しま、浮く
何もないと思っていた大学生活だったけど、ここ最近、大きな変化が二つ起きた。
一つ目は友達ができたこと。
あれから私と山崎さんはよく話すようになった。
話によれば、山崎さんは東京出身で実家から通っているらしい。
高校でも友達が多いほうだったわけではなく、その内向的な性格も手伝って大学でもぼっちになっていたようだ。
彼女は読書が趣味という典型的な内向的少女で、私と正反対だったが意外と気が合った。
授業が被っているときは隣の席に座り、空きコマは一緒にカフェに行ったりして過ごす。
そんな関係を、私はどこか心地よく思っていた。
このままぼっちで生きていくんだと思っていたし、そのことに不満を感じているつもりもなかったが、実際に人と過ごしてみるとこれはこれで楽しい。
そう思えるような毎日だった。
そしてもう一つ。
私と山崎さんはどうやら学科で浮いているらしい。
もともと大人数だった谷原さんのグループはさらに拡大して、かなりの大人数になっていた。
そして、反対に私や山崎さんと積極的に話そうとする人は皆無となった。
谷原さんともあれから話す機会がない。
それだけならまあ別によかったのだが、このところ、あからさまに馬鹿にされるようになった気がする。
彼女たちがひそひそと、こちらを見ながら話していることが増えた。
明らかに私たちのことを何か言っているのだが、その内容は分からない。
そしてそのことが、ひどくもどかしい。
山崎さんもそれには気づいている様子で、すこし気落ちしている様子だった。
だが、わざわざ話題に挙げるのも気が咎めて、気づかないふりを続けていた。
すると、そういった態度はだんだんとエスカレートしてくるんだ。
そのうち、わざと私たちに聞こえるように直接的な言葉を使う人も出てきた。
家に帰ると今日一日の楽しい記憶が、不愉快な記憶に塗りつぶされるよう。
私は買ったままほとんど放置していたタバコの箱を引っ張り出し、ベランダでタバコを吸いながらため息を吐いた。
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