第一章 真夏の衝撃
見下ろし、忍は尋ねる。
健二は、ゴロリと、背を向ける。
赤いタンクトップに、ジーパン姿の忍は、腰に両手をあて、呆れたように、息をつく。
そして、クルリと、背を向け、机に向かい、椅子に腰を下ろした。
引き出しから、眼鏡を取り出し掛けると、カバンの中から、数学の教科書とノートを出し、勉強を始めた。
健二は、そっと、振り向き、忍の後ろ姿を見つめた。
そして、今日見た、あの事を思い出していた。
部活の始まる前、中等部の校舎に行った健二は、誰もいない教室の中で、忍と女子が抱き合い、口付けをしているところを見てしまった。
女子の顔は、はっきりと見えなかったが、照れたように、顔を赤くしていた忍の顔は、よく分かった。
健二は、その事が気になって、仕方がなかった。
結構、おとなしい性格の忍が女子と、キスをするなど、不思議な気分だった。
不思議な気分と同時に、不愉快だった。
忍の事は、何でも知ってるつもりが、本当は、何も知らなかったのだと分かると、何となく、腹立たしかった。
『相手の女は、誰だったんだろう?』
そんな事を考えると、余計に腹が立ち、思わず、きつい口調になってしまう。
『どうしたんだ?俺……。何で、こんなに、イライラしてるんだ?』
自分でも分からないぐらい、健二は、腹が立って、仕方がない。
このイライラは、忍にではなく、相手の女子に感じていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます