BL公募勢の日常

瀬名那奈世

第1話 公募と同人

 公募と同人は両輪で回す方が自分に合っている。公募作品を書く時と同人作品を書く時とでは、やはり執筆する際の心持ちが違う。


 公募作品を書く時には、ジャンルのお約束やレーベルカラー、読者層に合わせた文体、そして何より新規性を重視してプロットや執筆に取り組む。これは「やらされている」のではなくて、「受賞したい」と本気で思えば自然とやってしまうことなのだ。


 それに対して、同人用の作品を書く時は「自分の好き」を強く意識する。要素も展開も文体も全部自由。好き勝手できるのだから、同人活動はとても楽しい。楽しいけど、意外と厳しい。外からの制限がないからこそ言い訳ができない。同人作品の発表は「私はこういうのが大好きです!」と宣言するのと同義だ。好きなものには誠実でいたい。


「だって」「でも」が自分の中でふくらんだら、公募から同人、もしくは同人から公募へ切り替えるようにしている。


 たとえば、私は少し小難しい、皮肉っぽい言い回しが大好きだ。でもそういうのは、私がメインで公募活動に取り組んでいる「BL」というジャンルには多分合わない。


 こういう時、好きなものをまっすぐ書けなかったり、頑張って賞の傾向に寄せようとして上手くいかなかったりしたことを、「だって、私は本当は違う雰囲気の作品が好きなんだもん……」とか思い始めたら、自分が無理をしている証拠だ。公募なんて、それが嫌なら出さなければいいだけの話なのだ。


 かといって、同人活動だけをやるとなると、私の場合は目指す場所がわからなくて不安になる。自由すぎて、逆にやりがいを感じられなくなってしまう。


 好き勝手できて楽しい。でもなにか物足りない――そんな気持ちになるのを防ぐために、私は公募をやっているのだと思う。


 実際には、公募で落ちた作品を投稿サイトに上げることで「同人活動」としている節がある。本業があるので、執筆時間を考慮するとどうしてもそうなってしまう。


 同人界隈は温かいから、落選した作品でもちゃんと読んでもらえて、いいねや感想をもらえたりもして、とても嬉しい。そういう人たちのお陰で私は自分の作品を好きでいられるし、読者を身近に感じられる同人活動は、ある意味公募以上に「下手な作品は載せられない」と感じる時がある。


 最終的に発表する場があり、読んでくれる人がいるのだから、私は常に「適当な作品は絶対に書けない」と思いながら執筆している。大変だけど、大切な姿勢だと自負している。


 私はプロ作家になりたい。でもプロ・アマ云々以前に、読者から信頼されて愛される作家でありたい。

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