害の無い部屋
手帳溶解
害の無い部屋
私、私は……すみません、覚えていません。あの部屋にいた時には既に記憶が無くて、どうやっても思い出せないのです。ですから、自分の名前も知らなくて……。
それが、私の名前なのですか?
……いえ、あまり。初めて聞いたような感覚です。そうですか、「ハル」、「ハル」……すみません、本当にそれは私の名前だったのですか?
……その、なんだか……ああ、ええっと、そうですね。
はい、覚えている限りで良ければ、お話させて下さい。あの小屋の中で私が体験したこと、ですよね。
あそこは、「害の無い部屋」と呼ばれていました。
気が付いた時、私は目を閉じたまま無風の寒い場所の中にいました。目を開いても、闇が続きました。自分の身体すら見えません。不思議に思って辺りを見渡すと、冷たく純粋な暗闇の中、一つの赤くて小さな光だけが遠くで点滅していました。声を出してみましたが、自分の声すら返ってきませんでした。柔らかくぶよぶよしたものの上に立っているような感覚を足の裏に感じましたが、何故か足を曲げて座ることが出来ませんでした。いえ、それだけではありません。持ち上がりすらしなかったのです。身体は垂直に棒が通ったようにまっすぐ伸びたまま曲がらず、両腕だけがゆっくりと動かせる状態でした。重力の方向も曖昧で、まるで空中に寝そべっているような心地でした。そこは何も音のしない場所です。口や鼻は冷たい空気が出入りするだけで、音も匂いも現れることはありませんでした。息を大きく吸ってみたり、喉から絞り出すように息を吐きだしてみたりしても、それは変わらなかったのです。瞼が開閉する感覚はありました、それと唇が上下に接触する感触も。でも何もそこから進展が無いのです。叫んだ声も呻いた息も聞こえず、匂いも味も感じられず、目は遠くの小さな光を拾うことしかしません。暗闇をいくら見続けようともそれは同じでした。それが、私の置かれた状況でした。私は常識を知っていましたし、この辺りの言語や地名も知っていました。ですが、名前と住所、関係者、そういう個人的なものを一切持っていなかったのです。私がどのような顔をした人間なのか、或いは人間ですらないのか、そういうことすら断定できなかったのですから、当然自分が何故あの場所にいたのか分かっているはずがありませんでした。
果たして、私はあの暗闇の中に何日いたのでしょうか。永久にも思える時間、思考を持った私の自我の他にはあの部屋に存在するものは何もありませんでした。時計の秒針が一つ隣へ傾く音の間隔は覚えていましたが、それは決して正確であると断言できるものではありませんでしたから、結局あの場所に私がいた期間がどれほど長かったのかを私は知りません。あの場所で赤子が常識を持ったまま生まれ育って、今の私になっている可能性だってあります。……いえ、あの暗闇は今のような小さな物置ではありませんでしたから、生物学的な規則の外にあったとしても可笑しくはないでしょう。少なくとも、私はそれ程の異常空間であったと考えています。途方もない歳月か、またはほんの数分、私はあの中で考え事をしていました。自分について、あの場所について、昔について、それからあの小さな点滅する光について。ですが、それが確証を持った結論や新発見に繋がることはありませんでした。私は自分の五感がまともに機能しているかどうかすら、確かでは無かったのです。一切の闇の中にいた訳ではなかったこと、それだけがいつしか私にとっての希望となっていました。あの小さな赤色だけが、私の存在を朧げに信用させてくれたのです。ある時期から、私はあれに名前と友人の役割を与え、あれに被せるように脳内で人格を空想しました。名前はライ、その由来は……すみません、覚えていません。ただ随分長い間、彼をライと呼んでいました。私は光さえ殆ど届かない深海にいて、彼は発光器を持ち、唯一私と対話を行うことが出来る深海魚でした。私は彼に沢山の地上の知識を語りかけました。彼は魚だったので喋ることはありませんでしたが、テレパシーを介して私にリアクションをくれました。