バクター

@eluvina

第1話 

その雪花に涙の水を

「この・・・・クソ機械が・・・・」


狭間 良一郎はうるさい警告音の鳴り響くほとんど体を動かせないカプセルの中で吠え始める。高度計と室内の気圧計がかなりの速度で回り始めておりそれは改善傾向でないことは素人の目にも明らかである。振動・衝撃のどちらとも狭間の肉体に響いているが、彼の前には操縦装置どころか、寂しいパネルの数値を見るしかできずにモニターすら存在しない。


だが、ここがどこなのかは理解している。


惑星ファクター5上空


地球のような人間の居住可能な大気構成をしている惑星であり、過酷な環境ではあるが、一応の生存は可能であるという星である。


狭間 良一郎はどちらかといえば、いや端的にいえばチンピラだった。


罪状15件 窃盗・強盗・恐喝 などをしていた。生きていくために仕方がなかったという映画で億回使われたであろうフレーズを使用して自己正当化をしていた。

しかし法がそのフレーズを使用しているわけでもなく、自分は現在惑星開拓刑に処されたため現在惑星間巡洋艦のミサイルポッドから射出されて亜音速でファクター5に侵入している。


モニターにすらないなか、寂しい降下計だけが自分の居場所を教えてくれている。これが正しければではあるが、


無重力とそのあとの地面にたたきつけられる衝撃


「ちくしょうめ」


それは彼がこの地に落ちたことを体で理解できた。どうやら高度計は200メートルほどずれているようであり体をこわばらせることすらできなかった。


「はあ、くそったれめ。帰りはVIP待遇で帰りたいもんだ」


そういった直後に期待が勢いよく開いて地面に投げ出される。周りには何もない。


枯れた大地というのがふさわしい形容詞だろう。


「ファーストキスは地面の味か」


口に入った土を吐き出しながら周りをよく見てみるが特に変わりはない。乾いた大地。何も他には存在していない


草花の一本すらそこにはなく、ファーストキスの乾いた大地が一面に広がっていた。


これを開拓しろというのだから、ここに送った連中は毎日砂糖かはちみつ製の報告書に目を通しているのだろう


~新たな希望~


ファクター5は自分のいた家から見える大きなスクリーンからはそう言われていた。しかし、希望なんて言葉は実績も、確かな見通しもないものにつけるものだ。


良一郎は地面を踏みつける。憎々しそうに


普通ならあの突入用カプセルを調べて食料品を探すのだろうが、正直そんなものを積んでいるまともな奴がコレを作ったとは思えないので歩き始めると遠くからエンジン音がした。鈍い旧式のプラズマコイルの駆動音が聞こえる。金切声のように甲高い聞きなれると不快にも感じる音だが、今は天使の歌声にすら聞こえる


「おーい、ここだ」


何も持ってないので精いっぱいの大声をだしながら、両手を振りながら気づいてもらおうとしている。善人かどうかは正直わからないが人がいる希望に縋り付こうとしたのは人として普通のことだろう


遠くから数両の三輪式のバイクが現れた。塗装は赤色で統一されており三輪車にしてはかなりの大型である。おそらく、荷物運搬用の三輪車を改造して使用しているのだろう。そんな観察をしている自分を挟んで通り過ぎて突入用カプセルの元まで行き解体を始める


「おい、てめぇ何無視してんだ!」


オンボロのプラズマコイルのカラカラという停止後の音だけがそいつらの出した音であり、返答はなかった。その三輪車はかなりの大型であり、7人は乗れるほど大きかった。だいぶ前に作られたモデルであり、ところどころに傷やへこみのないところがあり日常での使用がどのようなものなのかがうかがえる。それを横目で見ながら怒りをこらえないで、相手に踏み込みを続ける。


甲高い発砲音の後に地面の近くに穴が開く。みると人の中心にいた人物が銃らしき何かを持っている。発砲音から考えておそらくはレーザー式の銃器であることは予想がつく。


その返答は良一郎の足をとめるには十分であった。部品の解体が終わるまで目の前の人たちが希望である。はかないものではあるが、それ以外にはないのだから、藁をもつかむようにじっと待つと、数分で乗ってきたカプセルは解体され、三輪車の後方に詰められる


「おい、連れてってくれよ」


そういうが、そいつらは何も聞こえていないように、何も見えていないようにガン無視をしてきた。そして、その中の一人がヘルメットをとり振り返る。


その顔はヘルメットをかぶっていた影響か美しい銀髪の髪をしており、表情には自信と勝気さが垣間見えた。その端正な人形のような顔立ちは少し暑いのか赤らんでおり、普段であればナンパをするほど美人と呼べるほどの美貌をしていた


「野垂れ死にたくないか?」


良一郎は作り笑顔で頭を縦に振ると、「そうか、なら走ってついてこい」といい、三輪車は走り出してしまう。呆然としているが、そんな暇はないので頭を振り絞る。そして少しワイヤーと鉄のプレートを探してきてから三輪車について走り出す。あの鬼畜がぁ と一瞬でもナンパしようとしたことを後悔しながらその二つを持つ。もちろん、これで彼女たちの車にひっかけて楽をしようということであったが、

「このクソ野郎が・・・・・・・」


しかし、無情にも三輪車はどこにもなくなってしまっており、あるのはこの乾いた大地だけだった。走ってついてこいなどという口とは思えないほどのスピードで駆け抜けたのだろう。が、タイヤの跡をおえば彼女たちが休んでいるところにまではいけるだろう。必死に走っているが、風景は何も変わらずに体の暑さだけが自分の労力とこの世の絶望を醸し出す。ああ、希望というものは基本的に信じるものではないのだなと良一郎は思いながら走り続ける。


汗が出て、汗が出て、次にあまりの過酷さに鼻血が出始めたころに何とか止まっている三輪車を見つける。そこは砂漠のオアシスのような場所であり、きれいそうな水と植物が数個生えている。彼女たちはヘルメットを脱いで、身体能力強化用と思われるパワードスーツだけを身に着けている。全員女性ではあり、顔をみていると彼女たちの体のラインを明らかにするそのスーツも少しエロティックである。

そして、あの鬼畜女が話始める

「これくらいの上納できればしばらく市民権をもらえるな」

その声は自分にはいた冷徹な家畜をもてあそぶような声ではなく、仲間と分かち合う声であった

しかし、その声の調子で自分に話しかけることはないだろう。

自分がここに来ることは考えていないはずであり、それであれば歩哨なりなんなり立たせているところだろう。

三輪車に黙って乗り込んで、息を殺す。

少女たちの団欒はしばらくつづき、そして車はエンジンで振動して、次にタイヤの振動が伝わってくる。

少女たちに見つかれば追い出されるだろうから、三輪車のジャンクの下に潜り込んで息を殺しているがひどくのどが渇く。

当然こんなところで、水というものは貴重以外の何物でもないのだから、自分の喉には水が入る機会などない。

だから、当然。少女たちの飲みかけの水筒に手が伸びたのは生存本能としては当然のことだった。

唇に触れた水が細胞にいきわたっていくのを感じて、水のうまさに感嘆とした表情をして水を戻そうとすると少女のスーツ越しの柔らかい手が当たる。当然だろう。

これは少女の水であり、侵入者の予想などしていないのだから

「きゃあ。なにこいつ」

そう甲高い少女は声を上げると、こちらを見て驚愕して、足を上げて蹴り始める。スクラップのおかげでそこまでの被害はないが二人の女性に蹴られ殴られがスクラップ越しに響いてくる

