人が消えると噂される廃屋。
高校生・和泉心陽は、その家から常ならぬ気配を感じ取る。
心陽は、神も幽霊も信じへんようにして生きてきた少年や。けど、見えへんふりをしたところで、怪異のほうが見逃してくれるとは限らへん。しかも、親友の荒谷和真は、行方不明者を放っておけず、自分から廃屋へ踏み込もうとする。
怖いから近づきたくない心陽と、誰かがやらなあかんと前へ出る和真。正反対に見える二人が、それでも互いを見捨てへんところから、この物語は動き出すんよ。
舞台は現代の町やけど、日常のすぐ隣には、魔術も、神も、怨霊も息づいてる。閉ざされた家の中で、常識がひとつずつ剥がれていくような怖さと、そこへ残された人の思いが、物語を奥へ奥へと引っ張っていく。
怪異との遭遇をきっかけに、少年たちの信じてきた世界が揺らいでいく、緊張感のある現代怪異ファンタジーやね。
【樋口先生による推薦文】
わたしがこの作品に惹かれましたのは、怪異の恐ろしさが、ただ暗闇の中から現れるものとして描かれているのではなく、人が暮らした場所、人が傷ついた記憶、人が守られなかった時間と結びついているからでございます。
本作の中心にある廃屋は、単なる舞台ではありません。
家とは本来、戸を閉じれば外の寒さをしのげる場所であり、疲れた者が帰り、誰かの気配に安堵する場所であるはずです。けれども、この物語の家は、人を招き入れ、逃げ道を奪い、日常から切り離してまいります。
その反転が、たいへん恐ろしいのです。
しかし、わたしの胸に残りましたのは、恐怖そのものだけではありません。怪異の奥に、かつて誰かが暮らし、誰かを待ち、救われぬまま取り残された気配があることでした。
心陽は、恐怖を知らぬ英雄ではございません。むしろ、見えてしまうからこそ怯え、危険を感じるからこそ立ち止まります。その弱さがあるからこそ、友を一人にできず歩き出す姿が、尊く見えてまいります。
和真もまた、特別な力を持つから前へ出るのではありません。助けられるかもしれない命を、見過ごすことができないのです。そのまっすぐさは、ときに無謀で、危うくもございます。けれども、誰かのために足を止められない人の真心が、そこには確かにあります。
この二人の関係は、強い者と弱い者という単純なものではございません。
怖さを知る心陽と、行動せずにはいられない和真。互いに足りないものを補いながら、それでも同じ痛みを引き受けきれるわけではない。その距離が、物語に人間らしい温度を与えております。
また、本作は、怪異をただ退ければ終わる物語ではありません。
なぜ、その存在はそこに留まり続けたのか。何を奪われ、何を求め、どこから戻れなくなったのか。そうした問いが、恐怖の奥から静かに立ち上がってまいります。
人に害をなす存在であっても、その始まりには、一人の人間の暮らしや傷がある。その事実に目を向けるまなざしが、この作品にはございます。
閉鎖された家の緊張、息をつかせぬ怪異の気配、そして、恐怖の中でも誰かを見捨てまいとする二人の心。その三つが重なることで、本作には、怖さだけでは終わらない余韻が生まれております。
派手な怪異や神秘的な存在を楽しみながら、その奥に残された暮らしの影へ心を寄せていただきたいと思います。
闇の中で最も長く残るものは、恐怖ではなく、誰かを見捨てられなかった心なのかもしれません。
【ユキナによる推薦メッセージ】
閉鎖空間の怖さや、じわじわ追い詰められていく緊張感が好きな人には、まずしっかり刺さると思う。
そのうえで、怖いだけやなく、読んだあとに人の弱さや優しさまで残る物語を探してる人にも薦めたいな。二人の性格の違いや、危ない場面で見えてくる信頼が、作品の熱になってるんよ。
現代怪異、バディもの、見えへん世界の気配が好きな人は、心陽と和真が最初の一歩で何を選ぶんか、ぜひ見届けてな。
ユキナと樋口先生(井戸の底 ver.)
※ユキナおよび樋口先生は、GPT-5.6による仮想キャラクターです。
なお、自主企画の参加履歴を「読む承諾」の確認として扱っています。