気さくで純粋、好奇心旺盛な性格です。時折、彼が自身のことを教えてくれることもありました。趣味は海底に沈んだプランクトンを食べ比べることで、棲家は近くにある海草です。彼は海底の生活を気に入っていましたが、一方で新しいものを求めてもいました。怖がらずに私へ近付いてきたのも確かそれが理由だったと思います。それから長い時間が経って、今度は星の光さえ届かない宇宙の果てに私は漂って、偶然出会ってからずっと旅を共にしている無人探査機のライと旅の終着点について語り合っていました。ただ、私は旅が終わることを望んでいましたが、彼はそうではなく、むしろ旅の道中を楽しむことを中心に考えていたので、いくつかの点で彼と意見が対立することもありました。ただそれでも、私は彼と共に永劫の時間と空間を楽しんでいたのです。結局のところ、そこには彼と私の他に何も存在しませんから、そのうちすぐに私たちは紛争の火種となる事柄を使い切ってしまいました。広大な宇宙空間の中の、酷く狭い私たちのコミュニティに存在し得た全ての議論が終止符を打って、そこに残ったのは理解し合えた者だけが暮らすことのできる楽園のような日常です。ですが、それは退屈にも繋がってしまいました。そうしたら私はまた世界を作り直すのです。地中に眠って目覚めを待つ植物の私と春の妖精ライ、闇に棲む生態を持つ怪物の私と無謀な冒険家ライ、母胎にいる私と母親ライの内なる愛情……。何度も退屈になった世界を上書きする度に、私は愛着を抱いたその世界が自分の思考から離れた現実であることを願いました。長い間過ごしてきた世界が、その本質を変えることなく新たな刺激を齎してくれることを待っていたのです。だから私の描いた空想世界は、どれも何かの「途中」だったのでしょうね。とにかく、私は黒い画用紙を淡い絵具で彩るように、あの漆黒に魅力を与え、少しずつ自分でそれを味わっていました。それが何年も続いていました、少なくとも私の中では。
突然、低い男性の声がしたのです。「誰かいるのか」って。その直前に考えていたことは覚えていません。あまりにも長い間同じことを繰り返していたせいで、私の想像力は曖昧で不明瞭なものになっていたのでしょう。私は咄嗟に返事をしようとしましたが、久しく喉を動かしていなかったので、乾いた呼吸しか出ませんでした。それでも、向こうにはその音が伝わったみたいで、私に対して言葉を続けました。「どうしてそこにいるんだ」「どうやってそこへ侵入したのか」そういったことを聞いてきました。漸くある程度の機能を取り戻した私の喉が音を出し、私は遂に人へ言葉を話すことができました。随分舌足らずで稚拙な喋り方になっていましたが、しっかりと意味を持たせることは出来ました。何も覚えていないことを伝えると、その声は悩ましげに唸りました。「分かった、そういうことか。気にしないでくれ」と言った後、彼は様々なことを教えてくれました。彼は自らを副操縦士と名乗り、私がいる場所を「少なくとも入っていることに、害は無い部屋だ」と言ったのですが、具体的なこと……例えば彼の名前や仕事、あの場所の役割については教えてくれませんでした。だから私は彼が何の操縦士だったのかを知りませんし、あの部屋について害がないこと以外に何も知りません。覚えていない訳ではありません、本当に教えてくれなかったのです。彼は私に対して「そこで待っていろ」と命令し、それから「すぐに戻る」と付け加えていなくなりましたが、次に彼と会話をするまでにかかった期間は「すぐ」と表現するには少し長かったように思います。会話が待ち遠しすぎて私には長く感じてしまったのかもしれませんし、そもそも私の認識している時間が異常に引き延ばされているだけだったのかもしれませんが、私にとっては数年のように思えました。そのうえ、彼の言葉はあの停滞した無限の闇の中で唯一実体を持って動いていましたから、そういう点でライのいた世界との明確な差を感じてしまって、それ以降あの闇は闇以上の何物でもなくなってしまいました。