しかし、それは続かない。爆発音がした。

スクラップ越しに上をみるとそこには統制局の鷲をモチーフにしたマークが見えた。

統制局。

俺をこんなところに落とした元凶である。

統制局とは地球内での警察統治組織がいくつかの惑星系まで広がったことにより作られた組織であり、100周年パーティがだいぶ前のニュースで報じられていた。

基本的に地球主体の統治国家維持のために作られた組織であるが、すでに中身は軍隊といっていいほどであり、統制局に攻撃されるということはつまり、この乗り込んだ三輪車が沈みかけの船である犯罪者集団であることがほとんど確実に確定した。

攻撃してきていたのは大気圏内巡行型ドローンであり、全部で三機である。ドローンといっても7メートルほどの全長があり、四枚羽と、丸い本体には黒い塗装がなされており、それを誇るかのように統制局のマークが見えた。そして、さきほどの爆発音の原因が見えた。

まるでその本体に適当に溶接されたように固定された下に見えるミサイルポッドのような武装か、横についているレールガンのどちらかだろう

生き残り方を聞かれれば、さっさとこの三輪車を捨てて逃げるのが主だが、驚いた少女の足がかかったスクラップは男の体を固定して逃がさないし、逃げても同じことになるだろう。

「くそ、統制局かよ」

その声と同時に銃声が聞こえる。

それはドローンにとっては些細な抵抗というしかないほどのものだった。おそらく小さな穴は開いただろうが、それは整備員の頭を悩ませてもこちらの悩みを解決するものにはなりえなかった。スクラップの中に何か使えるものはないか 考え始める。

普段は悪知恵は聞く方だと良一郎は考えていたが、その良一郎の考えはあくまでも生き抜くためではなく、よりよい生活のためであり、人生最大の頭脳を動かしながら考え始める

「ちくしょう 運がねぇぞ。どうすんだいったい」

口の悪い少女は歯ぎしりをしながら、俺を踏みつける。水を飲んだ代償にしてはずいぶんひどくないだろうか

爆音が周りに飛散すると、一両の車両が火を噴いて爆散した。

中にいる人間が助かったかどうかはわからないが、少なくとも自分にとって重要なのはそこではなかった。

しかしそこでようやく目の前のドローンの命中率が悪いことに気づく、おそらく整備不良で車軸をミスしたのだろう。

これはこのドローンの特性かどうかはわからないが、少なくとも兵士ならそれを知っても何もしようとしなかった。そう。おれはアウトロー

「おい、洞窟か 低高度に誘えるようにあいつをできないか?」

 その声に先ほどの鬼畜女が返答する

「・・・・・・何か策が・・・・・・・・・・?」

 彼女にとってその言葉は普段なら無視をしてしかるべきものだったが、今の彼女にとってそれは救いの神のような言葉に思えた事だろう。

そして、彼女は支持をして、車列は向きを変える。

 彼女はこちらかもしくは先ほど爆散した車列を眺めながらこちらに向き直す。

「ちっ、こいつ以外には何かないか!」

 その言葉の後にため息をつく。

どうやら返答はNOだったらしい

「あと、パワードスーツをくれ」

 そういうと彼女は服を脱ぎ始めて、汗でぬれた白い肌をさらしながら、男らしく持ってこちらに手渡してくる。先ほどまでの行動で中にたまった汗からは少しいい匂いがしたが、気にせずに装着をする

「おお、これはなかなかいいな」

 着ると腕と足についている青いランプが点灯して、プシューッという排気音とともに背中の排気口が開く。

そして、力がみなぎってきた。先ほどの三輪車レースについていけそうなぐらいの速さと、これを持ち上げて10メートル投擲できるほどの力がわいてきた。

そうしていると二つの崖が合わさっている地点についた。

そこは一本の道路が陥没したように二つの大地が盛り上がってきている場所であり、両脇から岩が飛び出ており、時折針のようにするどい突起物がでているため、ドローンは高度を下げるしかなかった。

