大影帝国記【本編完結済!】

aberia

第一章:帝都編

第一章:帝都編 プロローグ

 ――――私は、間違っていない。

 草木も寝静まる深夜。

 周到に根回しをして人払いがなされた一室で、一人の人物が緊張と恐怖で呼気を震わせながら……多くの者の運命を変える決断を、今まさに下そうとしていた。



 腕の中には、産まれたばかりの赤子……。

 尊敬すべき伴侶との間に生まれた、愛しい、愛しい我が子。

 その、大切な子を、自分は、今から……。



 ぶるりと、無意識の内に体に震えが走った。

 それを振り払うように、叱咤するつもりで呟く。 

 「……私は正しいことをするんだ」



 そう、正しいことだ。

 今から己のすることは、この国とあの御方のことを思ってすることなのだから。

 きっと大丈夫。

 きっと良い方向に国を導くはず。

 大丈夫。

 大丈夫……。



 ――――この時の、その行動。

 それがその後、国全体を巻き込んだ波乱の種になることなど、思いもしなかったのだ。

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