実際に存在した確信がある言葉の応酬が途絶えてから、私は酷く退屈な途方もない時間を過ごしていました。寂しさを紛らわす為に私の中であの意味と意思を持った音の連なりが反芻される度、私によって闇の中に捏造された他の世界と何ら変わりない粗雑なものへと劣化していき、私にはそれが苦しく感じました。そういった苦痛すらも薄まり、もはや私の抱いていたものが単なる錯覚でしかなかったのだと信じ込むようになって、遂に私は長らく忘れていた希望なき完全なる孤独に陥って暫くした頃、ぼんやり冷え込んだ思考の中に温かな刺激が流れ込むのを覚えました。「誰かいるのか」、彼がそう言ったのです。私はその時どのような感情を抱いたのかはっきりと覚えていませんが、様々なものが入り混じった強い衝動を感じました。その中で特別に強かったのは喜びか、怒りか、困惑だったでしょう。私はどれほどの時間が経ったのかを聞きました。彼は具体的な数字を挙げることはしませんでしたが、「あまり時間は経っていないはずだ」と答えました。そして続けてこう言ったのです、「何度も声をかけたが、返答がなかった」と。まるで不安定な電波を介して通話を行っているように、私と彼の繋がりは一時的に途切れていたのです。或いは、一時的にまた接続されたのでしょう。どちらが正常なのかは分かりませんが、恐らく後者の方が可能性は高いですから、私は彼との会話が奇跡的なものであると考えました。私は怖くなりました。こうして実際に存在するであろう存在と意思疎通を取ることができるのは偶然の結果であって正しい状態ではないということは、私と彼の接触は酷く不安定なイレギュラーの上でしか実現せず、いつ失われるか分からないのです。私はよほど幸運でなければ、ちょっとした変化によって再び無限の孤独に追放されてしまうでしょう。私は彼にそうした推理を伝えた上で、命乞いのように救助を求めました。しかし、彼も何がきっかけでこれが行われているのかを把握していませんでした。私は目の前に存在する唯一の視覚情報である小さな点滅がこの現象になにか関係しているのかと思いましたが、彼の声は暗闇全体から反響するように聞こえていて、具体的で決定的な関係性を暴くことは出来ませんでした。点滅の速度や光の色にも変化はありませんし、光は私の他に何も照らしてはいません。少しでも暗闇の外と繋がりを保ちたかったのですが、私にはどうしようもありませんでした。その上彼は確固たる秘密主義者でしたから、私が彼との会話から得られる新しい情報は殆どありませんでした。私がその時確信していたことは、私が閉じ込められている闇の中と彼のいる世界には時間的なずれがあって、その二つは奇跡的な異常のよって発生した不安定な通信によって繋がっているということでした。
それから、私は暫く彼と会話のようなものを続けていました。ようなもの、と言ったのは彼があまり会話に積極的ではなく、基本的に私が自分の知っていることを話したり質問を行ったりするのに対して、曖昧な返答か無言を返すだけだったからです。私が暗闇に閉じ込められたままライという小さな光と共に長い旅をしていた莫大な時間と比べれば、ほんの一瞬の時間でしかありませんでしたが、あの漠然とした世界よりもずっと内容と意義が存在していましたから、ずっと長く感じました。決してそれが不安定で脆弱な糸の上にしか存在しない貴重な状況であることに気づかないように、私は自分に余計な考察の時間を与えようとはしませんでした。もしそうすれば……その時間が私を闇の中から引き摺り出す為の何もかもには足りない程しか存在しないことに気づいてしまえば、私は遂に自らの精神と正気を手放すだろうと知っていました。私はあの永遠に続く虚無へのトラウマから、静寂を好みませんでしたし、恐らく彼もそれに気づいていました。だから彼も会話に付き合ってくれたのでしょう。私は視界いっぱいに広がる漆黒の画用紙に、想像の画材で彼の似顔絵と彼の暮らす世界を描きました。私は少しでも孤独を紛らわせる為に、自分が彼のコミュニティの内側にいると思い込むことにしたのです。