転生公女の諸領漫遊記
しょうわな人
第1話 ワタクシ爆誕ですわ
注釈 (心の声)
「実際に口から出る言葉」
【文章を書いた時】
何だかフワフワしてる……
ここは何処かしら?
そう言えば私はいったい誰?
!? 思い出したわ! !
私は
偉大なる
この世の悪は許すまじ!!
でも…… どうしてかしら?
私は亡くなった筈……
お祖父様の教えを守って薙刀で柳生流の師範代をも打ち負かす力を持った私も年齢には勝てなかった……
齢八十八歳で確かにその生涯を終えた筈なのに……
でも今、大きな産声を上げているのは確かに私……
ハッ!? これはお祖父様が私に新たな使命を課されたに違いないわ!
新たに産まれたこの世でも、前世と同じようにか弱い民たちを守りなさいという使命を課されたのよ!
お祖父様、私! やってやりますわっ!!
愚劣な役人や大名たちからきっと民を守ってみせますわっ!!
そうと決まれば成長して動けるようになったならば体を鍛えなくてはなりませんわ!
それと、スケサブロウとカクベエを見つけなくては!
印籠も作らないとダメですわね!
それにヤシチやオギン、トビザルにオキヌも探さなくては!
ハチベエは…… いりませんわね。いつもあの子の所為で窮地になってましたから。
ああ、やるべき事が山積みですわ!
けれど、必ずや成し遂げて見せますわっ!!
これは、歴史には登場しない
(この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。全て作者の想像の産物です。)
こうして新たな世に産声を上げたワタクシも、はや一歳となりましたわ。
そして、この身体には前世には無い能力が身についておりましたわ。
そう、魔術ですわ!
素晴らしいですわ、魔術!!
何も無い場所から火や水を生み出せる力! これはまさしくワタクシに
そう決意して早くも一年が過ぎましたわ。一歳になったワタクシはまだ拙いながらも喋れるようになりましたわ!
けれども…… 何故か頭で思っている言葉と口から出る言葉が違うのですわ!?
朝、いつも起こしに来てくれる侍女のレニーにお礼を言いますの。
(いつも有難うレニー)と頭の中で言っておりますのに、口から出る言葉は「オギン、ワタクシを起こす必要は無いと言っておりますわ」と生意気な口をきいてしまいますの。
「まあ、お嬢様。私の名前はレニーでございますよ。オギンではございませんって何度もお教えしましたでしょう」
(ええそうね、ごめんなさいレニー)
「アナタはオギンよ。アナタこそ忘れないでちょうだい」
とまあこのような感じなのですわ。これにはワタクシも困ってしまっておりますの。何度か「ワタクシの本当に言いたい事は違うのよ」と言おうとしたのですが、それすらも違う言葉として口から出てしまうのですわ……
それからワタクシは余り喋らないようにしましたの。頷いたり身振り手振りで意思疎通をはかる事にしましたの。
そして、二年の月日が流れてワタクシは三歳にして遂に字を覚えましたの。
ワタクシはレニーに頼んで紙とペンを用意して貰いましたわ。
そして……
良かったですわ! 書くのはちゃんと心の中の声の通りに文章を書けますの!!
ワタクシはレニーにこれまでの言動について謝罪致しましたわ。
【レニー、いつも起こしに来てくれて有難う。それとこれまでごめんなさいね。ワタクシ、心で思っている事を言おうとしても口から出る言葉がどうしても違ってしまうの。ワタクシの口から出る言葉は本心ではないとどうか信じてちょうだい】
まだ拙い字ではあったけれども、朝、いつも通りに起こしに来てくれたレニーに起きて書いた
それを読んでレニーは理解した顔をしてくれましたの。
「お嬢様、私は信じます。お嬢様はいつもキツイお言葉を仰られた後にお顔が申し訳なさそうなお顔になられてましたのをレニーは知っております。なので、お嬢様のこの手紙を私は信じます!」
そう言って優しくワタクシの背中を撫でてくれたレニー。思わずワタクシ泣いてしまいましたわ。
ハッ!? そうでしたわ! ワタクシったら大切な事を皆様にお教えするのを忘れておりましたわ!
