第26話 遺跡の内部の秘密

 森の奥深く、巨大な岩壁に隠されるようにして口を開いた遺跡は、外界のざわめきとは別世界のように静まり返っていた。

 入口に刻まれた古代文字は、すでに風化し、誰も読めぬものとなっていたが、その奥にはなお人の手の痕跡が色濃く残っていた。


 重々しい扉を開けると、冷たい空気が流れ出す。

 石ではなく、金属のような材質でできた壁。そこに整然と並ぶ、黒い柱のような物体。


 ミラが近づくと、不思議な震えが彼女の意識に伝わった。

 「……声がする」

 彼女は目を閉じ、耳ではなく心でその響きを聴いた。

 「これは……記録媒体。過去の人間たちが、最後に残した“声”」


 レイが柱に手を触れると、微かな光が走り、天井から映像が投影された。

 それは崩れゆく都市の姿だった。

 高層ビルが一瞬にして炎に包まれ、人々が逃げ惑い、空は赤黒く焼けただれていく。


 「……これが核戦争……」

 誰もが息をのんだ。


 さらに映像は切り替わり、科学者と思しき人物が記録を残す姿が映し出された。

 『我々は止められなかった。欲望と恐怖が連鎖し、すべてを焼き尽くした……

 だが、この記録を見た者よ。まだ希望はある。次の世代は、種を超えて共に歩まねばならない……』


 ミラは震える声でつぶやいた。

 「人間自身が……未来を託そうとしたんだ」


 だが、さらに奥へ進むと、巨大な円形の封印扉が待ち構えていた。

 その中央には、爬虫類の鱗を模した紋様と、昆虫の羽を思わせる刻印、そして人間の掌の跡が重なり合っていた。


 リザード将軍が眉をひそめる。

 「これは……三つの種が揃わねば開かぬ封印か」


 レイが掌を当てても、光は点らない。

 しかし、ミラが手を添えると、扉は低くうなりを上げ、まるで鼓動するように震えた。


 「ミラ……お前は三つの声を感じ取れる」

 レイの言葉に、ミラは小さくうなずいた。


 扉の向こうにあるものは、武器か、あるいはさらなる警告か。

 それとも――未来を変える鍵なのか。

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