第33話 タグ タイムスリップ 完
桑島と出水が俺を見ている。そして横には科学準備室がある。
どうやら元の世界に戻って来たらしい!やった!やったぞ!
歓喜の舞を踊っている俺を、意味も分からず冷めた目で見る二人。
そこには、寒暖差が激しい3人の姿があった。
◇
帰還して、帰宅した俺はベッドの上で仰向けになって考えていた。
帰ってきて早々、二人に質問した。
多少の変化はあるかもしれないが、元居た場所に戻れたのだと実感した。
帰れないと思ってたから—嬉しい誤算の一つ。
そして、家に帰って、居た母さんに昔の事を聞いた。
帰ってきた途端、「俺の事覚えてる?」と聞いたら、「は?あんた何言ってんの?」と言われた。
そらそうか。
一応、言っておくが、これはよくある「あなたの名前は?」「今、何年何月ですか?」「この指何本に見えますか?」等の質問で、外面的、内面的にショックを受けた人間の記憶が、確かかどうかを調べる質問ではない。
過去に俺と会ったことを覚えてるかどうかという質問だ。
結論、俺があの時代に居た軌跡は欠落しているようだった。
すっぽり抜け落ちているのだ。返答はすべて、誰かいた気がするだった。
だが、4人の関係性は、俺が過去で見てきたモノだった。
俺が見たものは、元々の過去か、俺が介入した事によって変わった過去なのか、
今となってはわからないが、あの過去から今いる現在まで繋がった。
親の馴れ初めを知ったことも嬉しく思った。
本来、俺ぐらいの年なら、恥ずかしくて聞きたくないだろう。が。
いろんな経験をした俺はどこか…、達観している、斜に構えてる、そんな穿った
見方するようになったらしい。
大人になるってのはこういうことなのかな?
父さんを昏い過去から救ったのは、母さんの能天気さ加減だったようだ。
ウザがられも仕方がないその性格が、逆に父さんを打ち解けさせるいい緩衝材の
役目になったのだろう。
美男美女の兄妹を振ってまで、一緒になるの程に、互いが、互いを好きなった。
そして、裕也さんは…、初めて会った時、好感と共に、何かある人だとは思ったが、理由を知って納得いった。
´裏切る人´と口にしたその理由を。
まぁでも?そんな中でも最後は、元々好きだった人と一緒になれたのだから、
いいのではないか?
世の中には裏切られても、誰からも拾ってもらえない人だっているし。
ああ、俺の事ね。
最後に、まぁ、そう、これが一番驚きなのだが、やはり桜子さんだ。
昔、母さんと二人で作った弁当をひっさげて、俺の応援に来てた人とは、似ても
につかわぬ人物像に、今もドギマギする。
今までの演技だったのか、見た過去が演技だったのか、あれが本性か、生来の性格を打ち直して今の桜子さんがあるのか、どれが本当の桜子さんか、分からなくなってしまった。
どちらにしろ、過去編おける悩みの種はすべてあの人だ。
寝る体制を変え、桜子さんの事はもう、忘れてしまおう。
そう、思うのだが…。
あの時から…、帰ってきてから、どうも動悸が治まらない…。
何事もない。それがいいのだろう。あんな現象そうそう起こる事無いしな。
そうだ。もう、あんな桜子さんは見なくて済むのだから。
考えるなと言われても考えてしまう。あの笑顔が脳裏をよぎる。
現代に帰ってきて、過去との出来事の齟齬を調べつつ、今回起きたことに、
自分の中で決着、ついたもの、つかなかったものがあるから。
つかなかったものに、なぜ、この現象が起きたかと、不倫女と桜子さんが二人で
会っていた事だ。
これだけが腑に落ちない。
この答えは、なんだ?
問いかけるが、返ってくるはずがない。
色々考えるが、限界だ。想像の域をでない。
ふとここで、口が渇き生唾を飲み込む。
考えるのに夢中で、自分が飲食すらを忘れていた事に気づく。
(喉が渇いたなぁ~。下でなんか飲むか…。)
起き上がって、階段を降りて、キッチンに向かう。
キッチンに着き、戸棚を開いて、カップを取り出そうとした時、俺は硬直した。
「母さん…、これどうしたの?」
ドクン—ドクン—
「どうしたのって、昔からあるじゃない」
ドクドクン—ドクドクン—
「ええっと、実家から持ってきた物で、確か——」
ドクン—、、、、、、
「桜子から貰った物だったかな?」
動機や悪寒が治まらない。
なぜなら、そこには、俺が最初の過去で使っていた
捨てたはずのマグカップがあったのだから。
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