第14話 縛られた魂
夜、焚き火のそばでレイは目を閉じた。
昼間の戦いで一瞬だけ触れたリザード将軍の心が、まだ頭の奥に残っていたのだ。
──ざらつく砂の匂い、熱を帯びた大地。
その記憶は、まるで自分がそこに立っているかのように鮮明だった。
若き日の将軍は、まだ「兵士」でしかなかった。
戦場を駆け抜ける仲間たちの笑い声、剣を交えた稽古、血を流しても肩を貸し合った日々。
彼らは爬虫族の中でも誇り高き戦士たちであり、戦いの意味を「生きるため」と信じて疑わなかった。
だが、その日を境にすべてが変わった。
──黒き女王。
黄金の瞳と冷たい鱗を持つ存在が、族の頂点に現れた。
「我が命令に従え。お前たちは我が刃だ」
女王の声は心を貫き、将軍たちは抗う術なく膝をついた。
意志を奪われ、仲間たちは次々と無表情の兵器へと変えられていった。
「やめろ! やめてくれ!」
若き日の将軍は叫んだ。だが声は届かず、友は敵となり、兄弟のように育った戦友すらも女王の命に従うだけの影になっていった。
抵抗の末、彼自身も女王の呪縛に絡め取られた。
それでも完全には支配されず、心の奥底で叫び続けていた。
──「俺は兵器じゃない……俺は、ただ守りたかっただけだ……」
レイは焚き火を見つめながら、息を呑んだ。
「将軍……お前も被害者だったのか」
カイが隣で耳を立てる。
「どうした、レイ。何か見えたのか?」
「……あいつの過去が、断片的に……」
レイは苦しげに拳を握った。
「女王の命令で戦ってるだけじゃない。仲間を守りたかったのに、逆に奪われた……将軍は、ずっと縛られてきたんだ」
カイはしばし黙り、やがて低く唸った。
「なら、なおさらだ。俺たちはあの女王を倒さなきゃならない」
焚き火の炎が揺れ、夜空に火の粉が散った。
その一つひとつが、将軍の奪われた戦友たちの魂のように見えた。
レイは心に誓った。
──この戦いは、ただ生き残るためではない。
縛られた魂を解き放つための戦いでもあるのだ。
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