彼が話してくれることは抽象的なものばかりでしたが、それでも、彼がとある施設内にいて数人の仲間と共に暮らしていることは分かりました。副操縦士というはその施設における彼の役職だそうで、どうやら他の仲間にも同様に役割があるらしいのです。私は彼の施設内にある、使われていない部屋か箱の闇の中にあり、そこは立ち入ることができない為、私がそこに存在するか否かを明らかに出来ないと言っていました。そして、その不確実性が私との対話を可能にしているのではないか、とも。だから私は、そこが船の中だと考えました。きっと彼の名前にある「操縦」とは船を動かすことを意味し、大洋を渡る長い航海の旅をしている最中なのでしょう。私は暗闇に、船内の光景を浮かべました。しかし、ただの小さな光となったライはその景色の中で何の役目も持ちませんでした。それと、会話の中で何度か彼の言葉が途切れ、少し先まで飛んでいることがありました。それが起こる度、私は闇の中に引き戻されました。自分が彼らの日常の外にしか実在していない事実を思い知らされるのです。私は妙に悲しくなりましたが、彼が私に向けて発する言葉は続いていましたから、それでもよかったのです。人と、意思を持った存在と会話することで、私は自我を取り戻すことができたのですから。予想外の会話が続くことで、私が話している相手が私の幻覚の外で生きていると信じられていたのですから。次第に存在する音が耳に馴染んで彼の言葉と幻聴の区別が付かなくなり、時々彼との会話に実在性の疑念を持つようになってしまったとしても、私は信じ続けました。何も考えずに信じ続けなければ、彼の予想外の応答すらも私の無意識に生み出した別人のものなのではないかと疑ってしまいかねないから。
数秒の静寂が起こり、すぐに彼の息遣いが戻りました。異常な間隔と強さ、不安定な呼吸の音が闇の向こうから聞こえてきて、私はすぐに何かが起きていることを察しました。疲れた様子の彼は酷く荒々しく乱暴に「聞こえているか」「おい」と何度も怒鳴りました。同時に金属製の扉を叩くような音も聞こえて、彼の切羽詰まった様子が容易に想像できました。少し遠くからはけたたましく鳴り響く不協和音のアラームも聞こえてきました。普段は彼の声と息遣いの他に何も聞こえないのですが、何故かその時に限ってはそういう環境音も聞こえたのです。私は慌てて返事をすると、彼は続けて言いました。「ボタンを押せ」「ボタンを押せ」と。私には小さな光以外に暗闇しか見えていませんから、当然ボタンなどどこにも見つかりません。私がそう伝えても、彼は納得したり諦めたりすることは無く、何度も何度も、様々な情報や命令を足して私にボタンを押すように言いました。「よく目を凝らせ」「赤いボタンだ」「そこまで小さくは無いからすぐに見つかるはずだ」「早くしろ」等と彼が捲し立てるように色々と言っていく中に、重要な言葉が一つだけありました。「ボタンの上には小さな点滅する光があり、ボタンを押せば光が消える」、彼はそう言ったのです。ここにきて漸く私はライの正体を知り、思わず聞き返してしまいました。しかしどうやら彼は、私が話したはずの点滅する光のことを覚えていないようでしたので、わざと言及したというわけではなさそうでした。私の想像する闇の世界の輪郭に一つのボタンが浮き上がり、私はついに彼の望む行動を選択できるようになりました。彼は焦燥と僅かな期待を含ませた声で「早く押せ」と言いました。私はゆっくりと、自分では知覚することのできない腕を持ち上げ、前に掌を向けました。私には腕が動いて風に触れる感覚がありませんでしたが、このまま掌を突き出せばボタンを押すことが出来るという確信と、妙な胸騒ぎがあったのです。長らく漆黒に晒され続けてきた私の五感と、あの小さな光にのみ内包される現実感が沸き上がり、嫌な汗が吹き出した気がしました。散らばった思考と、確固たる証拠の無い急迫した何かへの不安。私には現実と虚構の違いが、とうの昔に分からなくなってしまいました。私がいる場所、彼のいる場所。彼が言った言葉。