エピローグ
「飲み物に何が入っていたか知りたい?」
夕闇に翳る薫さんの顔はよく見えなかったが、女の悪魔が笑っているように見えた。
黄金色の光の海を割きながら、薫さんはゆっくりと近づいてくる。夕焼けの赤と、夜の闇とが混ざり合った凶暴な後光を放ちながら。
その指先は首を絞めるように、僕の全身をなぞり、弄り、撫で回す。
僕たちは重なり合って、激しく痙攣し、体液の海に溺れながら、まるで互いの体がぐずぐずに溶け合うように……ついに一人になった。
それが夏の終わりだった。いまでもその光景は繰り返しフラッシュバックする。でもそれが何を意味するのかは、もうよく思い出せないんだ。
攫われたい夏 空木閨 @utsugineya
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