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 フレアエルド戦記シリーズには、最新作までで全八種の兵科が存在する。

 そしてシャイアを舞台とする外伝に登場するのは、そのうち五種。


 安価で数を揃えられる歩兵。

 遠距離から攻撃できる弓兵。

 平地で抜群の機動力を誇る騎兵。

 攻城戦や破壊工作などの特殊戦闘で特効を発揮する工兵。

 金食い虫ではあるものの、あらゆる場面で活躍する魔兵。


 武将としたキャラクターを戦争フェイズで戦場へ送り出す際、一人につき最大三つの部隊を預けられる。

 さらに一部隊の上限数は選択した兵種、ひいては各シリーズごとに異なり、他作品よりも戦争そのものが小規模な外伝は特に数字が控えめだった。


 例えば一作目で上限五千だった歩兵は千人、上限三千だった騎兵および弓兵は五百人がマックスとなっている。


 中でも魔兵に至っては上限百人。しかも歩兵千人より遙かに維持コストが高い。

 難易度がノーマル以上の場合、何も考えず魔兵だけで部隊を固めれば、あっという間に国庫が尽きてしまうバランス調整が施されていた。


 しかし裏を返せば、それだけ魔兵──戦闘のために術理を修めた魔術師は、精強かつ希少ということ。

 戦場で成り上がるにせよ大金を稼ぐにせよ、一兵卒からスタートする場合、魔兵を選ぶのは当然と言えるだろう。


 ……選べるものなら、だが。






「上手くいかねぇ……」


 何度目かになる魔術の発動失敗。

 頭をかきむしりながら、ジャックはテーブルに突っ伏す。


「くそ……理屈は頭に焼き付いてるハズなのに、なんで……」


 足元に転がる半焼した魔導書グリモアを拾い上げ、熱で貼り付いたページを開く。

 上半分は黒焦げで読めなくなっているものの、そこに何が記してあったのかは転写てんしゃされた知識によって補填ほてん済み。

 ゆえに魔術の基礎中の基礎である魔力を励起れいきさせる方法も、励起れいきさせた魔力を魔術として出力する手順も、完璧な理解があたっている。


 にもかかわらず──それを実践することが出来ない。


「……もう一回」


 もっとも、出来なくてなのだが。


 頭で理解したからといって、いきなり実現できれば苦労はしない。

 人間の身体というものは、なかなか思った通りには動いてくれないのだから。


 思考と感覚を完全に同期させた時、初めて魔術は成立する。

 魔導書グリモアが補ってくれるのは知識の習得まで。そこから先は自力で踏み越える必要がある。


「ふうぅ……」


 一年。魔導書グリモアを用いて魔術の鍛練たんれんを始めた者が、下級の魔術を成立させられるようになるまで要する期間の平均。

 なお魔導書グリモアを使わず座学から始めた場合は、おおむね三年。


「……! 今なんか指先に火が出た気がした!」


 ただの気のせいである。

 結局この日、ジャックは魔術を片鱗へんりん程度にでも成立させるどころか、そもそも魔力の励起れいきすら出来ないまま終わるのだった。





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