そして、先ほど拾ったワイヤーと鉄くずを結び付けていたものをブンブンと振り回して、ドローンに投げる目標はドローン本体。すると誰かが

「あほなのかな。あんなんで倒せるわけないじゃん」

 もちろん、その言葉は現実のものとなり、軽い金属音とともに跳ね返される。

跳ね返されるが、それでいい。なぜなら跳ね返った金属片は上に飛んでローターに巻き込まれてローターから火花が散る。

「それで・・・・・・・・・・・?」

鬼畜女は冷たい様子でこちらを見守る。

それは当然だろう。

この中で一番ダメージを与えた攻撃ではあるだろうが、どれだけうまいシュートでもゴールに入らなければ意味はないのだから、そう思いながら、スクラップにワイヤーのもう一方を括り付ける

「ヒーローはこうするのさ」

 そういうと走るようなポーズをとって彼女が愕然とした後に俺は走り出す

地面ではない。空でもなく中間のワイヤーを伝って走り上り、ドローンの元まで到達してから、盗んでおいた銃でドローンの上部の蓋に穴をあけて、パワードスーツで引きはがす

それと同時に三輪車に括り付けたスクラップが落ちてバランスを取り戻す

ドローンといってもこれは元々人間の搭乗を考えられている特殊な機種であり、そこにはいくつものモニターと操縦幹、インパネなどがあり、さっそく自動運転機能を外しながら、照準を近くのドローンに向ける。

「おい、鉄屑野郎、スクラップにしてやるぜ」

 その声とともにトリガーを引くと、レールガンを発射して派手な音を立てて一機のドローンが墜落する。

しかし、それは大きな過ちだったとわかる。

その攻撃によって味方識別信号がロストして、もう一機がこちらを追ってきたからだ。そして、完全に俺は後ろをとられてしまっていた。

36計逃げるに如かずということで、全速力でドローンを飛ばして、逃げる。装備欄を開きながら見ようとするが、自動ドローンにチャフなどというものはなく、室内には警告音が鳴り響く。おそらくミサイルにロックオンされたことを表しているのだろう。

急制動で機体の速度を落としながら降下して、ミサイルのロックを外そうとして、それは意外にも簡単に成功したが、プロペラを一つやられて機動力のそがれた同一期待相手には力足らずであり、その次の瞬間にはまたロックオン警報が鳴り響く

「くそったれ」

 その言葉が機体内にこだまして何とか逃げ切っていると、下からミサイルの音が聞こえてきた。目だけを動かして下を見ると固定式のロケット装置が見える。

その援護もすぐに外れてどこかに行ってしまう安物だったが、少しの間警報から自分を遠ざけてくれた。

そのすきに急制動で後ろについて主砲をぶっ放そうとしたが、後ろをとれることもなくさけられてしまう

下から「ああっ」とか「おしい」とかいう言葉が聞こえてくるが、うるさいなと思いながら前を向く。がここは岩場の中であるので自由な行動はそう簡単には取れないでいた。

「ちくしょう」

現実は非常であり、次に来たミサイルの警告音の次の一瞬には激しい揺れと爆発音が聞こえて、重力に従い地面に軟着陸をしてしまう


雪花姫とよばれる少女はさきほどの男に貸したパワードスーツが返ってこない事をドローンが落ちて、下の岩棚に落ちたことで知った

ラナ

それが彼女の本名だが、昔のこともありラナは雪花姫と呼ばれるようになっていた。

もちろん、仲間何に呼ぶ者はいないが、それは汚名なのだから配慮なのだろう

目の前を飛ぶ、先ほどのドローンを落としたドローン 型式はTR232型ドローンをにらみつける

特に統制局のマークがにくく思えてしまう。統制局が自分たちをここに落とした大元凶であり、その自分たちのお小遣い稼ぎ程度すらそれらは許さないのだから

「ふん男なんかに頼むんじゃなかったな やっぱくそだ」そう愚痴を漏らす。

 そういいながらもやっぱり部隊の何割かを逃がすことができたことに感謝はしている。パワードスーツ一個の損失を出しているとしても妥当と思えるぐらいである。

残るは自分たち一車両

逃げ切るのはほぼ不可能だが、この両際を占められて大きな移動ができない地形ではTR232も自由には動けずに三輪車が少し動くだけで狙いを遮れた。オンボロのプラズマコイルだが、その安心感は普段より数段頼りになる力強さである