ワタクシの
初めは何だか良く分かりませんでしたが、前世のエゲレスのようなお国みたいに王様が治めている国に産まれたみたいですわ。今では前世に当てはめて良く分かっていますわよ。
国王陛下の下に貴族と呼ばれる爵位を賜った方たちがいて、上から大公、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵、騎士爵となっておりますの。
それぞれの爵位をお持ちの方々は所領をお持ちでその領地で得た物から陛下に税を納めているとの事。
前世でいう
ワタクシの産まれたミトーク公爵家はお祖父様が
今の国王陛下はお父様の
お父様の名はカルス・ミトーク、お母様の名はリエヌ・ミトークですわ。
お祖父様とお祖母様もご存命で今は王都に居られるお父様に代わって領地の運営をお母様の補佐として一緒に見て下さっておりますわ。
お祖父様はタリス・ミトーク、お祖母様はナミエ・ミトークですわ。お祖父様はちょうど五十歳、お祖母様は四十歳ですわ。お二人ともまだまだ若々しいですわ。
お母様は
前世では将軍様の居られるお江戸には妻と子供を置いていたのですがその部分は逆ですわね。
お父様は宰相補佐の地位だそうですわ。若く(二十二歳)してかなり高位なのは頭が良いからだそうですわ。宰相様からの信頼も高く次期宰相との声も高いのだとか。
簡単にですがこれでワタクシの自己紹介を終わりますわ。
三歳になって
「司祭殿、孫のステータスを見てくれるか?」
(まあ、ステータスとは何でしょうか?)
ワタクシは心の中でそう思いました。
「畏まりました、タリス様。神よ、この地に住まう貴方の愛し子の能力を表し給え!」
司祭様がそう唱えましたら手に持たれた紙に神像から光が当たりましたの。その紙を手に取りお祖父様に渡す司祭様。
「こちらにございます。どうぞ大切に保管なさいますよう」
「うむ、助かった司祭殿。それでは失礼する」
紙を受け取ったお祖父様はその場では見ずにそのままワタクシの手を引いて屋敷に戻りましたわ。
応接間ではお母様とお祖母様が揃って待っておられましたの。
「さて、マイカよ。この紙の文字はマイカにしか見えないのだ。幸い三歳でもマイカは字を覚えている。読めない字などがもしもあったならばこちらの紙に書いてくれるか。私が読んで上げるからな」
お祖父様はそう仰られて司祭様から受け取った紙をワタクシに手渡されました。受け取ったワタクシが紙を見ますと、
名前∶マイカ・ミトーク
性別∶女性
年齢∶三歳
種族∶人種
職業∶公女
体力∶100 気力∶500 魔力∶300
加護∶創世神、豊穣神、武術神、魔術神、御老公
呪い∶ツナヨシの呪い(神でも解けない)
まあ! 何て事なの! この世界にまで上様の呪いが届いているだなんて!!
ワタクシ思わずビックリしてしまいましたわ。だって違う世界に産まれたのですからきっと水戸家にかけられた上様の呪いからも解放されたと思っていましたの……
きっとこの呪いの所為でワタクシの言葉は心で思った事と違う事を言ってしまうのでしょうね。
ワタクシは分かった事を紙に書いてお祖父様、お祖母様、お母様にお見せしましたの。
「むう! 誰だ、そのツナヨシとかいう者は! 私の孫娘に呪いをかけるなど!! 見つけ出して八つ裂きにしてやらねば!」
(お祖父様、それは無理でございますわ。上様は別の世にて既に鬼籍に入られておられますから)
「タリス、神でも解けない呪いなのよ、きっと私たちでは相手にもならないわ。それよりもマイカの言葉から真意を読み取れるようになりましょう」
(お祖母様、有難うございます)
「ああ、マイカ! ごめんなさいね。
(お母様、決してお母様の所為では無いのですわ。ですからご自分を責めるのはお止め下さいませ。領地で自由に喋れるようになるのは有難いですわ)
ワタクシの言葉がワガママ放題に育った令嬢のようになってしまうのは呪いの所為であると使用人や領地の人々に伝えられましたわ。
言葉とは違いワタクシの心は常に領地の民たちを思っての事だと通達があった民たちはそれを受入れてくれたと聞きました。
これで喋れる様になりましたわ。さあ、それでは身体を鍛えますわよ!
先ずはお祖父様に願って薙刀と杖の模造品を竹で作って貰いますわ!
ワタクシ、世直し旅に十三歳になったら出ますわよ!!
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