サイゼ

歩道橋を渡っていた。橋の下の工事現場を見下ろす。

ああ、作業員さん達の黄色いヘルメットが

サイゼのハンバーグステーキの付け合わせのコーンに見えてきた。コーンが忙しなく働いている。フフフ…ウマそ。

傍から見たら工事現場の作業員さんを舌舐めずりし、食い入るような熱視線を送る女だ。目撃者は思わず目を逸らして極力関わらないように努めるくらい不審者の貫禄はあっただろう。


気付いたらサイゼに来店しており、

お名前記入表の前に突っ立っていた。

サイゼの暖色の壁はいつ見てもほっとする。

「いらっしゃいませ、何名様ですか」

奥から出てきた店員さんに人差し指をピンと立てて見せる。

「1名様ですね、ご案内します」

身を翻しそそくさ歩く店員の歩幅が思ったよりデカくスピーディーで客のわたしは内心「待って〜」と汗を飛ばし小走りで店員の背中を追った。

目当ての席に店員は先に到着し振り返るが想定していた場所に客(わたし)がおらず、きょとんとした表情の前にからだをねじ込ませるように追いついた。

案内されたテーブルにまるいお腹や電信柱のような太ももをゴツゴツ当てながらソファ席へいそいそと座る。

「お水はセルフサービスとなっております」

店員はさっさと持ち場に戻っていった。

テーブルにQRコードが書いた紙が貼り付けてある。スマホでこのQRコードを読み取るとメニュー表が出てきて注文まで可能なのだ。わたしは迷わずハンバーグステーキとスモールライスを選択し注文ボタンを押した。

そういえば、あの日はサイゼでなにも注文しなかったな。

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