前を見ると愕然とした。

岩で囲まれた地形がもうすぐ終わり荒野にでることが分かった。目の前に進むことは自分の処刑命令書へのサインを求められているように感じてしまう

「おい、どうするよ」

強気な口調のカナリアが声を上げる。普段から威勢がよく調子乗りの彼女の口は小さく震えて声は軽く震えて裏返っていた

「どうしましょう」とリーナも悲鳴をあげながらこちらを見上げる。

「ちっ」指をかむがそれが気を紛らわせる以上の効果はなかったが、そうしていると後ろからロケットが見えた。

これは対空用ロケット弾の飛来音。その空をきるソニックブームは何度も聞いてきた音だった。が、それすら外れてしまう。

おそらく襲われてからあの男がひきつけている間に停車させてひきつけておいた部隊の誰かが撃ったのだろう

しかし、ドローンにとって優先対象になることは目に見えており、ドローンは後方をむいたので、こちらも三輪車を止めて、地面においてロケット弾を発射する

「こっちだ。クソ野郎」ラナは叫びながら発射する。狙いはつけない。ただ、こちらに向かせることが目的の一射は空を切るがそれでこちらを向きなおす。

 死神のレンズがあれば自分はもうすぐ刈られるのだろう

仲間のために死ぬ

それが自分の運命なのだと受け入れた

ラナは手を挙げて自分の乗っていた三輪車に先に行くように伝えて、もう一発のロケット弾を装填して次は丁寧に狙いをつける。地面においた弾体発射機のスコープを除いて、目の前の化け物に向ける。次は外さない

そう思いながら、緑のスコープ越しにあの悪魔を見つめて、しっかりとロックした状態になる、もうドローンはかなり近くまで近づいてきており、攻撃開始地点のすぐ手前で本体についているスイッチをひねりロケットを発射する

ドローンは本体下部にあたり爆発して炎上までしたが、いまだに健在であり、ふらついた後にしっかりと空中に静止した状態になり、一人の人間に狙いをつける

「ふん、これが最後か」ラナは手を組んでドローンという悪魔をにらみつける

 ラナの人生は不幸の連続だったとラナすら思う。

孤児として生まれ、孤児として生きまかり間違って一流の傭兵になってこの大地を冒険した。

一流の傭兵 レイズでの暮らしは豊かだった。

暖かな食事に暖かなベッド、安らげる個室が与えられて、かけがえのない仲間すらできた。

あの事件がなければ自分もあそこにずっといて、笑顔でいられたのだろうか

それからの毎日は底辺傭兵団に拾われて

代り映えのない地面に代わり映えのない毎日だったが、全員が不幸の連続のこの場所では自分は幸福だったのだろう。

親の名前も知らずに死ぬのか

それはこの場所の常識であり一般であったが、求めないものではなかった。

ドローンは確かに彼女をとらえてレールガンを発射準備をし始める。ここは両際に岩壁があり、動きが固定される。だから逃げ場もない。隠れ場もない

「ああ、母さん、父さん 会いたかったよ」

 その言葉の次の瞬間に爆音がする。みるとプロペラの何枚かが壊れてずいぶんと低空に落ちてきていた。それは紛れもなくレールガンであるが、そんな高価で貴重なものを仲間が持っているとは思えない。

「ヒーローはこうすんだよ 鉄くず」

 広域マイクでしゃべりながら、二つのドローンは衝突して破片が飛び散る

あの半壊して不時着したドローンを復帰してここまでもってきたのか?

