事実

フローラが、オレの亡き親友・ユウキと関係があったこと。

その関係性とはフローラがユウキの弟だったこと。

フローラは男だったこと。


それらの事実に、オレはただ言葉を失い、その場に立ち尽くしていた。



だが、オレはすぐに冷静さを取り戻す。フローラの性別が男だったことは、その証拠をこの目で見たので受け入れざるを得ないとして、他の事実が本当なのかはまだ分からない。少なくともそれを立証する証拠になるものを見るまでは。

とはいえ、引っかかるところはある。誰かに兄弟の写真を見られただけで、あんなに取り乱すものだろうか?そして写真が置かれていたのは目立たないところではなく、ベッドの棚という普通に目のつく場所である。


見られたくないなら、目のつきにくいどこかに隠すなりするはず。

そして誰かとの関わりがあったとしても、そんなに気にするものとは思えない。その関係性が兄弟だとしても。

あくまでもオレの偏見でしかないが。


冷静さと混乱が入り混じった思考のまま、彼女...いや彼に押し倒された身体を起こす。

あの感じからして、写真立てについて追及すれば彼を余計に混乱させるだけだと判断し、オレは口を閉ざした。



...気まずい沈黙が、この場を支配する。

その時間の長さは永遠にも感じた。



その沈黙を破ったのはフローラのほうだった。

「着替えるから、出ていってくださいまし」

オレは反論する気力もないままおとなしく部屋を出ていき、そのまま帰りの電車に乗って自宅に着いた。



それからは、彼との交流はないまま時が過ぎていき、オレは死ぬまでの暇つぶしとして溜まっていたゲームをやり続けた。しかし少年時代と違い、寝食も惜しんで出来る環境なのだが、感性の鈍化もあってかやってても大した楽しさは伴わない。目の疲れも早く表面化し、時には身体が疲れていないのにそのまま眠ってしまうこともあった。

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