第24話 そうだよな?理想カップリングは最高ってもんだ

 リビングのソファーに腰掛け、手に持ってるに紙について考えていた。


 その紙には『T.dear.H_BigLove@』と後に続くドメイン名が書かれていた。


 まず、俺の机に置かれていた理由だが、一つは俺に連絡先を渡したい。順当な理由であろう。

 だが、これには不可解な点がある。俺に連絡先を渡す、そんな相手の心情が分からないのだ。俺に連絡を取りたい奴なんて、いたとして、桑島と出水しか頭に思い浮かばない。二人の連絡先は持っているので伝える必要がない。


 ならば、見知らぬ誰かが俺に気になっている?これまたありえない。誰が好き好んで、悪辣漢大魔王と恋人になりたいか。

 噂の真相を知ってても恋人になってくれるかどうか怪しいと言うのに。


 よってこれは、、そう結論付けた。


 次にこのメールアドレスがよくわからない。


 昨今の主流は、メッセージアプリなのだから、連絡先の交換ならQRは無理でも、せめてIDでも載せるべきだろう。だから

 もしかして、持って帰って来たの自体がまずいかもしれない。そんなことを考えていた矢先。


「へぇ~なっつ」


 振り返ると母さんが紙を覗き込んでいた。


「これってガラケーの時代に流行った、中高生のカップルとかがよくやってたやつでしょ?何、友達の連絡先?」

「知らん。体育終わったら、机の上に置かれてた」

「ふーん。女の子の連絡先だったして(笑)」

「それだけはない」


 断言した俺に、母さんは興味をなくした様だ、母さんはキッチンに向かいながら「みさちゃんいるんだから浮気はすんなよ~」と言ってきた。

 いや、それ、俺のセリフな?


 次の日早めに学校に行き、黒板にテープでメモを張り、落とし物とチョークで書いて置いた。

 家を早く出たので、朝飯を買うために一旦学校を出て、コンビニで食い、教室に戻った。


 教室に戻ると「これってそうだよね」とか「守ってくれたんだもん!浪川君好きになっちゃうよ!」と関係を訝しむ声で溢れていた。メアドの意味はこうだったらしい。


 『TOKO.dear.HIROTO_BigLove@』 あ……。


 それは統子が天破と話せない事を残念に思った計らいだった。メッセージは友達に宛先がバレる可能性がある。その点メールなら、送る相手を匿名にできると。


 恐る恐る鳳凰院を見ると、涙を浮かべ、恥ずかしそうに赤面して俺を睨んでいた。


 これは後日談なんだが、三角関係を広めたのは、鳳凰院に嫌がらせをしていた女子グループだったらしい。懲りずに何か仕掛けたのだろう。だが二度目は無かった。

 

 今1-Aは、3席ほど空席になっている。教師が´転校´と口にしてたが実際は…。

 

 拝啓—— 裕也さん、お母さん、俺、飛ばされるかも!

 

 メモを晒した罪で、俺も1アウトの可能性がある。鳳凰院さんまじ怖ェ!

 

 ◇


 俺は慎重に慎重を重ね、まず情報を集める所から、二人の観察を行った。


 今日一日を通して、出水狛前は何度か目が合っていた。その度に二人は顔を赤らめ、意識して目線を外していた。

 こーゆー時期、俺たちにもありま…、いや、こんな甘ずっぺい事、俺たちはなかったわ…。


 しかし、これを見てる限り両想いだ。しかも浪川の取り巻きに話しかけられているのに、知り合い対応の様に話しては、ちらちらと出水の方を見ている。

 なんだコレ。まるで『私、他の男子に取られちゃうよ?いいの?』と言わんばかりだ。


 俺が教科書にさせて貰った話でも、好きな人に不安を煽るような仕草、態度を取る描写はあった。だが、これは恋愛成就に向いていない作戦だ。


 実体験で言うと俺たち幼馴染は、気づけば俺が告白してた気がする…。他は——、そうだ!鳳凰院たちは、確か友達が教えてくれて、両片思いが付き合うまでになったんだ!

 俺は放課後を待った。

 


「なぁ出水。この前告られたって言ってたけど、その子とは付き合ったんか?」


 放課後、出水にそう問いかけた。この質問をする前に、事前準備は済ましている。狛前の気持ちはグループでもダダ洩れらしく、俺がメールで鳳凰院に作戦の概要を伝えると『また、貴方は…』と返ってきたが今いい。


「いや、振ったよ、ちゃんと…。俺、好きな人いるから…」

「まぁ狛前か」

「べべべえべっべ別に美香のことじゃないし!」

「狼狽しすぎだろ」


 昇降口までの途中、さっきまでのリズム良い足が止まった。出水は立ち止まった。


「美香、モテるんだよ…。俺陰キャだしさ、オタクだしさ。あ…あいつが幸せなら…べ、べ、別に俺じゃなくっても——」

「…狛前!お前の事好きらしいよ」

「…!なんで轍にそんな事分かるんだよ!」

「鳳凰院に聞いた。それに振り向いてくれないなら、次行こうかなってのも聞いた」


 最後のは嘘だ。狛前は自分のしたいオシャレより、出水の好みに合わせて外見を変えた。諦めてる筈がない。この嘘は毒だが薬にもなる。毒はこの嘘がバレた時、出水の俺への評価が著しく落ちるだろう。だが薬は、臆病な出水の背中を押すことができる。


 恋愛は本人たちのペースで、ってのがモットーだが、高校生活は3年しかない。

 

 貴重な3年を、出水には幸せに過ごしてほしい。愛惜があるが、出水に嫌われるリスクを冒した。勝ち確の恋愛試合を諦めてほしくない。


´次に行く´言えば付き合える状態が無くなる、この希少性で恋愛意欲を煽った。


 出水は不安な表情を浮かべて黙り込む、どこか諦めがついた様子を醸し出した後、

ふぅーと深呼吸し、俺に「用事思い出した。ちょっと行ってくるわw」とどこかへ走り出した。


 昇降口で少し時間を潰した後、校門へ行くと、遠目で出水は顔を真っ赤にしてて、狛前は嬉し恥ずかしそうに泣いていた。


 二人は手を取り合うと、指を絡め、腕を組み、送迎の車へ乗り込んだ。


 ドライブデート。車窓から見える二人はとても楽しそうだった。


 「出水。俺と友達になってくれてありがとう」


 微力ながら感謝を述べた。

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