどうだ?」


《ぷるるん♪》


 小さく弾んで、同意の反応を示した。

 どうやら気に入ったようだ。


 僕は改めてステータスを開いた。


 ーーそこには、見慣れない項目があった。


《共生ステータス:ルミア》

 ・HPリンク:有効

 ・属性共鳴:30%

 ・能力反映:小


「......能力反映?」


 気になって、木の枝を拾って軽く振ってみた。

 その瞬間、枝先が青く光った。

 まるで、スライムの体液が共鳴したかのように。


《ルミアのスキル【スライムジェル】が共鳴しています》


「おいおい......これ、スライムの能力が僕に乗っているのか?」


 そう気づいた瞬間、ゾクリとした。

 もしこれが本当ならーーテイムしたモンスターのスキルを、

 自分自身が使えるってことだ。


 完全に、チートじゃないか。


「......やばいな、これ」


 けれど、あまり悪い気はしなかった。

 むしろ、胸の奥底から少しずつ熱くなる。


 この世界に置いてテイマーなんて、地味で不人気だと思っていた。

 だけど今なら、確信できる。


 ーーこの世界で、僕とルミアは”特別”だ。


「よし、ルミア。まずは僕と一緒にたくさん強くなろう」

《ぷるる!》


 その小さな返事が、まるで相棒の誓いのように響いた。


 こうして僕たちは歩き出す。

 現実でも仮想でもない、新たな世界の一歩を。





 


 

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