逃げればいい。

あの速度が出たなら適当な町までは行けたはずなのに、恩のない。むしろ仇ですらあるであろう自分たちを助けるためにやってきたのかと思うと

「ああ、だから絶滅危惧なんだ。男は・・・・・・・・」

 そう考えてしまう。

私ならしない選択をあいつはやってのけた。あいつの立場ならやっただろうか。

二つの鉄くずは衝突しながら落下していく。

自分は思いがけず駆け出してしまっていた。

大切だからではなく、借りを返さなくてはいけないと感じたからである。このまま死なれると目覚めが悪いそう思って駆け出す。

ガンガンという打撃音が響き渡る。どうやらパワードスーツの電源が切れたらしい。おそらく使い慣れていないのでつけっぱのまま操作していたのだろう。まあそれが彼の命を不時着の衝撃から救ったのだろうが

壊れているドローンのところまで行くと、完全に彼の乗っていたドローンは裏返ってしまっていた。

行き音のするブロックを見るとそこには平板の上に回転式のロックゲージが見えて、それを回すと彼が落ちてくる

「おせえよ」彼は苦笑いしながら、こちらを見てきた

「ああ、死なれると目覚めが悪い」

雪花姫はしばらく見せていなかった笑顔を彼に見せて話しかける。

ここは悲惨な現状であり、ドローンの残骸も高く売れるだろうが、それにも回収班が来ないとお話にもならない。

しかし、彼女はこの暑苦しい気温と照り付ける日光にすこし嬉しさを感じた。それは彼女が生きているということなのだから


「なんでだぁー」

 良一郎の声が響き渡ったのは略名 ゴーストタウンの地下牢である。

 ここには犯罪者。いや、この街自体が犯罪者なので適切ではないが、重度のモラルを犯した者が入れられている場所であり、そこに良一郎も入れられていた。

ここは土をくりぬいて鉄格子を当てはめたような場所であり、室内にあるのは固い土とそれか岩と、ハンモックタイプの寝床だけであり、全体的なチープさはかなりのものだったが、食事はそのチープさに輪をかけてひどく、もはや残飯といっていいほどのものでしかなかった。

俺は何をした?

あいつらの言葉通り、意地悪な命令に追いついて、ドローンを奪って、あいつらの命を救ってやった。ついでに自分の乗ってきた突入用カプセルすら彼らが持って行って、この扱い。

そのけのある人物ならご褒美というのだろうが、これはひどい。

それとも拷問すらされていない現状はまだ恵まれているのだろうか?

少なくとも地球では現状でも十二分に拷問という言葉に該当する扱いである

トイレはどこか聞いたら悩まれたのもむかつく点だ。ここで垂れ流せということらしい。

まあ催していないのが幸いしたが

すると、あの鬼畜女がここに立っていた

「おい、鬼畜女 ここからだせ」

「だれが鬼畜女?ここがずいぶんお好きみたいね?永住する」

「いやぁすみません。天使と間違えました」心にもないことをすらりと言えるのは人生経験の賜物だろう

ふんっと馬鹿にしたような音を出して、この女は腕を組む

ちなみに地球的な常識ではこれは無礼なので決してしないようにね

「嘘が下手ね。まあいいわ。私はラナ。鬼畜女よりはましな呼び名でしょ。次からそう呼びなさい。あっでも違う呼び方をしたら殺すから」

違う呼び方をしたら殺す?

