第18話 幻影の檻
戦場は激しさを増していた。
レイとリザード将軍が背を預け合い、剣と爪を振るうたびに、甲殻兵の黒い波は裂かれていく。
「まだいけるか、将軍!」
「フン、貴様こそ遅れるな!」
わずかながら、勝利への道が見え始めていた。
しかし――その時。
空気が急に冷たくなった。
大地が震え、頭上の空が赤黒く染まる。
「……来たか」
将軍の目が険しく細められる。
闇の裂け目から現れたのは、巨大な影の幻影。
その中心に、女王の姿が浮かんでいた。
冷ややかな瞳で二人を見下ろし、声を響かせる。
「愚かなる我が将軍……そして人間。
敵同士が肩を並べるなど、滑稽にも程がある」
その声は地を震わせ、戦士たちの心に直接突き刺さった。
「見ろ、リザードよ。
人間は裏切りの種。
いずれお前を捨て、己のためだけに生きるのだ」
次の瞬間、女王の魔力が放たれ、幻が生まれる。
そこには――将軍がかつて守ろうとした仲間たちの姿が。
だが彼らは苦しげに叫び、レイの剣に斬り伏せられていた。
「なっ……!?」
将軍の爪が止まる。
目の前の幻影は、まるで現実のように鮮明だった。
「将軍! 惑わされるな!」
レイは叫ぶ。
「これは幻だ! 女王の策略だ!」
だが、女王の声がさらに心を抉る。
「お前が人間を信じるから、この未来が訪れるのだ」
将軍の胸の奥に、再び忠義と疑念の渦が広がっていく。
レイは必死に叫んだ。
「将軍! 俺を信じろ! 今だけでいい! 俺は仲間を裏切らない!」
将軍の瞳が揺れる。
爪が、レイに向けられかけ――
その瞬間、彼は自らの腕を地面へ叩きつけ、幻を裂いた。
「女王よ……俺を試すか」
その声は低く震え、だが決意を帯びていた。
女王の幻影は冷笑を浮かべる。
「ならば次は、その決意ごと砕いてやろう」
大地から、異形の巨兵が這い出す。
女王が直接操る、禍々しき黒の兵――。
レイと将軍は、互いに目を合わせた。
「……どうやら、本当の地獄はこれからだ」
「なら一歩でも未来に進むために、共に斬り拓く!」
二人は再び肩を並べ、迫りくる女王の策略の具現へと挑んだ。
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