The LAST DAY
結城悠木
第1話 出会い
【まえがき】
この物語を小説にしてみようと思った切っ掛けは、ビビと凛子の物語を書いたことと、「続編楽しみにしています」という言葉でした。
本来【The LAST DAY】はボイス&ミュージックドラマです。
つまり今回、音楽と共に表現するべき物語を音楽なく表現するということですが、今のところどんな小説になるのか想像が追い付いていません。
前二作や原作を知っている方、たまたまこの小説を読んでいる方、みなさんに劇団オーロラツアーの世界をお楽しみいただけるよう工夫して書いてみます。
では。
【出会い】
最初に正義と悪があった
でもそれはなかった
人は人を殺し、人は人を殺してはいけないと言った
私はいつの日か、心静かに眠りに就く日が来ることを望む
でもそれは絶対に許されないことだ
分かっている
記憶に立ち燻る(くすぶる)硝煙(しょうえん)の匂い
後悔はない
例えばエヴェレット解釈や超弦理論、量子力学を駆使し、過去に戻ることが出来たとしてもきっと私は私
何も変わらない
私は人殺しだ
雨が私の気持ちを落ち着け、火が私の過去を照らし、太陽は私を決して許さない
月は好きだ
特に冬の満月
音の消えた空 張り詰めた大気の先 ただ輝く究極の円
私はそういうものになりたい
プラトンの説いたイデア論では、世界は「本物」の「偽物」で出来上がっているという
音もなく輝くあの究極の円も偽物
本当の円は誰も見たことが無い
それならば私は本当の円になりたい
正義も悪も、きっと偽物
私はこの夜空に問う
この世界に私たちが必要であるか否か
私は人間が嫌いだ
あの日。
霧の立ち込める早朝の山中。
繊細な羽衣が私の足元を漂う。
腰に挟んだデリンジャー。
イワヒバリのさえずり、月桂樹の声、私の暮らしたこの山、変わらない匂い。
「鉄と硝煙の匂い。」
澄んだ声がゆっくりと地面に落ちる。
「お前は人殺しだ。」
私の山、やわらかく舞う白い時間。
「山小屋で火薬と共に育った少女。人間が嫌いか? 凛子(りんこ)。」
ああ…そうか、そうだ。
「うん、嫌い。世界も嫌い。」
山鳥の飛び立つ羽音。軋む枝。土の匂い。
深い霧が二人を真白に包み、静かに木々の間を漂っていたあの日。私はカレンと出会った。
「凛子、私と来い。私も人間と世界が大嫌いだ。」
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