ロマンとか、すごく想像力を刺激される感じとか、とにかく「悠久な何か」に思いを馳せたくなる作品でした。
とある男が剣を手にする。そして、傍らには「彼女」と呼ぶ誰かがいる。
男がいる状況は、どこか切羽詰まったもので、これから何らかの努力をしても逃れきれるものではないのがわかる。
それでも、男の心は静かなもので、傍らにいる「彼女」の存在に救われているらしいのが伝わってくる。
……そして、一つの結末。
主人公の男が迎えたラスト。そして彼の置かれている「状況」を見て、様々な想いが胸の中を去来しました。
彼のような存在は、これまでの時代の中でたしかに何人も存在した。彼がどのような想いを抱いて生きていて、どんな想いで「終わり」の時を迎えたのか。
何の文献も残っておらず、どこの誰だったのかという手掛かりすらない「誰か」がこの世界には数多く存在していたこと。そんな人々にも確かに「人生」というものがあって、必死に何かのために頑張っていたのかもしれない。
そんなことを改めて考えさせられ、「この世界」には無数のロマンみたいなものがあるのかもしれないと、しみじみと感じさせられる一作でした。
ホラーや戦記物がお得意の文鳥亮さんの、久しぶりの新作です。
そろそろカクコンの話題がちらほら出てきましたので、冬眠から目覚めつつあるのかも知れませんw
本作は、ホラー、歴史、恋愛、どれにもジャンル分けしにくい独特の作風です。
1800字の掌編ですので、ストーリーを述べるとあっという間にネタバレになりますから、やめておきますが、年老いた剣士が最後に何を思ったのか、いろいろと想像してしまうお話でした。
また、隣に座ったこの娘が何者なのか、死神なのか、守護霊なのか、顔を見られないのはなぜなのか、疑問は尽きませんが、そのあたりは読者の想像にお任せします、ということなのでしょう。
なんとも余韻に溢れた作品です。
是非ご一読を。