第24話 遺跡への旅路

 爬虫属とホモサピは、幾度もの戦いを経て、ようやく共に分かち合う道を歩み始めていた。

 ある夜、リザード女王は焚き火の明かりを背に語り出した。


 「森の奥深くに……古の人間の遺跡が眠っている」


 彼女の声は低く、重い響きを帯びていた。

 炎に照らされた鱗がわずかにきらめき、戦士たちは誰もが息を呑んだ。


 「遺跡には、この世界の始まりと終わりが記されている。なぜ我らが争い、なぜ大地が荒れたのか……その答えがある」


 沈黙を破ったのはレイだった。

 「……人間の過去を、あなたは知っているのか」


 女王は深く目を閉じる。

 「断片だけだ。だが確かに、人間の過ちがこの世界を歪めたのだ」


 その言葉に、隣にいた若き戦士ミラが拳を握りしめた。

 「じゃあ……昆虫属や爬虫属が人間を憎むのも、全部……」


 「そうだ」女王はうなずいた。

 「彼らの怒りは、すべて核の灰から始まった。人間の傲慢が、大地と命を蝕んだのだ」


 その場にいた子どもたち――かつて赤子であり、今や屈強な戦士となった者たちの顔が曇った。

 一人の若者がぽつりと呟いた。

 「俺の母は、森の獣が凶暴化して襲ってきたときに殺された……。それも核のせいだったのか?」


 レイは彼に手を置き、静かに言った。

 「俺も同じだ。家族を失った。……でも、だからこそ真実を知らなきゃいけないんだ」


 ミラの瞳は炎を映していた。

 「私たちは、過去と向き合わなきゃ。テレパシーの力で心をつなげるように……歴史ともつながる必要がある」


 女王はゆっくりと立ち上がった。

 「行け、レイ。行け、ミラ。遺跡がお前たちを待っている。真実を知り、次の道を選べ」


 その夜、焚き火の火が静かに消える頃、レイたちは互いに目を合わせた。

 「遺跡へ行こう」

 「うん。怖いけど……私たちが行かなきゃ」


 旅路の始まりは、不安と決意の入り混じる静かな夜だった。

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