第22話 女王の心に迫る刃

 戦場の空気は張り詰め、赤黒い光が森全体を包んでいた。

 女王の力は依然として圧倒的だ。尾を振り、霧を操り、兵を意のままに動かす。だが、微かに揺らぎが見え始めていた。


 「将軍……今だ。心を合わせろ」

 レイは剣を握りながら、心で呼びかける。


 「分かっている……共に行く!」

 将軍の瞳が光り、鋭い爪が地面を切り裂く。二人の意思が完全に重なった瞬間、戦場の空気に微かな波紋が生まれる。


 女王の霧が二人に迫る。

 「愚かなる者たち……私の心に挑むなど!」

 声が心に直接響き、恐怖と疑念が二人に襲いかかる。


 だが、二人は決して揺らがない。

 レイは心の中で仲間やコロニーの民の声を集め、将軍はかつての誇りと仲間たちとの絆を力に変える。

 それらが一つになり、女王の精神の波を押し返す。


 「見ろ……私を恐れぬとは……!」

 女王の声に怒りと驚きが混じる。だが、揺らぎは確実に広がっていた。


 二人の刃が女王の心に直接迫る――物理ではなく、精神を切り裂く刃。

 過去の孤独、失われた希望、裏切られた記憶……女王の心の奥底に、二人の意思が光を差し込む。


 「女王……あなたは孤独に縛られているだけだ! 本当に望んだものは、支配ではなく理解と絆だ!」

 レイの叫びが、女王の心の奥に届く。


 将軍も咆哮する。

 「過去に縛られるな! 貴様の力は恐怖ではなく、守るために使えるはずだ!」


 女王の姿が揺らぎ始める。尾の振りが鈍くなり、霧が裂け、兵たちの動きも乱れた。

 戦場の波が変わる。今まで圧倒的だった黒の力が、二人の共闘に押し返される。


 女王は地面に膝をつき、冷たい瞳に初めて迷いが宿った。

 「……私が……何を……」


 その瞬間、戦場の空気が変わった。

 恐怖に支配されていた兵たちの動きが鈍り、森の生き物たちが二人を守るように集まる。


 レイは剣を下ろさず、将軍と共に前に進む。

 「まだ終わらない……でも、今なら未来を変えられる!」


 二人の心と意志が、女王の孤独の壁に光を差し込む――

 戦場は、最終決戦への緊張と可能性に満ちていた。

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