第28話 ミラと未来のビジョン
黒い球体の前に立つと、ミラの胸は張り裂けそうなほど高鳴った。
彼女のテレパシーは、無意識に球体の奥へと吸い込まれていく。
指先がその表面に触れた瞬間――世界が反転した。
視界に広がったのは、荒廃した大地。
空は血のように赤く染まり、地平線の向こうでは炎が立ち上っている。
そこに無数の影――ホモサピ、爬虫属、犬族、猫族、そして昆虫属が、互いに殺し合っていた。
「やめて……! どうして……!」
ミラの叫びは虚しく反響する。
すると、耳の奥で声が響いた。
――『恐怖と憎しみが増幅する限り、種族は争いをやめない。』
ミラの視線の先で、レイが剣を振るい、血にまみれて倒れていく姿が映った。
「レイ……!」
さらにその傍らで、狼犬族のカイが、昆虫属に群がられ、最後の咆哮を上げる姿も見える。
「いや……これは未来なの? 本当に……?」
未来の映像はさらに残酷さを増していった。
やがて戦場には、巨大な影が羽音と共に舞い降りる。
それは黒い翅を広げたモスキート女王。
彼女の叫びが響くと、全ての種族の怒りが一斉に膨れ上がり、狂気の渦と化した。
ミラは膝をつき、必死に頭を押さえた。
「ちがう……こんなの、ちがう……! 未来は……変えられるはず!」
その瞬間、球体の中から新たな声が流れ込んだ。
――『選べ。破滅を受け入れるか、それとも禁忌を壊し、新たな道を切り拓くか。』
映像は一気に崩れ、闇が広がり――ミラは現実に引き戻された。
彼女の体は震えていた。
レイが駆け寄り、肩を抱く。
「ミラ! 大丈夫か!」
ミラは涙を滲ませながら首を振った。
「……見えたの。未来が……。この兵器が、みんなを殺し合わせる未来……」
重い沈黙の中、仲間たちの表情は硬直していた。
その瞬間、誰もが理解した。
――この禁断の兵器は、ただ眠っているだけではない。未来そのものを脅かす存在なのだ。
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