第41話 三種族の結束

 黒い奔流が襲いかかる瞬間、ミラは全身で叫ぶようにテレパシーを放った。

 【心を繋げ! 今だけでいい、全員で!】


 その声は、ホモサピの仲間たちだけでなく、爬虫属の将軍たち、そしてモスキート女王にまで響き渡った。

 一瞬の逡巡——だが次の刹那、女王の複眼が煌めき、爬虫の鱗が鈍く光り、全ての意識が「ひとつの輪」となった。


 ——心が交差する。

 レイの熱。ミラの祈り。カイの残した勇気。

 爬虫属の戦士たちの誇り。

 モスキート族の羽音に宿る、種族を守る本能。


 種族を超えた鼓動がひとつに溶け合い、黒い波に対抗する「結界」のような力が生まれる。


 「ぐぅぅ……押し返せ!」

 レイが声を張ると、爬虫将軍が轟き、女王の翼が唸りを上げた。


 球体から放たれる黒い触手が、三種族の心の光に弾かれ、次々と弾け飛ぶ。

 大地に刻まれた闇の亀裂が一瞬だけ止まり、戦場に微かな静寂が戻る。


 【今だ……!】

 女王の声が響く。

 【同時に放て! 心と刃を重ね、一つの矢にせよ!】


 三種族の戦士たちが、まるで合図されたように動いた。

 爬虫属は大地を蹴り、鱗を砕いてでも槍を突き立てる。

 モスキート族は羽音を高め、鋭い針を光の矢に変えて飛ばす。

 ホモサピは剣を握り、仲間と心を合わせて渾身の一撃を叩き込む。


 その全てが——ひとつの光の奔流となり、球体の中心へと突き刺さった。


 轟音。

 砂塵。

 そして、漆黒の壁を貫く「白い裂け目」が走った。


 「効いてる……! まだ、やれる!」

 レイの叫びに、全員の心が共鳴する。


 だが、球体の奥の「眼」はまだ消えていなかった。

 亀裂の中から、さらに深い闇が蠢き始める——。

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