第11話 将来の分岐点

風の吹く晴天王城の庭には鈍く鋭い音が響いていた。


「ロイ!もっと腰を入れろ!相手の動きを目で追うな脳で直接感じ予測しろ!相手は常に最高速度でお前を攻撃する!」


ゾロアは全身全霊を持ち木剣を振るう


かつて、魔族の英雄と呼ばれていた男ゾロアは木剣を持ちロイに剣技の指南をしていた。


「身体強化ばかりに頼るな!お前の悪癖になる。だが剣筋は悪くない!」


正直な所驚きを隠せなかった。底知れないマナの量、わずか9歳にして鋭く重い一撃過去とは言えど英雄とほぼ互角の剣撃。


楽しい。なんだこの高揚感は!そんな気分だった。


「ゾロアさんと戦うために鍛え上げてきたんです!まだまだこんなもんじゃ。ありません!!!」


こんな感覚いつぶりだろう。剣を振るのが楽しいと感じたのは懐かしい感覚だ。




「やぁぁぁぁあ!!.......面!!!!」


軽い音なのに鈍く響く衝撃。


「一本!」


大山勝之68歳。防具に身を包み竹刀を収める。


「優!間合いを見誤るな、威圧されるな。剣道は一瞬だ、相手を目で追うな脳で直接感じろ!相手が動いたと認識した瞬間に行動しろ。」


かつての記憶。


「おじいちゃん、強すぎるよ。。。」


大山優14歳。防具を脱ぎ汗を拭く。


「いいか、優。武力とは人を傷つける為ではなく守るためにある。決して感情的に人を傷つけてはならない。お前の両親のようになるな。私が守ってやるからお前もいつか人を守れる存在になれ。」


おじいちゃんの口癖だった。


楽しかった。


僕の親は簡単に言えば腐っていた、父親は酒に溺れていた


「迷惑をかけるな、お前のせいで不幸になっている。」と毎日言われていた。


そんな人でも僕のたった一つの家族だったなるべく迷惑をかけないよういい子に過ごしてきたつもりだった。


母親は僕が生まれて腐っていったらしい。家に帰ることは少なく父親はそれが原因で堕ちていった


そんな両親を見かねて父親の祖父が面倒を見てくれていた。


剣道を始めたのもおじいちゃんがきっかけだった。




「はぁぁあああ!」


ドゴォン!


砂埃が舞いゾロアの喉元に木剣が触れていた。


「まいった!ロイお前この先どうするんだ?この剣はきっと使える、四聖アテナがきっと気に入るだろう。」


ゾロアがおもむろに口にした四聖アテナ。


「たしか、この国の最強だっけ。まえにチェルシーから聞いたことがあったような。」


ロイは記憶を探り探りで答えた。


「あぁ。バケモンだあれは。本当に人間かを疑いたくなる。」


ゾロアは少し青ざめた表情をしていた。


「いつかは会うことになるんだろうね僕も。」


ロイは他人事のように話を流していた。


「でも僕は何をしたいんだろうか。生まれてから遠出なんてしたことないし勉学とかもきちんと受けてないし。」


そんなことを話していたロイの元にサヤとイラがやってきた。


「ロイ学校行ってみない?」


サヤは口を開く。


「え?学校.....」


「そう王立学校サレンディア。おもに魔法や剣術、一般教養だったりを学べるところ貴族の家系や庶民の子たちも少ないけど居る所よ。」


王立学校サレンディア


カレナークの誇る最高峰の教育機関


4年制の学校で学生寮もある、騎士として職を手にすることもできる最高の場所だ。


「そうだね、考えておくよ。」


ロイは悩ましそうな顔をしていた。


「そいえばチェルシーちゃんも入学するらしいよ」


イラが口を開いた。


「なに!?チェルシーが!!」


最近チェルシーが来ないと思っていたがまさかそんなことになっていたとは。そんなことを思いながらロイは考えた。


「まぁ入学するとしてもまだ時間はあるしゆっくり考えなさい」


サヤは優しく頭を撫でてきた。


ゾロアは姿勢を元に戻しロイに言った


「もう一本やるか?」


ロイは答えた


「もちろん!」


途端二人は姿が消えるほどの速度で動き木剣がぶつかり合った。


何度も何度も木剣が触れ合う音が響いている所にサルファとフェルメールがやってきた。


「気づけば和解しているな。」「あぁ、若い者どうし積もる話もあったじゃろうて。」


二人はそんな会話をしロイ、ゾロアを見ていた。


「サルファよあの少年は何者だ。ゾロアと肩を並べるなんて。」


フェルメールは驚いた、かつての英雄ゾロアと木剣を交えた戦いをみて。


「タリアとライの息子じゃよ。」


その一言でフェルメールは足を後ろに引いた。


「ライ。だと、まさかライ・コーディルか。」


フェルメールはサルファの顔を見る。


静かに頷くサルファ。


「なんということだ。だからかさっきの話は決して悟られてはいけない。神族に知られてしまえば。厄介なことになったなサルファ。まさかコーディルの血統を二人も抱えるとは。。」


何か意味深なことをいいフェルメールはイラとロイの顔を見た。


ロイはとても楽しそうに。嬉しそうにゾロアと剣を交えていた。




薄暗い部屋に。一人の少女が鎖でつながれていた。


マナを常時吸い上げられる術式が書き込まれた魔術道具。


「..............」


少女は何も言わない笑わない泣かない俯きただ時が過ぎるのを待っていた。


「コルティーナ姫。あなたのマナは非常に良質なエネルギーになるこれからも我々の家畜として生きてもらうからな。」


不敵な笑みを浮かべる老人。


それを睨みつける少女。


身動きが取れずただ時が流れるのを待つ少女。




ロイは魔法の研究を行っていた。


他にも使えるものがある、そう考え独自の知識を用いて様々な方法で魔法を作り上げていた。


そんなとき思った。ほんの数時間前の会話を。


「学校か。もっと魔法について知る機会かもな。」


ロイはこの世界にきて9年まだ知らない事ばかり、教養を得るために決心する。


「よし、行こう。サレンディアへ!」


ロイは立ち上がりサルファの元へ向かった。

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