さて剣を極めよう

あーる

 剣――それはただの鉄塊ではない。

 持つ者の魂を映し出す鏡にして、運命を切り拓く鍵である。


 まず、剣は「万能」である点が他の武具に勝っている。槍のように間合いに縛られることもなく、弓のように矢を消耗することもない。盾のように受けるだけではなく、攻めも守りも一振りに宿す。


 つまり「攻防一体」。これほど完成された武器は他に存在しない。


 次に、「象徴」であるという点だ。


 王は戴冠の儀に剣を掲げ、騎士は忠誠を誓う際に剣を捧げる。剣はただ人を斬る道具ではなく、権威、信念、そして誇りそのものだ。


 剣を手にした瞬間、人はただの戦士ではなく、使命を背負う存在となる。


 さらに、剣は「近さ」を持つ。


 槍で突くとき、弓で射るとき、そこにあるのは距離だ。だが剣は違う。剣を交えるとき、相手の息遣いが聞こえ、血の匂いが漂い、刃が擦れ合う火花が視界を焼く。


 命を奪い合う重みを、最も濃く感じられるのは剣だ。その近さが恐怖であり、同時に熱狂でもある。


 そして「美しさ」だ。


 細身のレイピアの流麗さ、両刃のロングソードの均整のとれた姿、大剣の荒々しい威容。どの形もまた美学の結晶であり、鍛冶師が心血を注いで叩き上げた芸術品だ。


 戦場で舞う刃は、ただの殺戮ではなく、一つの舞踏にも等しい。


 最後に、剣は「夢」を抱かせる。


 幼子が木の枝を振り、英雄を夢見るとき、それは槍でも斧でもなく剣だ。冒険者が最初に手にするのも、多くは剣。誰もが一度は「剣を持って戦いたい」と憧れる。それこそが剣が王道であり続ける理由だ。


 ――だからこそ異世界において、剣はただの武器ではない。

 それは勇気を示す灯火であり、英雄譚の始まりを告げる最初の一閃なのだ。

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