第21話 精神戦域

森の空気が揺れ、木々の葉がざわめく。

 女王の尾が振り下ろされるたび、地面は裂け、空気が鋭く切り裂かれた。


 「これが……女王の力か」

 レイは息を荒くしながらも、戦況を冷静に見つめた。

 「ただの腕力ではない……精神と意思が直接戦場に影響を与えている!」


 将軍も頷く。

 「奴の尾や鱗は攻撃力を増幅するだけではない。全ての動きが意識にリンクしている……森も、兵も、恐怖も……女王の意志の下にある」


 突如、森の奥から黒い霧が湧き出す。

 霧は人間の心に直接侵入し、恐怖や疑念を増幅させた。

 レイの目の前に、仲間たちが彼に背を向け、剣を降ろす幻影が現れる。


 「……幻か」

 レイは叫び、心を閉ざそうとしたが、幻はリアルで抗えない圧を持って迫った。

 「女王はただの戦士ではない……精神そのものを武器にしている!」


 将軍は爪を地面に突き立て、心を集中させた。

 「俺たちの心も……武器にできる!」

 尾や鱗の攻撃は強大だが、女王の力は“心を支配する”性質を持つ。

 共闘の絆があれば、心を通じて攻撃を逸らせるかもしれない。


 レイは将軍に目を向け、心で呼びかけた。

 ──「今だ、共に集中する!」

 将軍も心で応じ、二人の意志が一体化する。


 黒い霧が二人に迫るが、心の波紋で霧は押し返される。

 女王は驚きの眼差しで見下ろす。

 「……私の意志を、振り払うだと……?」


 その瞬間、二人の心の波が戦場を駆け抜け、女王の精神に微かな揺らぎを生む。

 小さく、しかし確実に――女王の力の根源に、初めてヒビが入った瞬間だった。

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