スペースカウボーイ

わたねべ

その縄俺が買った!!

「兄さん。この投げ縄も商品かい?」


 たくさんの便利な道具が並ぶ雑貨屋に、ポツンと置かれた小汚いロープが目についた。


「そいつか?『スーパーロープ』って言って、事件の匂いを嗅ぎ分けて、犯人を捕まえてくれるんだよ」


「え!なんでそんな便利なものが売れ残ってるんだ?」


 困ったなという表情でポリポリと鼻頭をかく。


「昔は自警団なんかの間でよく使われてたんだが、最近はもっと便利な道具が増えたからな。それに…」


「買った!」


 俺は時代を感じるレトロなこの投げ縄が気に入った。スーパーって言う自信満々な商品名も自分にはよくあっている気がする。


「本当にいいのかい?」


「いいよ。それに売るために置いてるんだろう?」


 歯切れの悪い店主に代金を支払い、俺はスーパーロープを手に取り立ち去った。


 街の外れで、説明書を読みながらいろいろ試して見る。


 柄の部分についているボタンを長押しして、指紋を登録すれば本人認証は完了らしい。


 後はこの投げ縄が事件の匂いを嗅いで、グイグイとその方向を示してくれるとのことだ。


 3km圏内とあるが、あまりに遠くの事件を感知されても困るしちょうどいい。


 ……しかし、待てど暮らせど、スーパーロープが反応しない。


 目の前で殴り合いの喧嘩をする若者がいても、泡を吹いて倒れる馬がいても、全く反応を見せない。


 1ヶ月ほど経ち、流石にこれはおかしいぞと、あの店へ向かい店主を問い詰める。


「オタクから買ったこのスーパーロープとやら、全然使えないよ!スーパーどころかただのポンコツじゃないか!」


 店主は前にも見せたのと同じ、やれやれと言った表情で鼻頭をかいている。


「だからあのとき説明しようとしたのに聞かないんだもの…それに値段だって明らかにガラクタの値段してたでしょ」


 全く事件の匂いを嗅ぎつけないただの縄にイライラしながら、さらに店主を問い詰める。


「一体どこが壊れてるんだよ?自分で直すから教えてくれよ」


 ムカつくことに、店主は再び鼻頭をポリポリとかき、ズズッと鼻をすすった後に言った。


「そのロープ、持ち主に似て、鼻炎で鼻が詰まっちまったんだ」

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スペースカウボーイ わたねべ @watanebe

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