第7話 猿族の牙
森の奥から、枝をしならせて影が一気に飛び出した。
猿族――鋭い牙と鉤爪を持ち、群れで襲いかかる危険な獣人たちだった。
「来るぞ!」
レイが叫ぶより早く、三体の猿族が木々の間から飛びかかる。
カイは低く唸り、地を蹴った。
牙と牙がぶつかる衝撃。レイはその隙に剣を振るい、一体の肩を深く裂いた。
だが、残る二体が左右から挟み込む。
「くっ……!」
背に迫る気配に、レイはとっさに身をひねった。だが避けきれず、鉤爪が肩口を裂いた。鮮血がほとばしる。
「レイ!」
カイが吠え、もう一体を体当たりで吹き飛ばす。骨が軋む音が響き、猿族は苦悶の声を上げた。
最後の一体が咆哮をあげて飛びかかる――
その瞬間、レイとカイは互いに視線を交わした。
「行くぞ!」
「任せろ!」
レイが低く構え、最後の一撃に力を込める。
カイが囮となって受け止め、隙をつくった瞬間――鋭い剣閃が走った。
猿族の胸が裂け、呻き声とともに地に倒れ込む。
沈黙が戻る。
息を荒げながら、レイは剣を下ろした。
だが肩からは血が滴り落ち、地面に赤い染みを広げていた。
「大丈夫じゃないな、その傷は……」
アリアが駆け寄り、布を裂いて押さえる。
レイは苦笑した。
「……なんとか撃退できた。けど、あいつら、偵察かもしれない」
森の奥からは、まだ潜む気配が消えていなかった。
彼らはようやく理解する。
――この森は、ただ歩くだけでも命を賭ける場所なのだと。
仲間たちの表情に緊張が戻る。
それでも誰一人として足を止めようとはしなかった。
生存のため、そしてコロニーを守るため。
レイは痛む肩を押さえながら、低く呟いた。
「……進もう。ここで止まれば、もっと多くを失う」
仲間の視線が集まり、全員がうなずいた。
その歩みは重く、それでも確かに前へと向かっていた。
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