第13話 染まってしまった彼女

――――【ゆき目線】


『ごめんなさいっ!』

『ははは! 気にすんな。椅子取りゲームをやってたら、よくあることだ』


 デュエット曲を歌い終わった瞬間に一人掛けのソファーにどちらが早く座れるか勝負しよう、と颯真くんから持ち掛けられた。私は慌てて後ろを見ずに座ると、颯真くんの膝の上に乗ってしまっていた。


『ゆきはマジでかわいいな。ちょっとオレ、哪吒が許せなくなっちまった。妹が病気なのは仕方ねえ。だがよ、彼女がいんのに他の女といちゃつくとかおかしいだろ。ゆきはそう思わねえか?』


『う、うん……。だから気晴らしに、って思ってここに来たの……』


 彼はどんくさい私の失敗を責めるどころか、優しく頭を撫でて笑っていた。


『颯真くん!?』


『オレは頑張ってる女の子にはご褒美をやるんだ。ゆきはつらかったんだろ? せっかく哪吒のためにオレのパーティーで頑張ってんのに、肝心の哪吒ときたらどうだ? ゆきの想いをぜんぶ踏みにじるようなことばっかしてんじゃねえか!』


 颯真くんは私のために怒ってくれている……。


 なんて優しい人なんだろう……。


『ゆきさえ良かったら、オレが哪吒の奴をぶん殴って分からせてやるけど、どうする?』

『ううん、そんなことしなくていいの。私の気持ちを一人でも理解してくれる人がいるだけで安心できたから』


『ああ、ゆきはマジで優しいな。よく言われね? ゆきたん、ガチ天使って?』

『あはっ! そんなこと言われたことないよ。もう颯真くんったら』


『じゃあさ、オレの天使になってくんね?』

『えっ!?』


 私が颯真くんの天使!?


 彼の言っていることが分からない。私みたいな冴えない女の子が迷宮探索校でも一、二を争うようなモテる男の子の天使だなんて……。


『オレさ、ゆきと話してると落ち着くんだよ。なんつうの? 安らぐって感じ? オレらダンジョンに潜んじゃん。無事戻って来れても気が高ぶって寝れねえときがいっぱいあんだよ。そういうときにゆきの素朴な声聞くと、すーっと寝れんだわ』


『颯真くん……』


 私がダンジョン配信愛好家なら誰もが知ってるS級パーティーのリーダーの颯真くんの支えになってるだなんて!


 誰かから承認されるって、うれしい。


 しかもその相手があの網代颯真くんだなんて……。


『なんなら今、秒で寝てやってもいいぜ』

『くすっ』


 もっと怖い人かと思ったけど、こんなに面白い人だったとか知らなかった。気づくと私の中に哪吒くんはおらず、颯真くんでいっぱいになっていた。


『ゆきはいい匂いがするな』

『そんなことないよ……』


 颯真くんが私の髪を梳いて、匂いを嗅いでいた。哪吒くん以外の男の子から髪を触られたら、引いてしまうのに颯真くんの仕草はどこにも嫌な感じがしなかった……。


 颯真くんの熱い吐息が首筋に掛かってくすぐったく、身体が震えた。


『ゆき、興奮してる?』

『そ、そんな……こと……』

『オレはしてる。ゆきに触れてんだから』


 颯真くんは私の首筋に頬をつけながら、お腹の辺りをさすってくる。


 ううんっ!


 彼の私を撫でる手つきに声を上げそうになるが耐えた。だけど彼の手は自重することなく私のブラウスのボタンを外し始める。


『んんっ!』


 これ以上は許しちゃ……いけ……な……。


 颯真くんの手首に触れて、彼の行動を押さえようと理性が働いた。


『ゆき、気持ち良い?』

『は、はい……』

『良かった。オレ好き、ゆきのぷにぷにお腹のした感触』


 颯真くんを押さえていた手は抵抗を止めて、彼の温もりを感じる方向へ転換してしまう。彼から好きって言われてしまったことに哪吒くんへの想いとそれに伴う理性が脆くも崩れ落ちてしまっていた。


『んんっ、そ、そこは……』


 手はどんどんエスカレートしていって、生地越しに胸元に触れられる。


 どんどん変な気分になっちゃう。自分が自分でいられなくなっちゃうような……。


『ふぁっ!』


 颯真くんの両手に私の胸元が弄ばれてしまい、思わず吐息が漏れた。全身の力が抜けてふにゃふにゃにされてしまう。


 さらには……。


 下着の中へ颯真くんの温かみが伝わってくる。


『んんんっ!』

『ゆきって、ここが弱いの?』


 颯真くんの人差し指と親指で挟まれて、私は震えていた。顎が上がり、彼の指の腹が左右に微動する度に背が反ってしまう。


 もう私には颯真くんの想いを受け入れることしかできなくなってしまっていた。


 颯真くんの腰の上に座ったまま彼の両膝が私の股を開かせてしまう。下半身を突き出したような格好で彼からスカートの中を撫でられてしまっていた。


『ゆきのここ、湿っぽくね?』

『い、言わないで……』

『ふーん。ゆきは自分でする?』

『わ、私は……』


 んっ!


 敏感なところを下着の上から擦られて、全身に電気が走った。哪吒くん恋しさに自分で慰めていたけど、男の子から撫でられたのは初めてで……。


『ゆき、オレは口が固てえ、誰にも言わねえから自分に素直になりなよ。そしたらもっと気持ち良くさせてやっから』

『う、うん……週に4回くらいは……』

『へえ、ゆきって結構えろいんだ』


『い、言わないで……』

『悪いことじゃねえって。オレ、えろい女好きだから』

『う、うん、あっ! そんな勢い良くさすっちゃ、あぁぁぁ……』


 私の下半身はなすすべなく颯真くんの前で大粒の涙を吹き出してしまう。本当は哪吒くんからしてもらいたかったのに彼から触れられなかった寂しさから……。



――――【颯真目線】


 ゆきを満足させたところで場所をホテルに移した。あのまま個室でやっても良かったが、あえて焦らすのがオレのヤリ方。


 なんでかって?


 そりゃ、その方が女もヤリたくて仕方なくなるし、何より配信を見てる猿どもが早く早くってパンパンに股間を腫らして、スパチャをどんどん投げ入れてくるから。


 まったく女をイかせた濡れ手に泡で堪んねえぜ。


 ジャーッ! と水が勢い良く流れる音がしている。オレはゆきがシャワーを浴びている間に撮影の準備とコメントの確認を始める……。

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