そんなことをわざわざなんでいうのだろうとおれは考えていると彼女は叫ぶ

「おい、質問に答えろ。ここには何が目的できた?」

「うん?ああ、お前らと同じだよ。統制局に送られてきた。仲間ってやつだな」

「残念ね。私はここ育ちよ」

ああ、違う呼び名とは火星トカゲという言い方か。

火星トカゲ

火星生まれ人間に対してつけられた蔑称。

突然変異した人種が多いのでそう呼ばれることが多い。

「ってことは?あんたどこ生まれ?」

「いや、地球」

そういうと彼女の顔色が変わり、腰のホルスターに手をかける

「スパイか」声が低くなり、恫喝するときの音である

「ち、ちがっ おれはその・・・・・流罪でここに流されて」

鉄格子際の彼女の目つきはいまだに鋭いままであったが、ホルスターから獲物を抜かれないだけ、自分は幸運なのだろう

そうだよね。火星トカゲとか読んでいる地域の人間にすごーいとかそういう感想を持つわけないよね

「あんたなにしたの?」

「窃盗、恐喝、強盗、痴漢、エトセトラ?」

「あっそう」彼女はあきれたような目で見る

「そんなこと当たり前でしょ?って顔してない?」

「まあ、殺人以外はここにあんま入んないし」

そういわれて、ここの環境に納得がいってしまう。

ここで、一週間過ごせと言われれば誰だって後悔するようになるだろう。ここはそこまでひどい環境であったが、それ以外の罰は何なのだろうかと考えてしまう

「まあいいわ。あんたは何かしらのスパイって感じがしないしね じゃあ、死になさい」

彼女はホルスターを抜いて自分に向ける。スパイなら情報を抜くために生かすのが目的だったのかよ

「ちょ、まって、何も知らない。本当だ」

そういう問答をしていると一人の女性が入ってくる。

異様に背が高いその女性はコツコツと足音を立ててこちらに近づいてくる。

「おお、あんたもこいつを説k・・・・・・・・・・・・」

耳の当たりにレーザーが抜けて穴が開き、耳を押させて地面でもがき苦しむ。本当に苦しいときは地面で回転しながら痛みに耐えるのだと今知った。

女性はそんな自分を見ながら入ってきて檻の中に入る

「君はスパイかい?」

「ち、違う」

「本当かい?」

その返答はしなかった、口をつぐんだからではなく、彼女が何かを俺の腕にはめ始めたからである。

そして次の瞬間にそれは狭まって固定され、幾重にもなる歯によって肉がそがれ始めて悲鳴を上げる

「ぎゃああああああああああ」

使用したことのない声帯まですべて使った絶叫は部屋に響き渡るがそれで止まるようなものではなく、体感で一分ほどの時間腕に巻き付いて肉をえぐり続けていた。そのあとにその装置は肉片を下に落とす。

腕だったものがそこにはあったが、今はもう肉片としか言えなかった。

「イッた、てめぇなにすんだよ」

「チップを摘出したんだよ」

「・・・・・・・・・チップ?」

息をきらしながら質問をすると彼女は肉片を指さして言う

「そう、統制局に埋め込まれたチップ。こんな辺境じゃ、半日に一回の頻度程度でしかスキャンされないけど地球だといつでもどこでも位置が分かっただろうね」

その冷徹に冷淡に告げられる言葉にぞっとしてしまう

彼女は黒い肌の手を差し出して自分を起こしてきた。白金の髪に美しい二重瞼の女性、しかし目は半開きで眠そうであり、目の下のクマが彼女の美貌をかなり下げていた

「でていいよ」そう手を貸してくれた女性はいってくれたが、ラナが反対する

「ちょっと、バーリィ、こいつは危険よ?」バーリィという女性は淡々と回答する

「そうは思えないね。彼は本物のクズだろう。スパイなら統制局から助けるにしても助け方があるだろうしね」

「で、でもこいつ 男なのよ?何するか・・・・・・・・・・」ラナの言葉には俺に対する嫌悪感を感じる

「男だろうと、女だろうと、関係ないな ここの法がすべてだ。彼は釈放、無罪ではないがね」

俺はゆっくりと歩いて檻の外に出る。

こんな汚らしい空気の場所でも深呼吸をすれば、いい気分をするものだと思いながら深呼吸をするが、腕の痛さがよりましただけだった

「いったぁ・・・・・・・・・・・・・・」

そんな俺の姿にラナはあきれたように口をして銃をしまう

「まっ、こんなお間抜けさんが、スパイなわけないか」

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