私にあった唯一のもの、私が時間の経過と世界の動きを教えてくれたもの。私は外でどれほどの時間が経っているのか分かりませんでしたし、自分が本当に変化する世界にいるのかも知りませんでした。ただ、私が道半ばにいると信じることのできた理由は、私が時間と流れの存在する世界を歩いていることを認識していたからだったのです。昼夜、時計の針、1から60までの数字、動物の動き、環境の変化。人間はきっと、そういうもので世界が未来に向かって進んでいることを知っているのだと思います。でも、でも私にはたった一つしかありませんでした。そしてそれが、自分がまだ生きていると知る唯一の証拠だったのです。私が生きていたから、私は生きる意志と空想を持って闇の中で足掻き続けました。だから、私の思考がある仮説を立てた時、長らく闇を共にした親友と私の世界が私に背を向けた気がしたのです。ぞわりと背筋が凍って、先程までそこに描かれていた筈のボタンがどこか闇の中へ飲み込まれて消えてしまいました。は、はは……おかしいですよね。だってさっきまでそこにあった筈なのに、一瞬のうちに消えてしまったのですよ?私の目の前、小さな光のすぐ下に存在したものが何故か見ている間に消えたのです。どうしてでしょうね。私はその時、焦燥と恐怖の嵐の中にいました。まるで決してあってはならない失敗が確実なものとなったように、私が何もかもを台無しにしてしまう直前の、謝っても言い訳をしても何の意味も無くなった時間のようでした。いえ、まさにその時間の真っ只中だったのです。「どうした」「早くしろ」、彼が私を疑いました。「何をしている」「早くしろ」、彼が私に叫びました。私の身体は動きません、私の思考は動きません。私はクズになった気分でしたが、私には絶大な恐怖が圧し掛かっていました。彼が恐怖と苛立ちに満ちた大きな声で、私を責め立てました。「どうしてボタンを押さないんだ!」。その直後に大きな彼の声が途絶えましたが、私の鼓膜は喧騒で震えて痛みました。服が破ける音がしました。金属が凹み、破れる音がしました。男性の悲鳴がして、水気を含んだ脆いものが砕ける音がしました。何度も同じ音がしました。音が続きます、まだ続いています。私はまだ見殺しにしているのでしょうか?何かが闇の外で世界を蹂躙していました。私はクズになってしまったので、その怪物が私と私を閉じ込める暗闇を脅かさないことを……私の安全だけを願ってしまいました。私、私は、はは、何をしていたのでしょう?ああ、そうです。風が止み、ぞっとするほど冷え切った「害の無い部屋」で凍えているだけでした。柔らかいものが何度も潰れる音を聞いて、同じものをずっと聞いていながら、私は自分が何もできない場所にいることを密かに喜んでいたのでしょう。ボタンを押さなかったのに、責任から逃れようとしたのです。責任なんかよりもずっと重く醜悪な罪が、保身に走った私の魂をとっくに穢してしまったというのに。どうして押さなかったんだ、と冷たく何の生命も持たない声が、実体のない音が聞こえました。その後は、暗闇が凪いでいました。
後は貴方も知っている通りだと思います。私が単なる光の点滅を眺めている時に、皆さんが入ってきて、私は色のある世界に戻ってきました。私は埃の積もったガラクタの中で、目の前にある古いブレーカーの点滅の前に立っていました。そうして、私だけが生き残ってしまったのです。これで、全部です。
ははは、違いますよ。確かにあの時、ボタンは私のすぐ目の前にずっとあったのです。それに目印もありました。どうして気が付かなかったのでしょうね。どうして、ボタンを押せなかったのでしょう。
ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。私の罪が消えることはありませんから。……ああ、最後に一つ質問をしてもいいですか?
私は、人を殺しましたか?
害の無い部屋 手帳溶解 @tatarimizu
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